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古豪企業が新たな成長ドライバーになる

「企業の寿命30年説」という考えがありました。これは、多くの日本企業にとってショッキングなメッセージでしたが、その意図するところは「同じことだけをやり続けているだけでは成長は長くても30年はもたず、いずれ衰退期を迎えるので常にビジネス変革が必要である」というものです。日本には創業100年を超える老舗企業が大企業だけでなく、中小企業にも多く存在します。創業100年以上の老舗企業は日本全国で4万5189社あります。世界最古の企業は578年創業、社寺建築の金剛組の業歴1446年です。

古豪企業復活のための変革:三菱鉛筆

日経新聞(7月8日)記事NEO-COMPANYでは、創業100年以上の主要企業の時価総額が過去10年で2.6倍に増加していることを伝えています。

創業137年の歴史を持つ三菱鉛筆は、関東大震災、敗戦、リーマン・ショックといった数々の危機を乗り越えてきましたが、コロナ禍では文具の受注が減少し余命2年と言われるまで業績が落ち込んでいました。

三菱鉛筆が取った戦略は、海外市場への展開です。欧米での販売網を拡大し、2022年度には初めて海外の売上高が国内を逆転しました。成功要因は、独創性と技術力です。例えば、欧米で人気の水性ボールペンは、気圧が低くてもインクが漏れにくい設計となっており、飛行機内でも安心して使えると評価されています。

さらに、三菱鉛筆は研究開発に力を入れており、売上高に占める研究開発費の比率は5%と競合の2倍以上に達しています。2024年度には過去最高益を見込んでおり、独高級文具メーカー「ラミー」を買収するなど、世界企業への脱皮を進めています。

新興企業の重要性

一方で、新興企業の育成も日本経済にとって重要です。日本では、新設企業の割合が低く、古い企業が経済の大部分を占めています。これに対して、アメリカでは新興企業の割合が高く(26%)、経済成長を牽引しています。世界のプラットフォームを支配しているGAFAMの若さと比較できる日本の主要企業はソフトバンクグループなど全体の5%にすぎません。

政府は2022年、スタートアップ10万社の創出を掲げて支援を強化しました。新興企業への投資を促す税優遇措置の拡大や、日本政策金融公庫による創業支援の無担保・無保証融資の限度額の増加などが行われました。デジタル化の進展によって、地方での開業ハードルも下がり、秋田県や岩手県など地方都市の開業数が増加しています。

中小企業支援施策について

中小企業白書では、地域創業支援の取り組みとして地方自治体との連携や地域金融機関のサポートの強化が強調されています。また、事業承継や第二創業の視点からも支援策が打ち出されています。多くの古豪企業が抱える事業承継問題に対して、円滑な事業引き継ぎを支援することで、地域経済の活性化を図る取り組みが進められています。

さらに、第二創業の視点では、既存の企業が新たな事業領域に進出する際の支援が強化されています。これにより、今ある企業の枠を維持しながら日本独自の成長エンジンとしての役割を果たすことが期待されています。

まとめ

日本経済の発展には、古豪企業の変革と新興企業の育成が両輪として機能することが必要です。事業承継や第二創業の支援策を通じて、持続可能な成長と地域経済の活性化が実現され、次世代の成長エンジンとしての役割を果たすことが期待されます。

#日経COMEMO #NIKKEI

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