職場におけるメンタルヘルス対策(三次予防):職場復帰支援
職場におけるメンタルヘルス対策
職場におけるメンタルヘルス対策は、3本の柱から成る
一次予防:メンタルヘルス不調の未然防止
二次予防:メンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応
三次予防:職場復帰支援
職場におけるメンタルヘルス対策について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000188314.pdf
今回は、「三次予防:職場復帰支援」についてまとめていく
職場復帰支援の概要
うつ病の再発
うつ病の再発率は約60%
再発を繰り返すとさらに再発率が高くなる
職場復帰支援の手引きの概要
うつ病の再発率は非常に高いため、休業の開始から職場復帰までの流れを明確にしておく必要がある
事業者は、「職場復帰支援の手引き(※)」を参考に、それぞれの事業場に合った職場復帰支援プログラムを策定することが求められている
※2004年10月に厚生労働省から公表されている「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(2012年7月改訂)」
心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
職場復帰支援の流れ(5つのステップ)
1.第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア
病気休業開始時の労働者からの診断書(病気休業診断書)の提出
管理監督者によるケア及び事業場内産業保健スタッフ等によるケア
病気休業期間中の労働者の安心感の醸成のための対応
2.第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断
労働者からの職場復帰の意思表示と職場復帰可能の判断が記された診断書の提出
産業医等による精査
主治医への情報提供
3.第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
情報の収集と評価
→労働者の職場復帰に対する意思の確認
→産業医等による主治医からの意見収集
→労働者の状態等の評価
→職場環境等の評価
職場復帰の可否についての判断
職場復帰支援プランの作成
職場復帰日
管理監督者による就業上の配慮
人事労務管理上の対応
産業医等による医学的見地からみた意見
フォローアップ
4.第4ステップ:最終的な職場復帰の決定
労働者の状態の最終確認
就業上の配慮等に関する意見書の作成
事業者による最終的な職場復帰の決定
★★★職場復帰★★★
5.第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ
疾患の再燃・再発・新しい問題の発生等の有無の確認
勤務状況及び業務遂行能力の評価
職場復帰支援プランの実施状況の確認
治療状況の確認
職場復帰支援プランの評価と見直し
職場環境等の改善等
管理監督者、同僚等への配慮等
職場復帰支援:第1ステップ(病気休業開始及び休業中のケア)
管理監督者及び事業場内産業保健スタッフ等によるケア
主治医によって作成された「診断書(病気休業診断書)」を労働者 → 管理監督者等に提出
管理監督者等は、「診断書(病気休業診断書)」が提出されたことを事業場内産業保健スタッフ等に連絡
職場復帰支援のため、場合によっては労働者の同意を得た上で、主治医と連絡を取ることもある
労働者の安心感の醸成のための対応
病気休業期間中においても、休業者と接触することが望ましい
休業者との接触のタイミングは職場復帰支援プログラムの策定の際に検討しておく
傷病手当金は、業務外の原因で負傷や病気になり、働くことができなくなった場合に、給与の補てんとして健康保険から支給される
職場復帰支援:第2ステップ(主治医による職場復帰可能の判断)
主治医による職場復帰可能の判断
1.休業中の労働者の病状が回復し、当該労働者から職場復帰の意思が見られる
2.事業者は当該労働者に対して、主治医による職場復帰可能の判断が記された「診断書(復職診断書)」の提出を要求
【「診断書(復職診断書)」の注意点】
病状の回復程度によって職場復帰の「可能性」を判断していることが多い
職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限らない
職場復帰支援:第3ステップ(職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成)
職場復帰支援プランの準備
最終的な職場復帰決定の手続きの前に、必要な情報の収集と評価を行った上で以下の2つを行う
職場復帰の可否を適切に判断
職場復帰支援プランを準備
事業場内産業保健スタッフ等を中心に、管理監督者、当該労働者の間で十分に話し合う
情報の収集と評価の結果をもとに、事業場内産業保健スタッフ等を中心に職場復帰の可否の判断を行う
【情報の収集と評価について】
1.労働者の職場復帰に対する意思の確認
労働者の職場復帰の意思及び就業意欲の確認
職場復帰支援プログラムについての説明と同意
2.産業医等による主治医からの意見収集
《注意》労働者の同意を得た上で主治医から情報収集
3.労働者の状態等の評価
治療状況及び病状の回復状況の確認
業務遂行能力についての評価
今後の就業に関する労働者の考え
家族からの情報
4.職場環境等の評価
業務及び職場との適合性
作業管理や作業環境管理に関する評価
職場側による支援準備状況
職場復帰支援プランの作成
職場復帰が可能と判断された場合には、「職場復帰支援プラン」を作成する
【職場復帰支援プラン作成の際に検討すべき内容】
1.職場復帰日
職場復帰のタイミングについては 職場の受入れ準備状況を考慮した上で総合的に判断する
2.管理監督者による就業上の配慮
業務でのサポートの内容や方法
業務内容や業務量の変更
段階的な就業上の配慮(深夜・交替勤務・残業、業務等の制限又は禁止、就業時間短縮など)
治療上必要なその他の配慮(診療のための外出許可など)
3.人事労務管理上の対応等
配置転換や異動の必要性
本人の病状及び業務の状況に応じて、フレックスタイム制度や裁量労働制度等の勤務制度変更の可否及び必要性
その他、段階的な就業上の配慮(出張制限、業務制限、転勤についての配慮)の可否及び必要性
4.産業医等による医学的見地からみた意見
安全配慮義務に関する助言等
その他、職場復帰支援に関する意見
5.フォローアップ
管理監督者によるフォローアップの方法
事業場内産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法(職場復帰後のフォローアップ面談の実施方法等)
就業制限等の見直しを行うタイミング
全ての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し等
6.その他
職場復帰に際して労働者が自ら責任を持って行うべき事項
試し出勤制度等がある場合はその利用についての検討
事業場外資源が提供する職場復帰支援サービス等の利用についての検討
職場復帰支援:第4ステップ(最終的な職場復帰の決定)
最終決定者
「事業者」が最終的な職場復帰の決定を行う
「職場復帰に関する意見書(※)」等をもとに関係者間で内容を確認しながら手続きを進め判断していき、職場復帰の決定を行う
(※)産業医等が職場復帰に関する意見及び就業上の配慮等についてとりまとめたもの
「職場復帰に関する意見書」の内容
労働者の状態の最終確認
就業上の配慮等に関する意見書の作成
事業者による最終的な職場復帰の決定
職場復帰支援:第5ステップ(職場復帰後のフォローアップ)
心の健康問題は、再発することも少なくないため、職場復帰後のフォローアップは特に大切
職場への復帰については、「元の職場への復帰」が原則
フォローアップの内容
疾患の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認
勤務状況及び業務遂行能力の評価
職場復帰支援プランの実施状況の確認
治療状況の確認
職場復帰支援プランの評価と見直し
職場環境等の改善等
管理監督者、同僚等への配慮等
職場復帰支援に関するプライバシーの保護
情報の収集と労働者の同意
労働者の健康情報等を主治医や家族から収集するに場合、以下の2つに気を付ける
1.あらかじめ、利用目的とその必要性を明らかにして本人の承諾を得る
2.情報は労働者本人から提出を受ける
情報の集約・整理
集約・整理・解釈するなど適切に加工し、関係者間の情報交換を行う
情報の取り扱いルールの策定
事業者は、健康情報等の取扱いに関して、衛生委員会等の審議を踏まえて一定のルールを策定しておく
また、事前に、関係者に周知しておく