Lovebites / Elecctric Pentagram
Lovebitesは2016年結成、2017年デビューの日本のメタルバンドです。世界市場を見据えた活動、作品作りをしており全英語詩、海外のフェスティバルにも積極的に参加しています。2018年にはメタルミュージック最大規模の祭典「Wacken Open Air」にも参加。ジャパニーズメタル新世代として着々と海外での実績を積んでいます。Babymetalの快進撃があり、Lovebitesも女性メンバーでルックスも良いのでビジュアル面では近いところがありますが音楽性は正統派のジャパニーズメタル。アイドル的要素はありません。いわゆる歌メロにJ-POPっぽさがあるのはジャパニーズメタル全般に言えることですね。むしろそれが日本の音楽シーンの特色であり、日本の独自性、日本のメタルと言っても良いと思います。歌メロにほとんどブルースやルーツミュージックの影響がみられないんですよね。なんというか独自のフィルターをかけて西欧音楽を消化したことは分かるのだけれど、そのフィルターの味付けがこってりしているというか。世界的に見た時には日本ならではのメタルというのはこういうJ-POPっぽさがあるバンド群なんだろうと思っています。2020年ジャパニーズメタルの傑作。
2020年リリース
★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補
1.Thunder Vengence
微かなクワイアが立ち上がり、雷鳴が鳴る
雷鳴と共にドラムが響く、ハードなリフが入ってくる
疾走、リードギター、リフ
ボーカルが切り込んでくる、独特なスタイル
線が細いようで鋭い、ちょっとスラッシーな声とも言える
デイブムステインのような、少し喉にかかった声
展開が早い、あわただしいが演奏はタイト
サビはややジャパメタ的というか、欧米ではあまり聴かない展開
これは海外の人からすると「日本的メロディ」なのだろうか
間奏で少しドゥームというか、パワーメタル的なミドルテンポのヘヴィなパートへ
展開して再び疾走へ、レベルが高い
ボーカルの高音が少し苦し気というか単語がつぶれているような気がするがスリリングと言えばスリリング
★★★★
2.Holy War
ツインリードでメロディアスなスタート、シンフォニックなリフ
オーケストラっぽい音が入ってくる
中音域が大きめ、コーラスは少しバロック、シンフォニックメタルらしいメロディ
ギターのオブリガードが入ってくる
中高音域が強調された音作りだがベース、ドラムもタイト
ちょっとドラムが音に埋もれているのが少し惜しい
テンションが高いままで突進していく
ボーカルの高音がやや細いが、ギリギリの音域まで攻め続けている
ギターソロはメロディアス、メロディへのこだわりを感じる
けっこう弾いているがアドリブではなく作曲された感じ
ツインリード、クラシカルなフレーズ
サビの後大サビがあるが、サビの方が盛り上がる、とはいえ展開は見事
メガデスの名曲に曲名をかぶせてくるだけの覚悟がある名曲
★★★★☆
3.Golden Destination
少しポップな要素が入ってきた、ハードロック的
ボーカルが中音域、ところどころ入るギターの刻みはヘヴィ
ツインリードのオブリガード
メロディがどんどん展開していく、この曲もサビの後大サビ
メロディの展開が多いのが武器というか、曲作りの特長なのだろうか
リフを経てセカンドヴァース、ブリッジはバックのツインリードが印象的
シンガロングでJ-ROCK的なコーラス、を経てややアジるような大サビというか余韻
少しヘヴィなロックンロール的なパートへ
メロディアスなツインリードの反復を経てソロ、各ソロを回してメイデン的ツインリード、リズムもメイデン的
リズムはRun to the Hillsだな、騎馬隊がかけるリズムと言うか
コーラス~余韻を経てふたたびメイデン的ツインリード
★★★★☆
4.Raise Some Hell
ザクザクしたリフ、うまくピッキングハーモニクスを使っている
ギターのザクザク感が強い、左右から壁のように刻んでくる
とはいえ少しリバーブがあって丸みがある、メイデンほどではないが少しウーマントーン、丸みのある音
これもメロディアスなコーラスの後にシンガロングというかアジるパートがある
皆でこぶしを振り上げる、シンガロングなフレーズ
これが曲作りのスタイルなんだな
歌メロの後ろでけっこうギターが暴れている
筋少の橘高曲ばりに弾きまくっているなぁ
というか橘高がやりたかった音楽はこういう音楽なんじゃなかろうか、と思った
メロディアスなソロが入る、2人のギタリストが交互に弾いてそこからリフパートに戻る
ふたたびヴァースへ、ブリッジ、リズム隊が安定している
ブレイクを挟んでポップでフックのあるコーラス、最後シンガロングフレーズでキメ
ややインダストリアルメタル的な最初のリフに戻り、一度ブレイクしてからまた走って終わり
最後まで凝っている
★★★★
5.Today Is The Day
北欧的ともいえるメロディアスさだがコード進行がやや違う、日本的
なんだろう、コード進行が少し違う、日本音楽シーンだと聞きなれた進行
そういう民族性があるのだろう
コーラスは日本的、この日本的をもっと言語化したい
ペンタトニックというわけでもないし、展開が多いという点では北欧にも近いのだが
コードの上昇が4回連続する、とかそういうレベルの特徴だろう
一度下がって上がるところとかソファミレドと下降してきてラまでいきなり上がるというか
そういうフックのつけ方は日本には多い気がする、洋楽にないわけではないと思うが
音程移動の多さや、やや強引な転調あたりも特徴か
いいメロディだが日本的、何かが過剰
★★★★
6.When Destinies Align
疾走曲、ツーバスがドコドコしている
ギターの刻みが軽やかに支える
開放感のあるブリッジから、音程移動が大きいサビへ
コーラスの後、シンガロングフレーズCarry Onが入る
そういえばCarry Onが入る曲は名曲、というジンクスがあるらしい
確かに使いやすそうなフレーズだ
空を飛ぶようなメロディ、これはメロスピ系
Helloweenを彷彿させるソロ、きちんと作曲されている
ツインリード、さまざまなスタイルのメタルの美味しいところをきちんと分かっている印象
ただ、単曲ではいい曲だと思うが5,6はちょっと同じテンションの曲が続いて食傷気味
★★★☆
7.A Frozen Serenade
今度はどんな曲だろうか、ツインリードだが少しコードが変わっている
急にファンキーで粘り気のあるフレーズ、カッティングに移行
ガラッと雰囲気が変わった、アルバムの流れとしてはいい
ボーカルも歌い上げる感じだが暑苦しさはない、ビブラートがけっこう強いがまっすぐ伸びて節回しはあまりない
少しオリエンタルなメロディが出る、間奏部はミラスなどオリエンタルメタルを想起
プログレ的な展開、変拍子が入る、疾走してソロへ、この辺りの緩急はメイデン的か
歌メロはあまり共通点がないが、楽器隊や編曲にはメイデンからの影響をけっこう感じる、
疾走しきって終曲
★★★★☆
8.Dancing with the Devil
ちょっとモトリークルー的、Shout At The Devilともフレーズが被る
とはいえパクリ感はなく雰囲気だけ
コーラスは全然雰囲気が変わりJ-POP感がある
こういう展開は海外から聴くと「らしさ」になるのだろう
少しB'z的なヴァース、ハードロックなノリだがところどころブラストが入ってくる
J-POP的なコーラス
変拍子を経てTAK MATSUMOTO的なトーンのギターソロ、こういう引用を持ってくるのが上手い
ふたたびコーラスへ、最初のモトリー感はいつのまにかまったくなくなっている
最後長めのスキャット、オブリガード
★★★★
9.Signs Of Deliverance
メイデン的ツインリードからツーバスの疾走曲
ツーバスじゃなくワンバスで疾走したらもっとメイデンっぽいんだが、別に目指してはいないのだろう
メロスピ的、アンドレマトス期のAngraのようなメロディアスさ
ツーバスドコドコでアップテンポになるとメロスピ感が増すらしい
これを弾けたら楽しそう
ツインリード、ハロウィンやアングラあたりの王道メロスピ
間奏では少しシンフォニックなコード展開
間奏からサビへ、メロディアス
★★★★
10.Set The World On Fire
ちょくちょく昔のメタル曲を彷彿させる曲名を入れてくるのは意図的なのだろうか
これはアナイアレイターのアルバム名・曲名ママ
確かにスラッシーな曲だ、リズムが高速ツービートでザクザクしている
なるほど、オマージュ元を分かりやすくしているのかな
あまりジェフウォーターズ的な展開とは思わないが、スラッシーだしザクザクしている
ボーカルとギターが絡み合うコーラス、かなり高音
歌メロだけは徹頭徹尾自分たちらしいというか、女声ボーカルの日本音楽らしさがある
そこがシグニチャーだから独自性が歌メロで担保できるので楽器隊はいろいろ遊べるのだろう
間奏ではザクザクの刻みだけになり、そこから疾走していく
コード展開してメロディアスなツインリード、このビートにこのソロを載せるのか
ヴァースに戻り短いソロ、またヴァース、刻みがかなりザクザクで入ってくる
コーラスはハイトーンスクリームと展開するギター
このスタイルのボーカルはどこかで聞き覚えが、、、と思っていたら、キングダイアモンドの高音部分かもしれない
★★★★☆
11.The Unbroken
おや、たまたまだがこの間聞いたBon Joviの2020の最後の曲もUnbrokenだったな
もちろん全然雰囲気が違う、高速ロックンロールリズムのハードロック
そこからこういう行くか、というコーラス
J-POP的なポップさからの無理やりな転調、こういう「多少無理やりなメロディ展開」がエッセンスなのかもしれない
奇妙な味わいの曲、いろいろな組み合わせ方が斬新ではある
ちょっとリフはレインボウっぽいというか、リッチー得意のクラシカルなコード展開のロックンロール感がある
サビの唐突感がすごい、何度聞いても違和感というか存在感があって耳には残る
★★★☆
12.Swan Song
美しいキーボードからツーバス疾走、いわゆるジャパメタ式メロスピのオープニング
ツインリードが抒情的なメロディを奏で、リッチー的リフ、スポットライトキッズか
歌メロが立ち上がってくる、ギターが絡みつく
ブリッジで展開、日本的メロディ
さまざまなコードで上昇していく
サビはシンフォニックで少しオペラティックななメロディ、ラプソディ当たりのイタリアン・メタル感か
構築されたソロ、リズム隊はツーバスでブラストを安定して刻んでいる
高速エイトビートに移行、シンバルが入る
四つ打ちに移行、ツーバスに戻りコーラスへ
そうか、タイトルが「白鳥の湖」とあるようにこれはオペラやバレエなのかも、声楽的なサビ
曲ごとのコンセプトやモチーフが明確で、それが分かりやすいタイトルがついたアルバムなのかも知れない
★★★★☆
全体評価
★★★★☆
演奏技術も高く編曲能力も高い、音楽的な独自性も高い
さまざまなメタルや、メタル以外の音楽スタイルを取り入れているが基本となる歌メロには特徴がある
J-POP的と言うか、あまり他の国のメタルバンドが使わない極端な音程移動や強引な転調などがある
ブルースなどのルーツミュージックから切り離されたメロディ
洋楽を日本人が解釈し、日本独自の発達を遂げた「J-POP」というジャンルなのだと思う
いろいろな要素を組み合わせながらこのバンド以外には出せない音を出している
どの曲もアイデアがたくさん盛り込まれていて、テンションも緊張感も高くエンタメ性も高い
サビはポップでキャッチーだが、サビだけで印象に残るというより曲全体の編曲能力で勝負している
歌メロ主体の音楽ではあるが、どの曲も凝りまくっているため一聴で口ずさみたくなるほどの曲がなかったのは残念
この辺りはAmarantheにも近い印象を受ける
要素が詰まりすぎていてもう少し整理すればさらに化けそう
どこも力が入りすぎているので、スピーカーだとある程度大きな音で聴かないとガチャガチャしているのはマイナス点
ボーカルの声質は癖がある、クリアトーンで聴きやすい声だがビブラートが強く高音は細い
全体として予想よりレベルが高かった、シグネチャーサウンドとチャレンジ精神のある作りこまれた佳作
リスニング環境
夜・家・ヘッドホン