Dynazty / The Dark Delight
2007年結成、スウェーデンのメタルバンドDynazty(ダイナスティ)。AFMレコードと契約してから2枚目となる2020年7thアルバムです。ボーカルのNils MolinはAmaranthの男声ボーカルとしても活躍中。メインボーカルを張れるほど力量があるんですね。魅力的な声。アルバム全体としては一本調子でやや中だるみする場面もありましたが、クオリティは高く名曲も入っています。個人的には曲単位で言えばAmaranthの新譜より好きな曲があるかも。まだこのバンド「ならでは」の個性までは感じませんでしたが、今の北欧(スウェーデン)メタルを感じられる良盤。スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。
2020年リリース
★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補
1.Presence of Mind
コーラスのリフレイン、エフェクトがかかった声が遠くから近づいてくる
けっこう音圧高めのリフ、ボーカルが入ってくる
偶然なのだろうがヴァースが英語なのだがちょっとK-POPっぽい発音に聞こえる
サビ、マイケミカルロマンスのブラックパレードを彷彿させる
アジテーションに呼応するコーラス、群衆の叫びのようだ
語りパートを経てギターソロへ、けっこう弾いている
声だけのハーモニーでコーラスパート、クワイア的
サビがさらに続く、コード進行パターンが少し変わり展開感がある
ふたたびリフに戻る、ミドルテンポで獲物を狙うようなリズム
良いメロディ
★★★★
2.Paradis of the Architect
少しジェント、プログレメタル的な刻みが入るリフ、ドラムにところどころオケヒットのような景気の良い音が入る
メロディアス、ヴァースはメロハー的だったがサビがいきなりメロスピに
面白いバンドだ、メロディセンス的にどこのバンドだろう、USではないような気もするが、、、北欧なのかな
現時点では判別がつかない
ヴァースからコーラスへの展開が予想外で気持ちいい
バンドの演奏はけっこうハード目でドラムの音も迫力があり、ベース・ギターもエッジが立っている
単調になりがちなツーバス連打ものっぺりせず迫力のある音作り
★★★★☆
3.The Black
キーボードとギターのユニゾン、メロディアスなリフ
どこのメロディだろう、やはり北欧のバンドっぽい、あるいはデンマークとかオランダとかかもしれないが
メロディとリズムの絡み合いが印象的
ボーカルは歌い上げるライン、キーボードが勇壮さを増している
キーボードの音色が少しディスコサウンドっぽいのはBeast In Blackの2ndにも通じる
キーボードの音色やメロディの展開、ギターの迫力、この辺りが北欧っぽい印象
メロディアスなソロへ、ツインギターっぽい、交互に出てくる
コーラスへ、声だけのハーモニーで終了
★★★★
4.From Sound to Silence
ザクザク刻むギターとドラム、ミドルテンポでじっくり迫ってくる
メロディアスなボーカルが入ってくる
ブリッジでやや小節をずらしコーラスへ
グロールが出てくる、この曲はAmaranthと構成が似ているかも
とはいえ借り物感はなく独自性があり曲のクオリティは高い
コーラスが終わりツインリードのメロディアスなソロへ
メロディアスなフレーズが出てくる、ギターソロ部分がこの曲のクライマックス
コーラスとグロールが絡み合う
メロディアスなハーモニーリフで終曲
★★★☆
5.Hologram
ピアノからスタート、アコギが入ってくる
転調と共にボーカルが入る、静謐だがきらびやかなアコースティック楽器に乗るボーカルは熱い
バンドが一気に入ってきて音圧が上がるとともにコーラスへ
コーラスのボーカルラインとバックの音程が絡み合う、キーボードとギターのユニゾン
自由にボーカル音程が泳ぐようなヴァース
ブリッジからコーラスへ、Hologram Hologramの合いの手が入る
予想外の展開はないがバイキング的というかケルト的と言うか、コーラス部分のメロディから雰囲気を感じる
展開部を経てオクターブ下で低音ボーカルでコーラスをなぞり、ギターソロへ
ふたたびコーラス、この展開は盛り上がる
★★★★☆
6.Heartless Madness
キーボードのリフからスタート、そこにギターの刻みが入ってくる
Ghostを少し彷彿させる雰囲気がある始まり方だがボーカルが入ってくるとキビキビする
コーラスはちょっとホラーでオカルトな響き、吸血鬼のダンスのようだ
曲の雰囲気が前曲と全然違う、アルバムを聴いていて中だるみ感がなく楽しい
コーラスは反復するメロディでノリが良い
なめらかなギターソロ、もしかしてキーボードだろうか、ちょっと判別しづらい
ふたたびコーラスへ、コーラス終わり、次々とギターフレーズが出てきてどんどん盛り上げる
バンドが一丸となってフィナーレ
★★★★☆
7.Waterfall
また雰囲気が変わる、ギターの刻みとドラムに合わせてボーカルが歌い上げる
ミドルテンポで体が左右に揺れる、心地よいテンポ
クラシカルな美しさもあるコード進行のコーラス、オペラティックなメロディ
リズミカルなギターリフを経て再びヴァースへ
ボーカルは超絶ハイトーンや極端にパワフルといったタイプではないが声に艶がある
ちょっとゴシックっぽい歌い方、語尾の切り方などに耽美な特徴があるが、あくまでメタルの歌唱法
メロディアスなギターソロを経て、コーラスへ
ボーカルの歌い方や雰囲気には先日レビューしたUKのCreeperにも通じる印象を受ける
★★★★
8.Threading the Needle
ミドルテンポで進む曲、前の曲からは雰囲気が近い
ボーカルが裏声も使って歌い上げるブリッジから勇壮なコーラスへ
ドラムが上手い
ヴァースはボーカルがキーボードのみをバックに歌い上げる
メロディックパワーメタル的なコーラス
けっこう弾き倒すギターソロが入ってくる
キーボード音だけのブリッジからコーラスへ
フェードアウト
★★★☆
9.The Man and the Elements
ケルト的なフレーズからスタート、ギターの音かキーボードか、バグパイプのような音から
ボーカルは朗々と歌い上げる、ヴァースは少しDIO的な節回し
コーラスはツーバスとメロディックなパワーメタルコーラス
ヴァースに戻りバグパイプとボーカルが絡み合う
ギターソロへ、勇壮でケルティックなフレーズをギターが奏でる、アイリッシュハードロック
北欧やデンマークのバンドだとするとバイキングの方だが、さて
バグパイプで終曲
★★★☆
10.Apex
少し毛色が違う無国籍なメロディのリフと電子音
ブラストビートが入ってきてOi!の掛け声が続く
メロディアスなヴァースが入ってくる、ベースが前に出てくる
コーラスでテンポ感が加速する、勇壮なメロディ
分厚さを増していくコーラスを経てギターソロ、ツインリードでメロディアス
金切り声的なスクリームが入るブリッジ、ややオカルティックさがある
音が重なっていく
★★★★
11.The Road of Redemption
前の曲からSEで間髪入れずに次の曲へ
カントリーのような風合いの曲、リズムにアコースティック楽器とボーカル
コーラスの後はスライドギター的な音も出てくる
これは雰囲気がだいぶ変わった、このバンド一流のユーモアなのだろうか
メロディがだんだん盛り上がってきてバンドサウンドに、と思ったらまたカントリーリズム
ベタだが荒野に吹きすさぶ風とガンマンが浮かぶ
ただ、どこか音作りが未来的でSF的なのでスペースカウボーイだろうか
サビはメロディアスなパワーメタル、アコギとの落差が面白い
Helloweenにも一時期こういうセンスがあったが、もしかしてドイツのバンドなのだろうか
北欧っぽさは何曲かあったがアルバム全体として見ると分からなくなった
あまり転調を使わず、同じ調の中でしっかりメロディを完結させているのでドイツっぽさもある
いずれにせよ「現在のメタル」をしっかり踏まえた曲調、音作りなのは間違いない
面白い曲
★★★★
12.The Dark Delight
アルバムのタイトル・トラック、荘厳なキーボードからメロディアスなギターフレーズ、ビッグなドラムサウンド
ベースが主体となってルートを刻みボーカルが乗る
滑り落ちてくるようなネオクラシカルなキーボードフレーズ
ミドルテンポでじっくり曲が進む、勇壮なコーラス、メロディの質が高い
ネオクラシカルなギターソロへ、弾きまくるソロと構築されたクラシカルなフレーズを弾く両方ができるのは強い
どんどん盛り上がって終曲
★★★☆
13.The Soulder Devil(Bonus Track)
前の曲までが本編でこれはボートラらしい、確かに少し雰囲気は違うが「言われてみれば、、、」ぐらい
少しだけ音が荒っぽいというか音が塊になっている、ライブ感があるといったところか
ボーカルが少しエフェクトがかかっているような、声質がやや違う、録音時期やスタジオが違うのかもしれない
キーボードソロが軽快に速弾きを決めてくる
クラシカルなコーラスのメロディ、ドイツのパワーウルフあたりに近い
★★★☆
全体評価
★★★★
クオリティが高い、演奏もうまく編曲もうまい、ギターもキーボードも器用
プログレメタル的なバカテクまではいかないがかなり技巧派で、楽器隊の効きどころも多い
ただ、このバンドならではの個性がはっきり出ているかというとまだ分からない
「○○っぽい」という瞬間はたいていのバンドはあるし、むしろそれが同時代性と言うものだが、全体として聞けばそうしたものを超える「このバンドならでは」という印、シグネチャーサウンドがあるのが偉大なバンドだ
2,5は独自性を感じるが、アルバム全体ではまだそこまで行っていない
あと、曲調が似ていて4,8,9あたりでちょっと中だるみというか緊張感が途切れたのが惜しい
リスニング環境
夜・家・ヘッドホン