IRON MAIDEN / SENJUTSU
ついにリリースされたアイアンメイデンのニューアルバム。6年ぶり17作目のアルバムで、ディッキンソンとスミス復帰後、00年代の6人体制となってからは6作目のアルバム。本アルバムの注目点などは下記の記事にも書いています。
もう一つの注目点として、このアルバムUSでどこまでチャートが上昇するかも見ものです。前作、前々作は4位で、これが今のところのメイデンの最高位。今回はカニエウェストの新譜があるから1位は無理としても、2位、3位に入って記録更新できるでしょうか。なんとなく、事前の動きを見ているとけっこう上位に入る気がします。
というのも、限定ボックスセットが軒並みソールドアウトなんですよね。けっこう高価なんですが、1万円越えのブルーレイ付きボックスセットが日本では完売。ファンクラブ限定の5万円超えの豪華ボックスセットは(限定2021セットとはいえ)発売して2分後に完売。3回発売タイミングがありましたが全部即完売でしたからね。LPの売れ行きも日本だと3色限定版はソールドアウト。ストリーミングはわかりませんが、限定版だけでもフィジカルはかなり行っている気がします。最近のアーティストはフィジカルが弱いですから、ベテランバンドは固定ファンやコレクターがフィジカルを買うので意外とチャートに強い。特に、メイデンはコレクターが多くグッズが売れるバンドです。ボックスセットや限定LPはコレクターが買うのである程度ここでベースができているんじゃないかと思います。ただ、日本だと限定ボックスの発売日が少しずれました(9月22日に)、そこでセールスが分散集計されるのかもしれませんが、USではどうなるのでしょう。来週のチャートが楽しみです。UKのチャートも予想すると、前作、前々作と近作2作が1位になっているし、本作も1位を獲得できるのではないかと思います。メイデンってUKだと国民的バンドなんですよね。USのメタルを代表するメタリカと、UKのメタルを代表するメイデン。現在のセールスやライブ動員規模で言えばこの2組がメタルシーンのトップ。USでどこまで行けるでしょうか。これだけ本格的な欧州ロックサウンドがUSを席巻したら面白いですね。
先日、チャーリーワッツが亡くなってしまいましたが、UKロック第一世代、第一次ブリティッシュインベンション(ビートルズ、ストーンズなど)もそろそろ世代交代が近づいています。まだ現役なのがすごいですが、そろそろ80代ですからね。ロックということで言えば次はクィーンやツェッペリン、ディープパープルのハードロックやプログレ世代。その次はU2やデフレパートなどのポストパンクとNWOBHM世代。この第三世代の旗手の一つがアイアンメイデンです。当初はUSでのセールスはだいぶ差がありましたが、その後の長い活動でグローバルで見たら結構追い上げてきているんじゃないでしょうか。UKが生み出したロックバンドとしてはトップレベルの知名度とセールス、そして後世への影響力を誇るバンドの一つであることに異論はないでしょう。
メイデンはロックの殿堂(ロックンロールオブフェイム)にノミネートはされていましたが落選しています。その結果を受けてKISSのジーンシモンズが「ロックの殿堂はメタルに厳しい」みたいな話をしていましたが、客観的に見るとUSでのセールスがそこまで巨大ではないんですよね。メイデンはむしろ欧州、南米、アジアなどUS以外で世界的に人気がある。音楽的にあまりブルースなどのUSロックのルーツの影響を受けていないというか、もっと英国的・欧州的だから、USではそこまでウケないということもあるでしょう。とはいえ、世代交代の中で長年生き残ってきて、このアルバムでチャート上位に入れば改めてのロックの殿堂入りもありそう。ロックの殿堂に入るとUSでは一定の再評価の波がくるようなので、メイデンが改めて評価されると2020年代のUSメタルシーンも更に面白くなりそうで楽しみです。
前置きが長くなりました。それでは聞いていきましょう。
活動国:UK
ジャンル:ヘヴィメタル、NWOBHM、プログレッシブロック、ストーナーロック
活動年:1980-
リリース:2021年9月3日
メンバー:
ブルース・ディッキンソン(Vo)
スティーブ・ハリス(Ba)
デイブ・マーレイ(Gt)
エイドリアン・スミス(Gt)
ヤニック・ガーズ(Gt)
ニコ・マクブレイン(Dr)
総合評価 ★★★★★
前半はメイデンによるストーナーメタル。もともとその要素は持っていたがより強く、かなり明確にストーナーの要素が出ている。特にリードトラックにもなった3はメイデン風サザンロックとも言える新機軸の曲。今のUSのサウンドに合わせに行ったのだろう。スミス・ディッキンソンコンビの快作。そして白眉の出来は最後のハリス単独曲3連打、30分以上のパート。メイデンとは何か、6人編成の今のメイデンが出しうるサウンド、アンサンブルの可能性を最大限に引き出している。こうして聞くとメタルという音楽はロックンロールからは別の地平から来ている、どこかで分岐しているのがわかる。少なくともメイデンは英国トラッドや英国ポップスの影響、欧州音楽の影響が強い。それは60年代~70年代のUKプログレッシブロックバンドたちが切り拓いたものだろう。そして、メイデン自身がその大きな分岐点の一つになっている。他の曲も各ソングライターが新機軸のアイデアを詰め込んでいて、ガーズ作の6は新機軸。40周年(コロナによって1年ずれてしまったが)にふさわしい、今までのメイデンを振り返りつつも新しい門出を寿ぐような重厚且つフレッシュな作品。渾身の前作を超えてくるとは恐れ入りました。見事。
1. Senjutsu (Smith/Harris) 8:20 ★★★★☆
戦太鼓、ギターのコードカッティングからドラムが入ってくる。ややトライバルなリズム、ファイナルフロンティアのスタートを想起させるがあそこまで実験的ではなくそのままボーカルが入ってくる。ミドルテンポでボーカルが多重に重なり緊迫感を高める。壮大な抒情詩。声の調子も良い。考えてみると咽頭がんを乗り越えた後で初めてのスタジオアルバム。ちょっとNomadのような、ややエスニックさ、リードトラック3にも感じた砂漠感、エスニック感がある。別に日本風な感じはないが、異国情緒はある。エスニックさということではパワースレイブ的だが、1曲目だが疾走曲ではなく壮大なミドルテンポのナンバー。コーラスの重ね方、各種フレーズの重ね方が複雑化している。今回はけっこうサウンドがクリア。ライブ感はあるものの多重な音がそれぞれくっきりと存在している。音のるつぼ。呪術的、朗々と高音で歌う呪文のようにも聞こえるボーカルが反復する。そういえば00年代のメイデンは歌詞の反復をよく使うようになった。これは90年代メタリカが取り入れたストーナー的な要素の影響も受けているのかもな。ブラックアルバム以降の影響というか。それをメイデンなりに解釈したというか、相互に影響を与えている。もともとミドルテンポで雄大な世界観を出すのはメイデンのお家芸でもあった。ハロウドビーゼイネームとか。元をたどればブルーオイスターカルトなわけで、そうやってレガシーは引き継がれ進化していく。1曲目からストーナー的だな。今回はストーナーメタル、スラッジメタルも取り入れているのか。
2. Stratego (Gers/Harris) 4:59 ★★★★☆
緊迫感がある、サイレンのようなリフ。ただ、疾走感というよりは統制された速度。ややうちに籠ったボーカル、少し加工されている。こちらも先行配信されていた曲で、ガーズ参加。印象的なコーラス。アウトオブザサイレントプラネットのような、フックのあるコーラスを入れるのがガーズはうまい。お家芸的なウェスタンのリズム、ズッズズズッズズのギターの刻み。馬駆けリズム、トロットのリズムだが騎兵隊の突進というよりは整然とした整列、軽く駆ける程度の速度。間奏部でやはりややエスニックな音階が出てくる。これは和風をイメージしたのかもしれない。そこまであからさまではないがなんとなく和風の音階。間奏を経てサビへ。5分なのにさまざまなドラマが展開していく。
3. The Writing On The Wall (Smith/Dickinson) 6:13 ★★★★★
リードトラック、こうして改めて聞いても砂漠感、乾いた感が強い。揺れるようなリフ。このリフやイントロはメイデンにしては珍しいが、独特のギタートーンは健在。面白いなぁ、改めて聞くとメイデン風サザンロックというか、レイナードスキナード的な。そういえばトリプルギターだし。ボーカルが入ってくると風景が塗り替わる。ディッキンソンが関わっているのでボーカルラインはメロディアス。歌メロを作る力はなんだかんだボーカルだから高い気がする。ちょっとした節回しというか、本人が口ずさみながら生み出しているのがわかるというか。ストーナー、サザンロック、デザートロックを取り入れつつ、当然メイデンらしさというか、ストーナーが確立する前から存在するバンドなのでメイデン印がしっかりと押されている。これはかっこよくて新しいな。そうか、なぜこれをリードトラックにしたのか改めて考えてみると、今のUSメタルのトレンドはストーナー、デザート感であると思ってそこに合わせに行ったのかな。イカロスの飛翔やキャンアイプレイウィズマッドネスのころはああいうのがUSのトレンドだった(とスミスとディッキンソンは考えていた)。こういうトレンドを取り入れる姿勢、結果としてメイデンサウンドの幅を広げる姿勢は流石。メタリカも同様だが、「何をやってもメイデンになる」という自負だろう。一つ一つの音のつながり、詰め込まれた熱量が高く、且つ一つ一つの音が洗練されている。
4. Lost In A Lost World (Harris) 9:31 ★★★★☆
ハリス単独曲。ベースソロからではなくアコギのカッティングに漂うようなシンセ音をバックにボーカルが抑えめに歌う、最初は静かに始まるパターンだな。ハーモニーが入ってくる。ちょっとハーモニーが新機軸だな、シンガロングなウォウウォウコーラスではなく聖歌的なアーというコーラスが入ってくる。お、バンドが入ってきた。ハキハキしたミドルテンポ。ミドルテンポだが歯切れが良い。ハリス感のあるメロディ。初期の頃にも通じる、ロンドンの裏通り、バックストリートの感覚がある。キラーズのジャケットがなぜか目に浮かんだ。たたきつけるようなベースサウンドがそう思わせたのだろうか。匠の技やベテランの存在感はあるのだけれど、枯れた感じがない。やけくそな突進こそないものの、ライブ感というか、ロック的な熱さ、熱量が滾っている。音数的には抜けるコーラスを経て、いかにもメイデン、ハリス的なギターフレーズへ。合唱が起きそうなギターフレーズ。メイデン印。こういうタイプの曲で最初に印象に残ったのはフィアオブザダーク収録のアフレイドトゥシュートザストレンジャーズだな。歯切れの良いカッティングの中にも空間の広がり、サイケデリックな感じが出ている。ふと考えてみるとこの構成自体ストーナー的だな。延々とした反復と酩酊感。コーラスが来た後、最後はトラッド的なメロディのパート、フルートのような音とボーカルが歌い上げる。後ろにはベースの音が支えている。そういえばビートがないな。
5. Days Of Future Past (Smith/Dickinson) 4:03 ★★★★☆
また少しエスニックなフレーズ。タイトルはムーディーブルースのアルバム名(白昼夢)と同じだが意識しているのだろうか。曲調的にはいかにもブリティッシュハードロックというか、英国の薫りがするコーラス。そこまで早くはないがアップテンポ、疾走感のある曲。スミスらしさがある。リフの刻みとか、オーソドックスでお家芸だが心地よい。歌心があるメロディというか、高音の連続と同一フレーズの反復、みたいなことはあまりディッキンソンの曲には少ない(ハリスの曲に多い)気がする。2010年代以降のメイデン曲らしい曲。
6. The Time Machine (Gers/Harris) 7:09 ★★★★☆
ガーズ参加曲。エレキギターのフレーズとスロウなスタート、これぞフィアオブザダーク的か、やや演劇的なボーカル。バンドが入ってきて少し勢いがつくが、あまりテンポアップはしないな。あ、ボーカルフレーズの歯切れは良くなった。独特のスペースロック的なフレーズ。これはガーズのセンスだろうか。ちょっとほかのメイデン曲とは違うコード進行、和音感。70年代プログレ的な和音、転調というかボーカルメロディを同じ音高移動させながら別の場所に移動させることで転調のように感じる、ヴァースが面白い構造。イタリアンプログレ、PFMあたりが使っていた気がするな。そこからおそらくハリスパートであろう、反復するアイリッシュ、トラッド的なギターフレーズとボーカルが絡み合う。またコーラスに戻る。独特の浮遊感というかテンションがかかっている。テンポチェンジして刻むようなギターリフに。実験的で野心的な曲。ガーズらしさ、メイデンに新機軸を持ち込むという役割を見事に果たしている。
7. Darkest Hour (Smith/Dickinson) 7:20 ★★★★
そういえばCD2枚組だが、ここから2枚目だろうか。なんとなく雰囲気が変わった。調べたらやはりそう。新しい幕開けのような雰囲気。少し音の雰囲気が変わった。まぁ、一曲一曲違うのだけれど。スミスらしいアルペジオ。どこか明るさというか、みずみずしい感じがする。ミドルテンポで雄大に続いていく。ボーカルの歌メロとギターのアルペジオで聞かせる、弾き語り的な叙述詩。なんだか少しづつテンポアップしていくような感覚がある。最初は間延び感があったのだがだんだん突っかかるようになっているが少しづつ走っているのだろうか? 間奏になるとその感覚がなくなったが、、、。テンポは制御しているはずなのだがドラムの拍や前ノリの仕方だろうか。この後にくるハリス単独曲3連打のパートに対しての序曲、序章的な位置づけの曲だろうか。今までのように「1曲の中で完結する感覚」ではなく、かなりじっくりと熱量を盛り上げていく。とはいえ、7分以上の曲を難なく聞かせきる力量は流石。長さをそこまで感じない。波のSEが音をさらっていく。
8. Death Of The Celts (Harris) 10:20 ★★★★☆
いよいよハリスパート、ベースとギターアルペジオからスタート。ベースソロに近いな。ベースソロ的なフレーズをほかの楽器が装飾している。ギターのアルペジオとベースフレーズがユニゾンしている。そこからいかにもハリス的なベースフレーズに。メイデンらしいリフ、といえば、メロディアスなツインリードもあるが、このハリスのベースリフもお家芸、シグネチャーサウンド。ボーカルが切り込んでくる。言葉数が多めで、歯切れのよいメロディ。やはりハリス曲はトラッドの影響、ケルトやUKらしいメロディが強い。ジェスロタルにも通じるものがある。ミニマルなフレーズ、民謡的なフレーズを反復する。いくつかのパートが何度もそれぞれ何度か出てくる。そういえばこの曲はタイトルにも「ケルト」が入っているな。ケルトの死。影の国へ行くのだろうか。テンポチェンジする、迫力のあるプログレ。ジェスロタルやヴァンダーグラーフジェネレイター(VDGG)、あるいはジェネシスといったUKプログレを迫力と熱量のある坩堝のようなサウンドで再構築している。そもそも80年代からそうだからな。すでに40年。ちょっとベースサウンドとギターサウンドがところどころかなりレトロというか80年代の初期メイデン的な感じがある。本作でもデビュー作やキラーズの感覚がちょっとある。曲のつなぎ方、構成が初期の長尺曲を思わせる。リメンバートゥモローとか。3人のギタリストが次々とソロを回していく。そしてユニゾンのギターリフへ。バンド全体のアンサンブルをハリスがオーケストラのようにコントロールしている。交響曲。複雑なオーケストレーション。そういえばいわゆるクラシック音楽、巨大な交響曲はドイツ、フランス、イタリアが中心であり、イギリスはそのころはあまり文化的影響力は持っていなかった。著名なのはエドガーとホルストぐらい(ヘンデルはイギリスに帰化したがもともとドイツ人)。ロックになって花開き、世界の音楽シーンに多大な影響力を持ったのだろう。長さを感じさせず終曲。
9. The Parchment (Harris) 12:39 ★★★★☆
エスニックなフレーズからスタート、じっくりとしたミドルテンポで同じフレーズを反復する。ハリスは一つ一つのフレーズを大切にするというか執拗に繰り返す気がする。ヴァースが入ってくる。ヴァースの明朗さ、歯切れの良さも特徴。パンキッシュさもあるというか。これは初期から変わっていない。ただ、ハリス自身は「パンクからの影響はない」とずっと言っている。他のメンバー(デニスストラットンだったかな)からは「パンクからの影響も認めればいいのに」とか言われていた気がするが、たぶん本当にないのかもなぁ。ジェネシスとかも意外とフレーズは歯切れがよかった。当然同時代を生きた(メイデンは70年代後半から活動しているし、NWOBHMはポストパンクの1ムーブメントとも言える)から影響は受ける、同じライブハウスで音に接したり、そうした音に取り囲まれているから相互に干渉する、共鳴するところは意識・無意識問わずあったのかもしれないけれど、そもそもハリスがイメージしていたのはもっとプログレッシブなもの、パンクによって押しやられたプログレ、もっと言うとロックンロール以外の英国音楽や各地の音楽を取り込んだロックではなかったか。考えてみるとアフリカ系アメリカ人のブルースやロックンロール、ラテン系(これもアフリカ系移民の音楽の影響を受けている)の影響はロンドンにはあまりなかった。大英帝国ももちろんアフリカ文化の影響は受けているのだけれど、大規模な移民政策はとらなかったから日常的にアフリカ文化はイギリス文化に入っていない。新大陸と比較すると欧州大陸全般がそうだし、その中でもイギリスは特にアフリカ大陸から(地理的に)遠いからね。ルーツが別なのだろう。だから、ロックンロール以外のロック、英国音楽、ケルトやほかの欧州音楽をロックのスタイルに落とし込んで見せたプログレが魅力的だったのだろう。個人的にはメタル音楽はプログレと欧州各国のポップスから影響を受けているんじゃないのかと思っている。ブルース直系のロックンロール、ヘヴィブルース経由のハードロックとはどこかで分岐しており、その大きな特異点がメイデンであることは間違いない。この曲にはほとんどアフリカ系音楽の影響は感じない。ディッキンソンの節回しにはややアラビックなものも感じるが、それはライなどのこぶしの効かせ方を長年の中で身に着けてきたからで、(少なくともこの曲で)ハリスが狙ったものではないだろう。とても欧州的な音。気が付くとバンドがフルスロットルを出している。音が心地よくて夢中で思索していた。ハリス曲が続いているが、さすがというかメイデンというバンド、6人の今のメイデンの持っているポテンシャルやバンドアンサンブルを完全に生かしている、ほかの曲より深い次元でダイナミズムを引き出している気がする。
10. Hell On Earth (Harris) 11:19 ★★★★★
静かなイントロ、ただ、嵐の前の静けさというかエネルギーを蓄えている、噴火を待っているような。エネルギーの底流のようなベース。ギターフレーズが入ってくる。おや、ちょっとノルウェー的、北欧的なものも感じるな。このイントロには。考えてみたらノルウェーとイギリスはお隣だし、伝統音楽というかルーツが少し近い、相互に重なる部分があるのかもしれない。このイントロの荒涼としながらも寒さと美しさを感じさせる音像はちょっとノルウェー的。いきなりビートが入ってくる。お、バイキング的なフレーズ。これはあまりハリス曲にはなかったような気がする。新機軸のメロディ。メイデン以外の何物でもない、ハリス印の押されたフレーズなのだけれど、今までとは違う感じがする。これは素晴らしい曲だな。なんだか心を打たれるメロディ。なんだろう、ハリス曲はやはり心に響いてくる。3曲、30分以上ハリスの世界観に浸っているという至福。なんだかこの曲はメイデンの40年以上の歴史がフラッシュバックするな。航海してきた、切り開いてきた道のりを振り返りつつ、新たな門出、さらなる航海に旅立つような。勇壮さと誇りを感じるメロディ。個人的なメタル史、音楽史に重なっていく。
一瞬、音が止む。夢から覚めるように。またイントロが戻ってきて、そのままアウトロになっていく。霧に消えていく。