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VOLA / Witness

VOLAは2006年結成、2015年デビューアルバムリリースのデンマークのプログ・メタル・バンドです。ボーカル・ギター、キーボード、ベース、ドラムの4人組。ピンク・フロイド、ラムシュタイン、メシュガーなどの影響を感じます。インタビューによればOpeth、Porcupine Tree、Devin Townsend、Soilwork、Meshuggah、Massive Attack、Ulver、Mew、Steven Wilsonなどがフェイバリットとのこと。確かにそうした近代プログメタルの要素にクラシックなプログレッシブロック(というよりはリバイバルしたポンプロックか)のメロディラインを加え、電子音楽の要素も組み合わせたモダンで独自の音像を作り上げています。

1.Straight Lines 04:22 ★★★★☆

いかにもジェント的というか、近代プログ的な音像、重層的で重なる、ずれていくリズム、計算され整理されたポリリズム。Hakenを想起させる。コーラスのメロディがさえている。開放感がある。ボーカルはやや若々しくフレッシュな印象を受ける。個別の演奏のテクニックというよりはリズムの重ね方、アンサンブルの緻密さが印象に残る。個別のソロや冗長さを感じさせるパートは少なく、ソリッドにまとめられている印象。ギターの音圧こそ違うものの浮遊感はColdplayなどにも近いのだろうか。


2.Head Mounted Sideways 05:34 ★★★★

リズムとリフ、ヘヴィであまりメロディアスさはないリフで、壁のように迫ってくる。機械的な印象があるディストーションギター。そこにロボットのように加工された、透明感のあるクリーンヴォイスが乗る。やや声にノイズが乗っている。コーラスかな、開放感のあるパートへ。あまりメロディがなく、リズムで押すことでヴァースの緊迫感を作り、そこから開放感のあるパートへつなげるのか。お、また展開した。(ギルモア期の)Pink Floyd的というか、オーソドックスな展開ながら憂いと穏やかさのある音像。そこから再びコーラスへ。デンマークのバンドらしい。なるほどデンマークか。少し北欧っぽさもありつつ、ドイツ的なかっちり感もある。一番はUKに近いのかもな。間奏部はメタル・ヌーヴォ期のクリムゾンのようなヘヴィさ。UKプログレ的な静謐なパートで終曲。この曲はオールドスタイルのプログを想起させるパートが多い。


3.24 Light-Years 04:32 ★★★★☆

細かく浮かぶようなリズム、フレーズ。細かく分断される。全体として70年代、80年代からの影響も感じるな。後、メロディセンスが良い。アレンジこそ現代的、細かいリズムのパターンや、各楽器隊のソロパートより全体のアレンジで曲を展開していく感じ、どれかのパートが突出していないということがあるが、全体的には往年の「プログレッシブ・ロック」を想起させるし、クラシック・ロックのメロディセンスも感じる。メロディセンスはそこからブリットポップ、そしてcoldplayやmuseといったUKロックも通った感じはするけれど。そういえばデンマークというのはどういう音楽的影響が強いんだろうなぁ。透明で透き通るボーカルパート。


4.These Black Claws (feat. SHAHMEN) 05:52 ★★★★

雰囲気が変わり呪術的、ややデジタルでチープになぞられる不気味さ。ヒップホップ的なイントロ。そこからヘヴィなリフが繰り出される。ディストーションギターは音は大きめだがエッジが経っているというよりはやや丸みがあり、空間を包み込むようなアトモスフェリックな感じも受ける。ボーカルのメロディが入ると音圧が減り、少し飛び回る、オバケ屋敷のような音が絡む。コーラスで音が展開する。Mewなどの音響作品の影響も少し感じる。deftonesとかもあるのかも。途中でラップというよりスポークんワード的なパートが入る。コーラスは明るいゴシックといった感じ。


5.Freak 04:50 ★★★★

アコースティックギターの色合いが出てくる、透明感がある穏やかな音像。何かに通じるなぁと思ったら最近出たFrost*の新譜か。ギターの音は折り目正しい。丸みがある音、ピンクフロイドのアニマルズにも通じるアコースティックでプログレ的なバラード。曲そのものはそこまでひねりはなく淡々と進む。

6.Napalm 04:58 ★★★★

音像が明るい、光が差し込むようなシンセの音色、加工されたポップなボーカル。そのイントロからうねりのある近未来的でDjent感のあるリフへ。でも歌メロのセンスがいいな。ある意味クラシックでオールドスタイルというか、調整和音の中にきちんとおさまっていて王道で勝負している、今のUKのバンド群よりも「歌」で勝負しているかも。ボーカルはグロールなどの極端な表現はない、スクリームもほぼない。ゴシックな雰囲気はあまりなく、プログレ的な感触がある。コード進行のせいもあるだろう。あと、歌い方がストレートであまり癖が無い。ちょっとDevin Townsend的な「壮大で光り輝くような感じ」もある。Devinのように声色を使い分けはしないけれど。ライブでは分からないが、少なくともスタジオ盤ではスクリームまでは感情が高まらない。あくまで静謐に、穏やかな歌声。コーラスが多層に重なっていく。最後のパートはジョン・アンダーソン的なボイスオーケストレーション(声質は違うが)。

7.Future Bird 04:35 ★★★★

ヘヴィなリフ、絡み合うリズムの上に優美なキーボードフレーズ。現代プログの音像。ボーカルは穏やか。Steven Wilsonと言われれば確かに。ただ、彼よりもメロディアス、ボーカルメロディにより比重が置かれている。音や編曲も凝っているが、歌メロ、メロディに主眼が置かれている印象。現代プログ、Djent的な音像にシンフォ系やポンプロック的な空気感がけっこう強く混じっているのが特色に感じる。

8.Stone Leader Falling Down 04:23 ★★★★

うねるようなグルーヴィなリフ。ややオールドスタイルといえばオールドスタイル。ボーカルラインが重なっていく、ボーカルのメロディアスさは中盤以降増している。そこそこオールドスタイルというか、プログレ愛を感じる。ヘヴィなパートへの移動、珍しくややグロウルっぽい声が(エフェクト効果で)出てくる。ただ、歌のパートではクリアなまま。これ、激烈なパートでは声を変えたりしたくならないのかな。アグレッションの振れ幅を限定して、一定の気品と静謐さを保っている。たぶん、アグレッシブなパートはもっと振り切る選択肢もあるのだろうが、そこは選ばずあくまでメロディアスなボーカル。

9.Inside Your Fur 05:00 ★★★★☆

リズムとボーカルが絡み合う、ボーカルメロディに対する拍が展開する。やや違う形でずれる。どの曲も良質だが後半、やや似た感じというかバリエーションに欠ける感じも出てきたがこの曲は新機軸な印象がある。安定したリズムながらずれることで独特の浮遊感が出てくる。ボーカルメロディもじわじわと変化しながら壮大に展開する。たとえば火星のような、人類にとって巨大な未開の土地を切り開いていく、旅立っていくような音像。SF的。

総合評価 ★★★★☆

掘り出し物。Frost*にも近いものを感じた。UKプログの影響が強いが、現代的なDjentの影響も感じる。ただ、そうした新世代バンドの中ではずぬけてメロディへのこだわりが強く感じた。メロディの雰囲気は違うがSoenの新譜にも近いか。こちらはもっと牧歌的というか、ポンプロックやシンフォ系プログの影響も感じるやや静謐さ、穏やかさを感じさせるメロディ。とはいえ音やアンサンブルにはエッジやグルーヴがあり、面白い組み合わせ。いろいろと組み合わせてあるのでややオールドスタイルだったり、マニアックなところはあるが個人的には好み。ここまで往年のプログレ的なニュアンスを出すなら1曲ぐらい大曲があってもよかったのになぁと思いながら聞いていたが、最終曲はそれほど長尺ではないものの壮大なドラマ感があって満足できた。アルバム全体で見ればバラエティに富んでいるし、音作りの方法論は統一感があるためやや後半飽きてくるところもあるが最終曲で取り戻している。

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