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Deep Purple / Whoosh!

Deep Purple(DP)のラストアルバム、UKハードロックの源流の一つであり、50年以上にわたり現役でありつづけたDPもついに最終章。もともとはクラシックとロックの融合というアートロック(当時はプログレという言葉ができる前)バンドとして第一期をスタートし、67年のジミヘンデビューから始まったハードロックムーブメントに合わせて音楽性を変えた第二期、デヴィッド・カヴァーデイルとグレン・ヒューズという名ボーカリスト二名体制の第三期、そしてリッチー不在の第四期、、、それぞれ特色があり、名曲を生み出してきたバンドです。正直、だいぶレイドバックして脂が抜けた感じはありますが、ロックバンドの生き様として、一つの物語の終着点として感動的な出来。さようなら、そしてありがとうDeep Purple。DP時代のリッチー・ブラックモアにあこがれてギターを始めたし、最初に弾いたリフはSmoke On The Waterでした。

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Throw My Bones
緊迫感あるテンションコードでの曲
ブリッジ~コーラスでは開放感があるメロディ展開
ラストアルバムのオープニングにふさわしい、緊迫感がありつつ祝祭感もある曲
そもそもオーケストラとの融合でスタートしたバンドらしく、弦楽器が自然に溶け込んでいる
スティーブ・モーズ期の特徴である展開していくコード
★★★★

2.Drop the Weapon
ギターの空間的なリフとオルガン
問いかけるようなボーカル、もはやお家芸と言えるサウンド
今のキーボードは誰なのだろう、ドンエイリーだろうか
ハモンドサウンドが入ってくる
少しファンキーなフレーズ
Fireball当たりの雰囲気も少しある
歌メロは力が抜けているがフックはある
イアンギランはライブで見ると衰えが目立つが、やはり個性的な声の持ち主で表現力豊か
音域は狭くなっているのだろうが、魅力的な声をしている
ブルージーな間奏からユニゾンでプログレ的というかジャジーなフレーズ
歌メロは凝っている、最後は転調までする
激しい技の応酬などはないが、職人芸が堪能できる
★★★☆

3.We're All the Same in the Dark
魅力的なコード進行、スティーブモーズ期はこういうコード進行が多い
少し転調気味というか、予想外なコードなのだがきちんと成り立っている、フュージョンなどの語法なのだろうか
少なくともリッチー期とはコード進行が違う
明るめでブルージー、コードもそうだが音が明るい、バンドの状態が良いのだろう
落ち着いてはいるが枯れてはいない
★★★

4.Nothing at All
軽やかに舞うややクラシカルなギターフレーズ
少し中世的なメロディ
この辺りの要素はリッチーとジョンロードが持ち込んだと思っていたが、バンドに根付いているのだろう
間奏のキーボードはバロック的
ただ、あまりサウンドに緊迫感がない
2曲目以降、悪くはないのだが、もう少し緊迫感が欲しい
★★★

5.No Need to Shout
ミドルテンポでヘヴィなリフ、ギランらしい歌メロ
オルガンが鳴る、ギターの装飾音が入る
ギターソロからオルガンソロ、UKパブロック的
うねるようなリフ、揺れるメロディ
★★★

6.Step by Step
ささやくようなボーカル、忍び足で近づいてくる
粘り気のあるギター、緊迫感は薄め
途中でクラシカルなフレーズが入る
歌メロは丁寧に作られているがテンションは低い
プログレの間奏部だけを抜き出したような
間奏のメロディはギターとオルガンが絡み合い、展開していく
完成度の高いインタールード
★★★☆

7.What the What
少し軽快でアップテンポなロックンロールナンバー
ギランのボーカルも中音域だがグルーヴしている
リズムアンドブルース、レイドバックしているがダンサブル
軽快なダンスホール
間奏のモーズのスライドギターはさすがの出来
リラックスしたドライブにも合う
ビートルズのBack in the USSRを成熟させた感じ
★★★★

8.The Long Way Round
少しテンションが上がってきた、ギターの刻み、絡み合うボーカル、隙間を埋めるオルガン、タイトなリズム
ロジャーグルーバーのベースは相変わらずドライブ力がある
ただ、緊迫感はそこまで高くなくリラックスしたムードはある
コーラス終わりから次のヴァースまでの流れはプログレ的、KANSAS要素か
キーボードソロの音色もプログレ的、スペーシーで現実の楽器からかけ離れた音
ギターも音の粒は流麗だが比較的自由に弾いている
途中のベースの刻み、ふと思ったがスティーブハリスはロジャーグローバーに影響を受けたのだろうか
受けたんだろうな
それほど熱を帯びるパートはないがじわじわと感情を動かしていく
曲の余韻としてアウトロのギターソロ、どこかへ旅立っていく、フロイドのエンドレスリバーのような空間的な音
★★★★

9.The Power of the Moon
前の曲のアウトロから間髪入れずこの曲へ、少しダークなスタート
不安定なギターのリフが反復される、ささやくようなギランの声
とはいえそこまで不穏な感じは強まらず、少し黄昏た雰囲気で曲は進行していく
ギランの歌い方はそこまでシアトリカルにはならない
そういえば自伝でブルースディッキンソンもギランに影響を受けたと言っていたな
今のギランの歌い方はすっかり脂が抜けているが、もともとそれほど感傷的なボーカリストではなかったのかもしれない
あまり演劇的だったり感情のままに高まるというよりは声色をコントロールする器楽的なボーカリストかも
そこに演劇性を足したのがブルースなのだろう
ただ、80年代ぐらいからだんだん高音は出なくなっていったらしい
考えてみるとそれからずっと中音域でやっているのか
本質はロックンロール、ブギのボーカリストなのだろう、そういうフェイクもうまい
70年代の一時期、超ハイトーンボーカルみたいな時期の方がギランのボーカリスト人生の中で異色なのか
★★★

10.Remission Possible
こちらも間髪入れずに次の曲へ、オルガンソロ、アルペジオを刻むギター
キーボードとギターは流麗に舞い踊る、ドラムも手数が多いが大人しめ
インタールード
★★

11.Man Alive
前の曲から間髪入れずに続く、8曲目からこの曲までつながっている、後半の盛り上がりか
幽玄な弦楽器の上からエフェクトがかかったボーカルが降ってくる
このバンドらしいギターリフとオルガンの掛け合い
ギランの歌い方がやや切迫感を持っている
音に勢いが出てきた、バンドの熱が高まって静謐なパートへ、語りが入る
ジャケットの風化していく宇宙服の男の語りだろうか
宇宙に去っていく、もともとスペーシーなイメージはないバンドだったが、「異邦者」としてのメタファーか
異端児、変革者であったことは間違いない
変拍子感がある、ギターとオルガンがせめぎ合う、ベースも表に出てくる、ドラムが支える
ふたたび静謐な語りパートへ
きしむような音、何かが去っていく、フェードアウト
★★★☆

12.And the Address
気を取り直したように軽快なリフが始まる、ロックンロール
これはインストかな、確か1stアルバムにも収録されていた曲
前曲で本編が終わり、ここからはアンコールといったところか
インスト部分だけ聞くとジャムバンド感もある、考えてみたらDPはジャムバンドの走り的な部分もあるな
ジミヘンなどに影響を受けたのだろうか、あるいはプログレか
3分や5分の曲をライブでは2倍、3倍の長さで演奏していた
ギランはその間タンバリンを叩いている
この曲ではライブではないからタンバリンは入っていないようだけれど

追記:調べてみたら1st収録曲でリッチーブラックモアも作曲に参加している
この曲を最後に入れたということは、バンドの歴史の円環を閉じると同時に和解が果たされた証でもあるんだろう
★★★☆

13.Dancing in My Sleep
まさかのスペーシーでファンキーな曲、ちょっとジャミロクワイ的
ラストアルバム、長いキャリアの最後の最後にこういう曲で〆るところはさすが英国人
この辺りのブラックユーモア感がこのバンドの持ち味なのだろう
途中のオルガンソロは「らしい」感じ、そこからギターソロが続く
ブルースブラザースで二人が去った後ステージでバンドがロックンロールを演奏し続けたが、ああいう終幕か
ソロのまま終わるかと思ったらボーカルが戻ってきた
機嫌がよさそうに歌っている
「眠りの中で踊っている」
さようならDeep Purple
★★★★

全体評価
★★★☆
丁寧に作曲されているし演奏や編曲・プロダクションのレベルも当然のように高いが緊迫感は薄い
ロックンロールとしての軽快さはあるが、もう少しフレッシュさは欲しい
このバンドにしかたどり着けない境地といえば境地だが、ハードロックとしてのダイナミズムは少ない
ラストアルバム、モーズ期で作り上げてきた音楽性の集大成
一番最後にフレッシュでユーモラスな曲を持ってきたのは感動した
かつてあったバンド内のヒリヒリした緊張感、せめぎ合う各楽器のバトル感はほぼ感じなかったが
この境地に達して終焉を迎えたというのは、ロックバンド物語のハッピーエンドなのだろう

リスニング環境
夜・家・スピーカー(1-4)
朝・家・ヘッドホン(5以降)

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