「楽しい、生きがいを一緒に見つめていこう。」いちごライフ所長/山岸麻野インタビュー
お疲れ様です!
理学療法士 安田です。
今回、日本介護業界理事長の
平栗 潤一さんよりご紹介いただきました
いちごライフ所長の山岸麻野さん に
インタビューをさせていただきました。
リハビリテーションは、再び適した状態にすること。
そこには必ず「生活(=人生)」があります。
何のために?とゴールを見据えたとき、
「患者」「利用者」と一括りにはできない、
一人一人の人生に寄り添うサービスを提供する
いちごライフさんの活動をご紹介します!
※本記事は5〜7分で読めます。
※動画もご覧いただけたら嬉しいです!
実際にお話を伺った時のものです。
山岸さんは元々歯科衛生士。
5年の現場経験を積む中で
「人が生きる」ということに興味を抱き、
介護支援専門員の資格を取得。
12年間、高齢者の人生に寄り添う職業である
ケアマネジャーとして職務についてこられた。
人生の先輩達の生き様を目の当たりにし、
高齢者の自立支援をサポートをしようと
現在はデイサービスの所長として
利用者様の「〜したい」を叶える。
介護甲子園ファイナリストの実績を持つ
山岸さんから溢れ出るパワーの源は、
「利用者様が楽しそうに活動する姿」。
職員含めみんなが大好きな場所を、
みんなで創る素敵なデイサービス
「いちごライフ」の魅力と、
山岸さんのワクワクするお話をお届けします。
「〜したいをカタチにする力」
ー あなたはなぜ、医療職になりたいの? ー
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自分の幸せ?人の幸せ?
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風呂なし、食事なし、マシンなし。
ちょっと変わった短時間デイサービス「いちごライフ」
3時間という短い時間は、
利用者にとってどんな時間なのだろう。
一般的なデイサービスのイメージは、
・来所したらお茶を飲んで体調管理
・集団体操をしてテレビを見る
・余暇時間はそれぞれ塗り絵や折り紙
・隣のと世間話をして時間を過ごす
目的や生きがいを感じる要素は少ない印象だ。
しかし、
この「余暇時間」に利用者が光り輝く
瞬間を作っているのが、
山岸さんが所長を務めるいちごライフ。
ここにはいくつもの「プロジェクト」が
企画されていた。
「花のたねプロジェクト」
花が咲く時期に、
花の種を地域のみんなに配るプロジェクト。
花の数は限られていても、
種はたくさん落ちている。
色んなところに配った種が咲かせるのは、
コミュニケーションの花。
「こんな色の花が咲いたよ!」
「うちの施設ではやっと蕾がついたよ!」
開花情報が日頃の何気ない
地域とのコミュニケーションに。
「熊本復興支援プロジェクト」
熊本県など災害に遭われた地域に、
メッセージ付きの雑巾を縫って届けるプロジェクト。
利用者が届けるメッセージは
共感する気持ちと応援の言葉。
利用者の中には、かつて福井県で起きた
地震の災害を経験している方もいる。
「辛いことを経験したけど、
きっと乗り越えられるから大丈夫。頑張ろう。」
そんなメッセージと共に手作りの雑巾を
送っている。
このプロジェクトは近隣の施設にも声をかけ、
実際に集まった雑巾の数は400個。
この経験から山岸さんが確信したことがあるという。
何歳になっても、
誰かのために力になりたい。
誰かの役に立ちたい。
人を助けられるような自分でいたい。
これが「生きがい」であり、
〜したいをつくるきっかけなんだ。
3時間という短い時間の中で作られているのは、
利用者自身が誰かを想って作られた作品。
雑巾が400個も集まったのは、
みんなが同じ気持ちでいる証であり、
そんな「きっかけ」を探しているということ。
「何かしたいと思っていても、
何をしていいか、どうやったらいいかが
わからないから、
動き出すことができないだけなんです。
いちごライフはそんな企画を持って、
色んな扉をノックして
「一緒にやろう!」と
みんなを繋げる役割を
担っていきたいなと思います。」
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当たり前のやりとりが「絆」を作る
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「かもんライフ&でりばライフ」
施設の中のみならぬ、
外出支援として外へ出る活動も
精力的に行ってきた。
しかし、コロナ禍では思うように
外部との活動ができない。
そんな中配布された「アベのマスク」が
家族や地域と繋がるきっかけとなった。
使い捨てマスクが主流となり、
使い道がないガーゼマスクを寄付で募集。
解体されたマスクは、
色とりどりのリメイクマスクに大変身。
温泉旅館からは温泉用タオルを寄付してくれたり、
クリスマスには、
「松ぼっくりのツリーを作りたいんだけど」と
声をあげると、
近所の子供が松ぼっくりを
たくさん拾ってきてくれる。
同じ場所で活動ができなくても、
声をあげればみんなができることをしようと動く。
そんな「みんなの輪が広がる」理由は
とても小さな当たり前のことから生まれていた。
大切にしていることは、
「ありがとう」とお返しをすることです。
いただいたものがどうなったのか、
出来上がった作品と一緒に写真やお手紙を
送っています。
何かをいただいたら、
ありがとうを伝える。
そんな当たり前のやりとりの中から
「絆」が生まれ、
お互いがお互いを応援したくなる。
そんな関係になっていくのかな。
いちごライフの職員が大切にしていることは、
受け取る側の感性を持っているかどうか。
こんなことしたら楽しい、
こんなものを受け取ったら嬉しい!
そんな当たり前に感じる一般的な目線を
忘れないようにしている。
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主人公は利用者自身!
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福祉の業界にいると、
何かしてあげたい、役に立ちたい、と
「〜してあげたい」気持ちが強い。
これはサービス提供者として、
とても大切な感性。
だけど、
もっとそれって当たり前だよね
って目線を持っていて欲しい。
いちごライフでは、
利用者は自分で自分のマグカップを作る。
真っ白のカップに自分で絵を描き、名前を書く。
そうすると必然と自分のマグカップと認識し、
自然と自分のカップは自分で洗うようになる。
すごい!魔法みたい!!
自分が作用する場所は自分で掃除をするし、
帰る前には片付けをする。
自分ごと化するってことが、
当たり前を生む魔法なんだ。
私たち(医療職・介護職)が
「何かをしてあげたい」ではなく、
利用者自身が
誰かのために、
何かをしてあげたい。
私、役に立てるんだ、役に立ちたい!
そんなやる気スイッチを押す
きっかけを作ることが
サポートする側の役割なんじゃないかな。
いちごライフでは誕生日を迎えると、
誕生日の方が自分で「わたし企画」をする。
昔、マジックショーをされていた利用者さん。
年齢と身体の衰えもあり、
ショーはもうできないと諦めていた。
「わたし企画でもう一度マジックショーをやりたい!」
実現できるように、みんなでサポートしながら、
その方が主人公となり、見事にショーを開催。
「わたし、椅子ごと浮いたんです!空中に!笑」
山岸さんは子供のように楽しそうに話す。
本人が楽しい!と思っていることは、
自然と周りに伝染し、
みんなが楽しい感覚になる。
「楽しい」って伝染するんです。
自分が楽しいことをする人、
皆が楽しいことをする人。
色んな人の「楽しい」に、
みんなで触れることで一緒に成長していき、
色んなことを共有していくことができる。
いちごライフには、
「目的」 や 「やりがい」 が
溢れています。
わたしは、
いちごライフが大好き。
職員も利用者も
みんな、大好き。
職員は介護に関して素人でも、
それぞれが自分の力をつけ、キラキラしている。
「得意なところを伸ばす」ことが大事。
苦手なところは得意な人が支え、
みんなが苦手なことはみんなで頑張る。
等身大でやっていける環境をみんなで作るから、
仕事をしていて毎日がキラキラするのだろう。
自然と自発的にみんなが動く環境だからこそ、
部屋のあちこちで色んな輝きが生まれている。
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セラピストはなぜ必要?
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さて、デイサービスにおいて
セラピストがどんな役割を担っているのだろうか。
「楽しい」「生きがい」がコンセプト。
目で見た利用者の笑顔や行動からは
一目瞭然で生き生きしていることはわかる。
しかし、それは感覚的な評価であり、
実際に生活にどう繋がっているのかは
わからない。
何がやる気スイッチなのかを見つけるために、
「興味・関心チェックリスト」を活用している。
これは作業療法士協会が作っているもの。
チェックリストからわかることは、
みんな必ず得意技を持っているということ。
福井県はかつて繊維の町だった。
そのため針仕事が上手な方、
ものづくりが得意な方が多い。
その人の得意をどう活かすことができるのか、
職員間で検討する。
楽しさや生きがいを活動の中でどう活かせるかは、
セラピストの視点があるかないかで
大きな違いがある。
「歩けないよ〜」と言っている人が
外出支援で外出をすると、
心配するくらいに
スタスタ歩いているなんてことが
よくあります。
きっかけを作ることはできたとしても、
行動を生活に結び付けていくために、
どんなことができるのか。
そんなヒントをくれるのが
セラピストなんです。
セラピストの可能性は
実際に触れて治療をすることだけではない。
ICFに基づいた考え方や、物事の組み立て方、
根拠を持って説明できることも強みである。
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最後に
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山岸さんが仕事において大切にしていること。
それは畑仕事が大好きなおじいちゃんが
教えてくれた言葉。
「人の畑をやるんじゃない。
自分の畑やと思って、
丹精込めて、真心込めて、やるんやで。」
いちごライフで取り組んできたことは、
特別なことではない。
だけど、それぞれの役割や制限があるなかで、
できないこともある。
だからこそ、
いちごライフと関わることで、
全国にみんなの輪が広がっていけたら嬉しい。
みんなが持っている
ハッピーの種に、
土を、水を与えよう。
いちごライフは
地域に根付いたデイサービスとして
これからもあり続けたい。
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山岸さんの言葉、いちごライフのコンセプトから、
医療職として大切なことを教えていただきました。
私たち医療職は、〜してあげる人ではない。
そんな利用者の「〜したい」をサポートするために、
まずは自分自身が社会貢献や地域活動に
関わることから始めてみよう。
これは医療職としての関わりでもあり、
人としての関わり方でもあります。
今回の質問は、
なぜ、医療職になりたいのか。
資格を活かして、
誰にどんな関わりをしたいか
考えてみましょう。
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◆いちごライフHP◆
http://kenkoukai.or.jp/daycare/life/
◆いちごライフのブログ◆
http://blog.livedoor.jp/lifeichigo/
◆山岸麻野Facebook◆
https://www.facebook.com/profile.php?id=100007279395931