母の夢
母は少し変わった不思議な人で、嘘か本当か昔話をよくしてくれる。
タイの実家を建てた時に白い蛇が現れたからウチは安泰だよ、だとか、美大に入学したけど考古学を学んでいた、とか、タイから日本に来る時、覚悟を決めるために片道切符しか買わずに日本に留学しにきた、とか。
正直、どこまで本当かわからないけど本当の顔をしながら言うので信じてあげるしかないのだ。
話してくれた昔話の一つにこんな話がある。
あなたが生まれる前の日、亀が海を泳いでいる夢を見た。
妹が生まれる前の日はワニの夢を見た。
母はタイの人なので、夢に動物が出てくることは尊いことらしい。
幼少期のボクは、ボクがのろまな亀、妹が大食いのワニだったことにショックを覚えた。
妹は昔からよく食べては寝る子だったのでワニは納得だった。
ボクは、歩くのがのんびりした亀？どんくさくて浦島太郎ではいじめられるあの亀かあ。と、落胆していた。
半分本気にしていたその昔話が、頭から消えかけた頃。ボクはたまたまウミガメの豆知識を動画だかテレビで見かけた。彼らは海の中で悠々と、しかも見たことのないスピードで泳いでいた。
