シェア
yashi_masa
2018年6月8日 00:45
春の真夜中は空が真っ暗ではないことを知った。雲が朧げに月を覆っているが、街灯が無くとも道が分かるぐらいには明るく、少し青みがかった世界だ。イシカワは死体を確認した後、自宅前の公園のベンチに座りスマートフォンを眺めた。薄暗い世界に不釣り合いな光源を放っているそれが酷く醜いものに感じた。スマートフォンの中には数多のアプリがあるが、ほとんど使ってはいない。意味もなく右手の親指でスクロールする。