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連載小説《Nagaki code》第18話─椿さんの幼馴染

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 薬師岱公園の駐車場には、すでに照内さんのオデッセイが街灯に照らされ停まっていた。もうみんな来ているのだろう。カズさんは照内さんの車とスペースをひとつ空けて車を停める。僕らは車を降りた。
「お待たせーっす」
 酒の入った袋を掲げながらカズさんが言う。夜桜が綺麗に見える、公園の奥の開けたスペースの一角にブルーシートが敷かれ、みんなはそこに座っている。メンバーは、夜勤の佐伯さんと山崎さんを除く薬師岱郵便事業局の職員と、薬師岱郵便局の職員、そして石垣を含めた7名。
「石垣君も来たんだな」
 あぐらをかいていた照内さんが言う。「おじゃましまっす」と石垣が頭を下げた。
 後から来た僕らもブルーシートの上に座る。僕は椿さんの隣。少し……緊張する。
 
「それじゃ、乾杯」
 渋みのある声で高瀬局長が音頭をとり、みんなで乾杯をする。僕は、大好きな日本酒のワンカップをぐいっと飲む。うん、美味しい。みんなも美味しそうに酒を飲んでいる。
「なぁなぁ長岐君。今、好きな人いるのか?」
 カズさんは肩を組んで、いきなり恋バナを振ってくる。早速酔っ払っているのだろうか。……いや違う、このノリはいつものカズさんだ。
「い、いないですよ!」
 僕は慌ててそう答える。……そんなの嘘だ。好きな人なら、すぐ隣にいるのに。
「ふーんそうかい? じゃあ清家くんは?」
 カズさんは自分の隣にいた清家さんに話を振る。
「えっ!?」
 突然のフリに驚いたのだろう。清家さんはビックリしてカズさんを見た。
「誰か好きな人いないのか?」
「えっ、うーん……」
 すっかり困りきってしまった清家さんに、カズさんは言った。
「一緒に働いてる椿ちゃんなんてどうなんだ?」
 その言葉に、日本酒を飲んでいた僕はむせ返った。
「おいおい、何で長岐君がむせてんだ」
 驚いたようにカズさんが言う。「な、何でもありませんっ」と僕は口元を拭った。
「椿は幼馴染だし、恋愛感情とは違いますよぉ」
 清家さんは笑った。
「そうね、清家くんは気の合う友達だし! そうよねっ」
「だよねー」
 そう言って椿さんと清家さんは笑い合う。椿さんと清家さんが幼馴染だったとは知らなかった。清家さんは、僕の知らない椿さんを昔から知っているんだ……

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