おいしい温度。燗の利き酒Vol.7『みむろ杉/Dio Abita/低アルコール・純米吟醸・無ろ過原酒』
日本酒は、自分の魅力と特性を最高の形で表現してくれる温度を求めている。
「同じ日本酒で、燗の温度を変えると味わいがどれほど変化するか」を試す『おいしい温度。燗の利き酒』シリーズの第7段。
前回、秋鹿の無濾過生原酒を燗したところ、とっても美味しく出来たことから、生酒のように「普通は冷やして飲むよね」というお酒であっても、燗でしっかり美味しく味わえるんだという発見があり、
今回は、同じく「普通は冷やして飲むよね」という、カジュアルな低アルコール酒で燗を試してみました。
燗付けの方法は、最近購入した千葉麻里絵さんの日本酒本にあった以下のアドバイスに従ってます。(前回と同様)
1)「温度を5度刻みで上げていき、その都度香りを確かめる」
2)「その香りの変化を体感する」
3)「燗酒の出来上がりは香りの変化で判断する。温度を上げていくと炊きたての米のホクホクした香りが立つ瞬間がある」
4)「そこで急冷しながら再度ゆっくり加熱すると少し甘い香りが立ちのぼる。その瞬間で引き上げる」
詳細は以下の通りです。
1. 銘柄選定
日本酒の聖地、奈良の三輪(みわ)にある『今西酒造』さんの造られる『みむろ杉』。丁寧な造りから醸し出される、お米の綺麗な甘みが素晴らしく、ぼくの愛する銘柄の一つです。
ちなみに、県内地元流通の漢字『三諸杉』ではなく、今回は県外流通のひらがな『みむろ杉』シリーズの低アルコール版です。
「カジュアルに気軽に飲んでもらえれば」という蔵元さんの思いを込めたお酒。カジュアルと言いながら、丁寧な造りのたっぷりの旨みは健在。飲みやすさとの両立。
たっぷりのお米の旨みと綺麗な甘さを、ラムネを思わせる酸が軽快に届けてくれます。無ろ過の重層感と原酒のボリューム感を兼ね備えながらも、低アルコール度数で気軽に飲ませてくれる素敵なお酒。(通常の原酒は17〜18度程度ですが、このお酒は原酒ながら13度)。
冒頭記載の通り、こういう低アルコール酒というのは「普通は冷やして飲むよね」という通念があると思うのですが、前回の秋鹿の生酒同様、こういうしっかりした造りの実力派の日本酒は燗でもいけるはずと思い、試してみました。
造りに関するラベル写真です。
2. 用いた酒器等の道具と燗付け方法
1) 道具
・8勺サイズの利き猪口(磁器)
・ちろり(アルミ製)
・温度計:TANITAの料理用デジタル温度計
2)燗付け方法
ちろりに入れたお酒を鍋で湯煎。詳細は冒頭に記載の通りで、温度を上げながら5℃刻みで香りを確かめました。
ボウルに張った氷水で急冷し、その後再度温度を上げるという方法を採用してます。
急冷直前の酒の温度は約47℃。これを35℃程度まで、ちろりごと氷水で冷やして、その後再度47℃近くまで上げました。
3. 利き酒結果
燗付けは上記の通り、温度を上げながら5℃刻みで香りを確かめていきました。
30℃から35℃あたりでは、冷やした時にも感じるお米の甘さが綿飴のような香りとなって膨んでくる。
一旦40℃あたりで甘い香りのピークが来た気がして一度利き酒をするも、酸味が少し前に出過ぎる気がしで、もう少し温度を上げてみる。
酸味が立ってくると同時に50℃手前、47℃あたりでアルコールの香りが立ってきて、香りにも甘さとのバランスが出てきたため、一旦鍋の湯煎から引き上げ。
氷水の入ったボウルに、すぐにちろりごと浸し、35℃まで急冷。
その後再び47℃あたりまで上げて、利き酒してみました。
酸味と甘みのバランス感、そこにアルコールの香りがいい具合に引き締め効果となって、だるさが前に出ず、これは冷やして飲むのとは別のお酒のように美味しい。
一回火入れのフレッシュ感もそのままそこにある。
4. 総評
燗をすることで、冷やして飲んだ時には前面に感じる綺麗なお米の甘さが少し後ろへいく代わりに酸味が立ち、アルコールの香りが加わる。
その全体のバランス感が、冷やすのとは別の意味合いで飲みやすく美味しいと感じました。
冷やした時とは甘みと酸味のバランスが変わっても、このお酒の芯にある旨みの厚さと丁寧な味わいはそのままそこにあったと思います。
急冷することによる、外側のバリア・輪郭感がお米の美味しさを、真ん中に閉じこめている様子も感じ取れました。
燗酒、良いですねー。美味いです。
もっと腕を上げて美味しい燗酒を振る舞ったりしてみたいな。
もう、これは季節に逆行して真夏に向かって燗ばかりしてみようかな。笑
というわけで、今回は低アルコール酒でも丁寧に作られた実力あるお酒は、燗でも美味しかったというご報告でした。
ごちそうさまでした!
追伸:ちなみに今回の『みむろ杉』さんの蔵元がある、奈良の三輪。日本最古の神社と呼ばれる大神神社に行ってきたレポートも併せてどうぞ。日本酒が古来から神さまへの神聖なお供え物であった点を考えると、日本最古の神社に現在もお酒を奉納されている今西酒造さんは、それだけでとっても貴重な蔵元さんだと思います。
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