見出し画像

法務部って何してる人?仕事内容と難しさについて。

私は新卒から6年間、法務部で仕事をしています。

現在勤めている企業の規模としては、従業員が全体で数万人いる規模ですが、法務部の人数は30人程度です。こうしてみると、法務部は世間一般でも一般的な職種ではないですね。

今でこそ、若手法務の方を中心に法務の仕事について発信しているブログなども少し増えてきましたが、私が新卒の際に法務部の仕事について知りたくて、「法務部 仕事」で検索しても、全く情報が出てきませんでした。

(弁護士の方の書籍やブログはあるものの、法務部と弁護士は仕事内容や働き方が全く異なるので参考にはならず。)

この記事では、私が当時知りたかった「法務部の仕事」と「法務業務でどういったところが難しいのか」を、今後法務部に配属されるかもしれない人や、法務部に転職するか迷っている人向けに書いていこうと思います。

法務部の仕事の概要

仕事としては、企業によって仕事の範囲が異なるものの、めちゃくちゃざーーーくっり言うと、契約書レビューや、ビジネスプランのチェック、トラブル対応、社内の啓蒙活動(勉強会等)などが主な仕事です。

やっていることは企業によって少しずつ違っても、企業が予想外のリスクに陥らないよう事前/事後でリスクを検討し、その後どのように対処すべきかを提案することが仕事のコアとなります。

例えば、契約書レビューでいえば、契約書の中に会社に対してリスクになるような記述(例えば、払う気の無かったお金を払わされたり、商品を思ってもみない形で使われてしまうなど)が無いかを確認し、そういった記述があれば修正交渉をします。

トラブルは、既に事がおこってしまってから相談を受けるので、現状どういったステータスなのかをヒアリングし、なるべくリスクを回避するための最善の策は何なのかを提案していきます。

何が難しいのか

法律用語はそもそも難解なことも多いので契約書を読むだけでも一苦労です。しかし、それは1年も法務をやっていれば慣れるはずです。むしろ、何年経っても難しいと思うところは別にあります。

1.検討の前提になる事実を集めることが難しい。

法務部がリスクを検討する際には、現場で何が起こっているのかという一次情報を正しく把握することが重要となります。

一次情報なんて現場にヒアリングすれば分かるのでは?と思う人もいるかもしれませんね。そうでもありません、現場担当は現場で起こっていることすべてを把握しているわけではないので聞く相手によっては情報が網羅されていない場合もありますし、法務のヒアリングしたいポイントが正しく伝わらないと情報をうまく提供してもらえません。

画像1

お互いの真意がつかめないまま、やりとりをしてしまった結果、後から問題が発覚し、「あの時ヒアリングしたときに言ってよ~」と言っても後の祭り。こういうケースは法務部内では法務部員のヒアリング不足として認識されます。

これを防ぐには、現場の運用をある程度イメージし、認識齟齬が起きないようなヒアリングの仕方をすることが必要です。ここが上手く、スピーディにできるかがデキる法務部員の要素でもあります。

2.法律を正しく解釈することが難しい。

法務部は法律に物事を判断しますが、ビジネスで起きるすべてのことが、法律で決まっているわけではありません。

例えば、景表法でいう不当な表示においては以下のように法律には定められています。

(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの…(以下略)

ここで、「著しく」がどの程度というのは、個々のケースによって判断が異なります。省庁が出しているガイドラインや、判例も参考にしながらになりますが、そのままのケースが当てはまることはほぼありません。

結局は自社のビジネスの顧客や、性質なども併せて考えて、顧客にとってどの程度誤認を与えうるのかを想像して、判断することが必要です。

ここの解釈を正しく、つまり「法令に違反しないことを前提として、企業のビジネス活動に支障が出るほど保守的にならないよう」にするためには、法令の知識とビジネス感覚のバランスが必要です。ここのバランスが優れている人は現場からの信頼も厚く、仕事もスムーズに進むでしょう。

画像2


3.現場とのコミュニケーションが難しい。

検討するのが難しくても、常に現場に対して「リスク無いよ!進めてOKです!」と言えるのであれば、全く苦になりません。

しかし、そうもいきません。ずっと長年やってきたビジネスや企画、偉い人肝いりの案件、前任担当者がいい加減に検討していた施策など、NOと言いづらい場面でもNOと言わなければいけないのが法務部の仕事の1つです。

どれだけ、昔からやっている企画でも、どれだけ偉い人がブチ切れようと、前任担当者がどれだけOKを出していようと、今この瞬間、法令に違反する可能性があるのであれば法務部はNOと言う必要があります。

画像3

こういった案件では、もちろん現場からは「そこを何とか…」「え、マジで言ってます?」挙句の果てには「法務のせいで企画止まってるんスよ!?」などボロカスに言われます。

すごく孤独です。でも、法務部は現場と対立したいわけでも、ビジネスを止めたいわけでもなく、自社がずっと健全にビジネスができるように自分の仕事をしているだけです。

その意味では現場と同じ目標を共有しています、そのことを現場に分かってもらったうえで、今後どのように対策するかという前向きな話に変えられるかが法務部の腕の見せ所。ここをうまく説明して現場と一枚岩になることは法務の仕事の痺れる瞬間でもありつつ、難しいことです。

****

今回は、法務の仕事内容と私が思う法務の仕事の難しさについて紹介しました。「難しさ」と表現しましたが、仕事の難しさは醍醐味と裏腹です。上記のような難しさを、「痺れるぜ!!」「難しそうだけど面白そうかも」と思える人はきっと法務の仕事は楽しいです。

他の仕事と同じく、仕事の難しさや醍醐味は簡単に語れるものではないですが、今後も法務という仕事を知ってもらえるような記事を、ぼちぼちと書いていこうと思います。


今後も継続的に記事を書き続けていく予定です。 100円くらい投げてやっても良いかなという方がいらっしゃったら、とっても嬉しいです。ぜひよろしくお願いします!