野村美月『下読み男子と投稿女子』を読んで

 書店で『下読み男子と投稿女子 ~優しい空が見た、内気な海の話。』(ファミ通文庫) を見つけた。著者は「文学少女」シリーズの野村美月先生。「文学少女」シリーズは新刊が出るたびに買い続けて全部読んだ。そのくらい好きだった。
 野村美月さんの小説は柔らかくやさしい文体で、読んでいて心地よい。会話のテンポが自分の好みに合っている。キャラクターのクセが強すぎないので、読んでいて自然に受け入れられる。

 この話は高校生の男の子・風谷青がライトノベルの新人賞の下読みをしていて、応募作の中の同級生の女の子・氷ノ宮氷雪の作品を見つけ、青が二人が氷雪にラノベの書き方を指南する話。
 ファミ通文庫から出ているが、あまりラノベという感じのしない成長物語であり、青春小説だと思った。
 この本は小説としても面白いが、ライトノベルの下読みの仕事の描写を通じて小説の書き方の指南をしてくれているハウツー本としても興味深かった。どういう基準で一次審査を落とされるのか、どう書いたら通りやすいのかなど、小説を書く人にはいいヒントになりそうなことが書かれている。ラノベを書く人にはぜひ読んでもらいたい。
 楽しみながら話を読み進めていると、終盤でかつて文学少女シリーズで見たおなじみの展開が出てきた。あっ、そういえばこの人は文学少女の作家だったっけ、といった感じで思い出すことになった。野村美月ファンには楽しい瞬間だ。
 この本を読み終わった後、しばらく幸せな気持ちになれた。「号泣必至!」みたいな気持ち悪いコピーがつく本じゃなく、少々地味だがいいお話だった。著者のラノベ愛に触れられたのも良かった。

 この note で2本目の感想文になるが、全部ラノベだ(笑)。普段はそんなにラノベを読んでいるわけではないんだけど。
 ラノベの自由さは魅力的で、最近ではあらゆるジャンルをラノベが影響を及ぼしているような気がする。文芸でも非現実的な設定をよく見かける。これがいいか悪いかはわからないが、私はちょっと苦手かな。そういうのはラノベや漫画だけでいいかなって思う。

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