稚拙なコメ騒動がなぜ起きたか【八百屋から見た“食”no.58】
8月後半のある週末。
普段当店でみかけない(少なくとも店主の私は見たことない)目の血走った人が何人か来て「オタク、お米ある?」と2㎏や5㎏の米を買っていきました。
至近のスーパーのコメ売場はガラガラ。一切なかったようです。
テレビニュースが東京/大阪の出来事(≒日本全体の出来事と勘違い)として全国に拡散します。国会に話題がのぼるほど。
肝心なコト忘れてません?
毎年8月9月は、全国的にコメの在庫が少ないorありません。
なぜかって?
日本の稲作は、9月10月に収穫し1年分のコメを貯蔵するから。
東京23区をはじめ、都市生活者=田んぼや稲刈りを見かけない生活が増えたことで農業/食品製造にリアリティを感じなくなったのも今回の騒ぎの一因でしょう。
毎年8月は(新米準備として)国内在庫を一掃する期間。
新米まであと1カ月。九州沖縄ではすでに新米収穫も始まっています。
せいぜい2-3週間の在庫を持っていれば十分です。唯一慌てる状況があったとしたら、9月をまたいでお弁当用の白米ストックが心配になった点。
毎食コメでなくとも、皆さん生活しているじゃないですか。
朝食はパンという方も多いです。パスタ・うどんはストックの定番。
暑い日はざるそば&素麺も美味しいですよ。
こんなしょーもない騒動が起きた(&ニュースになった)理由として
①農業に関心のない&田畑を見かけない暮らしが定着した
②食材は年中豊富にあり、売場に行けばいつでも買えるという思い込み
③画面情報(TV&動画&配信)を頼りにする人が煽られて動いた
④メディアの稚拙化(高い・無い・困った・キケンという食の発信ばかり)
ひとえにこの4点に起因することが多く、今後も続くのでしょう。
目の前の食材、目の前の風景を大切に。
できれば作り手/売り手との関係も大切に。
知りたい内容は作り手本人から聞くか、一次統計から。
TV放映や動画配信は、すべて正確に事実を映すとは限りません。
「コメ売場が(一時的に)品切れを起こした」というニュース画像を見て不安になるよりも、見た内容が合っているのかを考え、判断する習慣を身につけてください。
新米の時期を知らない/想像or判断できない人が慌てただけです。
1週間弱、品切れ見込みだっただけ。コメの年度末で在庫切れしやすかっただけです。騒ぎでもなんでもないのに“騒動”と名前をつける。
同業スーパー宛に“コメ売場の空棚を撮影させてほしい“という依頼があったが売場担当者(知り合い)は断ったとのこと。ガラガラ棚を放映して視聴者が得することはひとつもないこと、売場/現場の我々はわかっています。
今後、作目関係なく農業従事者は減り続けます。夏のコメ在庫が年々タイトになることは間違いありません。コメ生産者から定期的に取り寄せるきっかけになるといいですね。毎年8月9月に同じ騒ぎにならないよう、今夏の出来事を思い出してください。
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