オーガニック給食推進。農業や給食製造現場を1回でも体験してから言いましょうよ。【八百屋から見た“食”no.30】
こんな記事が上がっていました。
議員さん、暇なんですかね。
それとも画面の見過ぎなのか煽られ過ぎなのか。
国は「国民が飢えないこと」が食料安全保障の第一義のはず。
農薬や肥料は、植物が健康に育つための処置。どんな天候/環境下でも作れるよう、栽培品目ごとに人間の処方箋以上に細かく細かく細かく厳格にルール設定されているのが現在の栽培環境における農薬使用です。
給食(食事)で回避すべき“要素”はアレルゲンと食中毒です。
アレルゲン、農法うんぬんでは回避できない点は強く認識してください。個人の体質の問題であり、無農薬でりんごを作ろうがりんごアレルギーの人は食べたらアナフィラキシー症状が出ます。
食品衛生(食中毒回避)も原材料保管や調理工程の話。無農薬でも農薬使用でも野菜に土埃つけば不衛生。生食は食中毒リスクを高めます。
上記を踏まえたうえでオーガニック給食推進を語らない限り、為政者や団体が(農薬使用を標的にして)俺ら仕事したよなイイコトしてるんだから推していいよな支持されるよな感にしか見えません。
食事する当人が、アレルゲン等の食事制限で回避するのはもちろん必要です。個人的嗜好・宗教的制約・食事に関するポリシーも、尊重されていいでしょう。でもあくまで個別の話。小中高大の生徒教員全員・親全員・もっと広く言えば国民全員(国全体)が本当にオーガニック原料の給食を志向しているのかといえば、そんなことないでしょう。
給食で必要な点は衛生的に作り、食中毒を起こさず、誤飲等の危険性を減らし、かつ、限られた予算内で(食べるお子さんの成長が望める)栄養価や量や満足を満たし、季節感(旬)や郷土色(名産や味付け)を添えつつ、お子さんが毎日楽しく美味しく食べて給食の時間を過ごすことでしょう。
毎度毎度毎年毎年その場その場。
原料に関して栽培時の農薬使用不使用が話題に出るのはなぜなのでしょう?農薬は無尽蔵に使えて残るからキケンと一瞬でも思った人・誰かから聞いたという人は、すでに“現実を見てない人”です。
そもそも、厳しい厳しい毎年のように更新される現行の農薬の使用規約(制限)を、農場を見て農協や農家と話して使い方や効力を知って体感把握している方はどれほどいるのでしょう?病気やウイルスが蔓延する時、収穫までまだ一定期間がある生育中に処置を施すのが防除。そのうちの1アイテムが農薬です。生育で出ていく土の栄養不足を補うのが基肥や追肥。堆肥も化成も差異はありません。食事で満たすか適正なサプリメントを施すか。
しょっぱなから農薬や肥料のゼロ使用を決め込んで施策を進めれば、行きつくのは原料の不足です。
【不作時のメニュー選択が狭まる】【旬の材料でしか作れない給食】【当日原材料変更で献立が作れない】【豊作不作激しい≒仕入価格乱高下が激しい】【年々土が痩せて収穫が減る・正品が減る】【規格が揃わず、皮むきや調理(≒衛生面での工程)に時間がかかる】【最悪、材料不足で給食が出せない】日々。
さらに、給食の製造現場で「毎日定時にきっちりした大きさ重さ量の食材が入荷しない」ことは迷惑でしかありません。
不揃い品でもいいから給食で使ってとか、食品衛生や製造現場の効率を知らない外野の声は、市でも区でも国でも政治家は無視していいです。もしくは(認可保育所でも小学校でも地域給食センターでも高校の学食でもいいので)給食製造現場を見て、現場の声を聞いてから判断しても遅くはないでしょう。どれだけ衛生管理・原料管理に配慮して、毎日限られた予算と時間と人員と設備で、大量に安全(衛生的)に美味しく作るための作業工程を毎日考えて作っているか。郷土食や旬を取り込んでいるか。栄養価を満たすレシピを考えているか。
・1食の予算拡充
・アレルゲン対応
・給食室/配膳室にエアコンを入れる
・待遇改善
・器材洗浄設備の更新 etc.
オーガニック食材導入のはるか前に解決しなければならないことがたくさんたくさんたくさんあります。
オーガニックいいなできたらいいな的な“大人の自己満足”で、給食製造現場を困らせること、給食の本来の目的を阻害するようなことはあってはならないでしょう。
それでもオーガニック給食を、というのであれば
毎日お子さんのお弁当をオーガニック食材限定で作る生活を想像してみてください。実際に1週間作るのもいいでしょう。あとは何も言いません。
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以前の投稿も参考にどうぞ。