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とある歪な人間の自伝

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#家庭崩壊

とある歪な人間の自伝 その10

とある歪な人間の自伝 その10

12 勘付かれたから

それは高校卒業を控えた半年前のこと。
わたしは次のステップに向けて既に手はずを整えていた。

目標金額に到達し、免許も手に入れた。だから気が緩んだのだろう。
学校の勧めで大卒資格もとれる専門学校の紹介を受ける。そして奨学金制度で満額借りる段取りもリアルタイムで知られることが出来ないように上手いこと用意できた。
まさに順風満帆。だからこそ、わたしは足元が見えなくなってしまう。

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とある歪な人間の自伝 その9

とある歪な人間の自伝 その9

11 一人で生きていくと決めた

何はなくとも月日は流れる。
環境に劇的な変化もないし、人間関係も変化なし。
担任は明らかに嫌そうな顔をしてわたしの進路希望を聞いてきた。

厄介者という認識なんだろうな。
わたしは担任に同情しつつも手早く進路希望の紙を書き進めたことを覚えている。

高校受験に差し掛かるある日のことだ。
何を思ったのか母親が全寮制の私立の高校へ行くようにと勧めてきた。

…本当に、

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とある歪な人間の自伝 その8

とある歪な人間の自伝 その8

10 憐れむという意味での同情

同じ情と書いて「同情」だという。子供のころその言葉に些かの疑問を感じていた。
そもそも日本語にはそういった現代解釈とはだいぶ離れた言葉がある。例えば「親切」なんかもそうだろう。
親を切る。それがどうして親切になるのか。疑問に思った方も多いのではないだろうか?

ここは別に国語の時間ではないので話を進めるが、同情の話。
わたしに対して同情をする人間はそれなりに多かっ

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とある歪な人間の自伝 その7

とある歪な人間の自伝 その7

09 噛みあわない言動

うつ病の看病をすると、うつ病になる。
メンヘラと付き合うと、メンタルが壊れる。
これらは通説だが真理だと思う。

わたしは壊れている。とうにそのメーターは振り切れていて2周3周と廻り回っているといっていいだろう。
それでも。こんなわたしだがだ。人並みに『救われたい』と願った。これは気の迷い、それとも未熟さか。もちろん願ったところで叶わないのはいうまでもない。
そう、叶うわ

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とある歪な人間の自伝 その6

とある歪な人間の自伝 その6

08 いつもと変わらない生活を演じるということ

馬鹿みたいに労働に喜びを見出している一方で、わたしは無事小学校を卒業し、中学生となった。
中学校ではとりわけ前の世代(卒業生)があまりにもわんぱくでどうしようもなかったこともあり、当時の学校生活は噂以上に随分と穏やかに感じられる。というのが第一印象だった。

しかしどの時代にも不良と呼ばれる人間は存在する。
悪い先輩が単車を乗り回して授業を中断させ

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とある歪な人間の自伝 その5

とある歪な人間の自伝 その5

07 生活費

家のローンにギャンブルで膨らんだ多額の借金、妹の治療費、補聴器、そして生活費。
生きてい行くうえでお金は必要だ。お金は降って湧いてくるものではないのだから、誰かが用意しなくてはいけない。それはまず最初に大黒柱として立っている父親の責務であり、不足分は母親のやりくりや、追加で金策をする必要がある。

しかし、それにだって限界はある。いいや、限界なんぞとうに超えていたわけだから今更なの

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とある歪な人間の自伝 その4

とある歪な人間の自伝 その4

06 ターニングポイント01

新しい場所に引っ越したとはいえ都会的な一等地に引っ越したわけではなく、またしても田舎である。今度は山の中ではないのが唯一の救いだった。
しかしS県内。実を言えば前住所から僅か80km程度しか離れていない。だから本当に厄払いのつもりで場所を変えたのだろう。

新しい学校は家からすぐ近く。目と鼻の先だ。
以前のこともあってわたしは学校に対して特別な感傷は抱けない。なんと

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