【短歌】「生き様、逝き様」その弍
「逝き様」
わずらわし
しがらみ絶ちて
ひとり逝く
孤独ではなく
われのいきざま
いのち果て
それを孤独と
他人(ひと)はいう
われのこころを
他人(ひと)は解さず
いのち尽き
おなじ墓にて
眠らずも
生(せい)おわるまで
愛しつづける
風のなか
われが舵とる
人生は
航海しても
後悔はなし
骨となり
この世にわかれ
旅立てど
また会う日まで
しばしお別れ
愛したる
記録残さず
消えて逝く
すべてを消して
われ空(くう)になる
あとがき
生涯、独身で看護師として生きた伯母をイメージしました。茶道、華道を嗜み、着物を愛した人でした。末の妹である母の看護学校進学を支援してくれた人です。
子どもの頃、看護師寮に住んでいた伯母を訪ね、泊まりにいきました。日曜日の朝は犬養 孝の番組を一緒に見ていました。よく万葉集を歌う独特の節回しの犬養節(今回調べて初めて知りました)を真似て遊んでいました。姪の私をとても可愛がってくれました。
晩年伯母は、難病のALSを発病しました。在宅で介護するために、新しい家を準備し体制を整え、母も退職の意を伝えました。しかし病状の進行は早く、退院許可からわずか一晩だけ新しい家で過ごし、朝方急変して、救急搬送になり、そのまま息を引き取りましたが、我々家族にとっては、無念でしかありませんでした。
その時に延命や不必要な医療行為はしないと、事前に主治医、看護師長と話し合い、自らの死の幕引きを打ち合わせしていたと聞きました。勤務先から伯母の入院する病院を毎日お見舞いに通っていた母にも、知らされることはありませんでした。
生涯独身の伯母でしたが、昔お付き合いしていたと思しき方から、御供養が届きました。女冥利に尽きると羨ましく思いました。伯母の人生を通して、女の生き様を見たと思います。最後の最後まで、粋でおしゃれで、強くカッコいい女性でした。私の愛すべき伯母です。私は娘に伯母の名の1字を頂き名付けました。