今月の短歌 23年8月16日~8月31日
懐かしき旧居留地を彷徨へばラフな色味で憶に消えゆく
美しい夢への諦め今度こそが無い明日に幾久しく、舞
楽しんで食事ができて歩くのが綺麗な人に惹かれるのです
よれよれのディテール残暑のよそほひに桃と朝顔雨天を待ちて
ソリストがオゾンを纏い天仰ぐ長く見えぬ闇、泪を笑ひて
手を組めばほんのり温い指先へ吾が生きている事の証明
白黒の世界はどれも淡すぎた僅かに見えた紺のもどかしさ
薬では症状視界制御不能 数億の電圧(ボルト)浴びる世界
早朝に涼風運ぶメイドインジャーマニーと砂粒の余韻
青といふ青が混ざった水蹴ってカンツォーネにも魂宿る
凪になる心は宵で嘘付かず過ぎたる汗に意味を残して
因縁の相手が決勝で万里一空白球に込めて
静けさは夜の帳に更けていく 明日も孤独 記憶は見ている
よく馴染むサンダルでいる日増えたのは晩夏見ゆ時期留めたいから
イップスって知ってるかい?右側にあったボールが消えているんだ
バチバチと音するフロア 一瞬の閃きが魅せる、暁が跳ぶ
何回も押したところで壊れない点滅式の信号機みたい
弱弱し蝉の羽音に秋を見て 暫く履かずのスニーカー磨く
親友、と呼ぶ親友の本性よその声聞く度忌みし欲求
涼しげな微風に触れる夜明け前 鳴く鈴虫は吾の道標
歴史的勝利は只の一勝でここからが結果出すべきフェーズ
不可解な怠惰と共に抜けていく 四泳法や因数定理
夜更かしや深い眠りに嫉妬して鬼に変わりて水ばかり飲む
二手先を早めに速く蹴れば相手の裏で手薬煉引き待つ友
光射すベージュの窓の少し先モザイクだらけで顔すら見えず
美しさを兼ね備えた飛び道具 放物線はパリへ届いて