見た目を気にしなくなったら終わりだと思う。という話。

野球のことだけ書くつもりじゃなかったのに野球のことだらけになってしまっている!私はそこまで野球のことなんてべ、別にたいして好きじゃないのに!今回は思いっきり別ジャンルの話をしようと思う。小学生のころから基本ミステリーしか読まない私が内館牧子の本をはじめて手に取って思った話。

内館牧子『すぐ死ぬんだから』を読んで

三月に根室の祖母の家に遊びに行った際に祖母と買い物しに出かけたら、

「今読みたい本があるからツタヤ(根室には実は本屋はなくツタヤの本コーナーでしか現状本は買えない)に行ってほしい」

と、言い出したので住んでた時にはよくビデオ(死語)を借りていたツタヤに何十年ぶりに訪れた。

店先に入るや否や、

「あ、これこれ」

と、祖母が手にした本が内館牧子の新作の小説『すぐ死ぬんだから』だった。

ちょっと祖母の歳が歳なだけに

「え!!や、やめなよ!」

と、思わず父も私も驚愕してしまったのだが、本の帯に書いてある文言を読むとそのタイトルとは裏腹に、祖母と同年代であろう読者から「元気をもらった」「私も主人公みたいなかわいいおばあちゃんになりたいと思いました」というポジティブな感想が多かったので安心した。祖母は私の知る限り読書がとてもすごく好きなわけではないのでそんな祖母が欲しいと思った本はどんな話なんだろうと思い、なんとなく調べてみた。

主人公のハナは都内に年上の旦那の岩造と暮らしている78歳のおばあちゃん。10歳も下に見られるほどファッションにも身だしなみにも、ライフスタイルにも気を使っている素敵なマダム。ある日、岩造が倒れてしまい、亡くなってしまう。未亡人になったハナに起こるある事件をきっかけにどんなに気を付けていても忍び寄る自分の老いと、どう向き合うか、という話。

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気になって私も読んでみた。すぐに本のタイトルが「すぐ死ぬんだから」というものか理由が分かった。

主人公のハナの周りの年寄りは自分を着飾ることも、身だしなみに気を使うことも忘れてしまっていて、周りと同じ格好をして、自分よりも孫自慢や病気自慢をする。何かと「どうせすぐ死ぬんだから」と言い訳をする。対してハナは「見た目ファースト」。死んだ後のことなんか考えていると本当にその通りになってしまう。「すぐ死ぬんだから、今を楽しまなくなっちゃ」と言って、諦めない。いつまでも周りの目を気にして行動している。

そんなハナの姿が、内館牧子先生が、終活終活、と死んだ後のことばかり考えているシニア世代に活を入れるものだったんじゃないかなと思った。と、同時に祖母とハナがすごく重なって見えた。

美を追求し続ける姿はまさにリアル・ハナ

実は祖母との共通点が多い。

まず主人公のハナと年齢が近い。二年前に祖父が他界しているのも全く同じ。食べ物や自分に身に着けるもの、暮らしに使うものへのこだわりが強くて根室にしまむらが数年前に出来て、みんなしまむらで服を買うようになった中、一貫として街で唯一のブティックで質のよい洋服を買っている。

私が使っているブラシを気に入り、使ってみたかと思ったら一万円渡され、同じの買ってきて!と即決したり、緑内障なのを逆手に取り、医師に相談し、まつ毛をばさばさにしようと(緑内障の薬にはまつ毛が伸びてしまう副作用ながある)目論んだり、遠赤外線を発する枕を使っていたり、美容や健康への意識も高い。美を追求し続ける姿はまさにリアル・ハナばあさんだ。

みかん一つとってもどこからか情報を入手してネットは使えないけど必殺技・電話攻撃を駆使して遠路はるばる愛媛からみかんを直輸入するほどのこだわりには私も脱帽する。とにかくひいき目無しに、日本の最東端に住んでるばあさんにしてはかなりイケてるばあさんだと思う。

人は見た目が100パーセントだよね。

そんなうちの祖母や、『すぐ死ぬんだから』を読んで「見た目ファースト」を目指すシニア世代とは真逆に、Twitterでは「化粧しない自由」「女だけ不平等だ」「着飾らなくてもいいのなら着飾らない方が良い」といった発言が見られるのが実に滑稽だ。仕事や家事に育児に追われている若い世代だからこそ見た目に気を使う時間なんてない、と言いたいんだろう。

シニア世代に比べたら確かに忙しいのかもしれないし、肌が弱くて化粧できないのに働いてる会社で化粧することを強要され嫌になっている人も多いのだろう。でもこの本の主人公のハナやリアル・ハナなうちの祖母からしたら「愚痴書いてる暇があるなら眉を描け」って感じなんだろうなと思う。

作中、ハナは「『人は中身』とかいう人に限って中身がない」、「先がない世代は外見を偽証しなければならない」と断言している。決して若作りをしろと言っている訳ではなく、他人からどう自分が見えるのか老いに負けず、関心を持ち続けることで自分自身が形成されていく、とハナを通して内館牧子先生は言いたいんだと思う。社会が悪い、男が悪いと攻撃的なツイートしてる暇があったら少しでも自分の外見を磨いていくことが大事なのではないだろうか。肌が弱くて化粧出来ないからと言って身だしなみを整えなくても良い理由にはならない。自分のできる範囲で美しくなることを諦めないで欲しい。

#ライフスタイル #読書感想文 #内館牧子 #すぐ死ぬんだから   #エッセイ #美容

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