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トレーニーの日常 【腹筋編1】

シックスパックという言葉に形容されるような、境界のはっきりした腹筋は誰もが一度は憧れるものだ。一般に腹筋と言って連想される筋肉は、正確には腹直筋という名称であり、体幹の屈曲や姿勢の維持に貢献する筋肉である。腹部には他にも腹斜筋や腹横筋という筋肉も存在し、体幹の側屈や捻り、内臓の保護などを担っている。これらの筋肉が総合的に鍛えられると、彫刻のように彫り整えたような見た目が手に入るため、手っ取り早くいい体を欲する人が真っ先に鍛えようとする部位となっている印象である。

よく「腹筋を割りたい」という言葉を耳にするが、これには語弊がある。なぜなら、腹筋は生まれた時からすでに割れているからだ。体を前屈みにする時、腹直筋は溝を境に一段ずつ折り畳まれるようにして働く。もし段層に割れていないとすれば、折りたたむことができず、前屈できない。つまり、腹直筋には最初から溝があって、俗に言うシックスパック状態は、生まれつき備わっているものなのだ。
また、生まれつき腹直筋の形は決まっているため、実は後天的にはほとんど腹筋の形を変えることはできない(ステロイドの副作用などで変わることはあるらしいが)。変えることができるのは、厚みくらいだ。腹直筋のそれぞれのパックの厚みが増せば増すほど、その境界の溝が深くなっていき、一つ一つのパックのシルエットがより強調され美しい腹筋になる。
だから、「腹筋を割りたい」というよりは、「腹筋の溝を深くしたい」という方が正確な表現と言える。

腹直筋を鍛える目的として、ドラゴンフラッグ、ハンギングレッグレイズ、アブローラー、アブコースター、クランチなど、さまざまなトレーニングがある。腹直筋の働きは体幹の屈曲であるため、体幹部を屈曲する種目であれば概ね鍛えることができる。

どの種目にも言えることだが、注意したいのは、股関節で動作していないかということだ。腹直筋は肋骨部から骨盤の恥骨にかけて付いている筋肉であるため、股関節の動作には関与しない。例えば、クランチで体を起こすとき、脚の付け根部分を支点に動作してしまうと、体幹の屈曲ではなく股関節の屈曲運動となり、腸腰筋などが鍛えられてしまう。腹筋運動をしている時に脚がヒリヒリしてくるというのであれば、やり方が間違っていると認識してほしい。

クランチであれば、顔をへそに近づけていくイメージで行うと、腹直筋で動作しやすい。また、腹直筋の可動域はそこまで広くないので、体を最後まで起こす必要はない。よくクランチで、膝に顔がつくくらいまで上体を起こす人がいるが、最後まで起こすと腹直筋への負荷が抜けてフィニッシュで楽をしていることになり、効果が薄まってしまう。ぜひ体幹だけを屈曲することを意識して取り組んでみてほしい。

次回は腹斜筋について書いていきたいと思う。


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