罰として夢に来なさいあなたしか飲まない冷やしたまんまのビール (ハリお)
ひどい男にはいつだって罰が必要である。しかし、たいていの罰は与えてもこちらにいいことがあるわけではない。その点、この「夢に来なさい」という罰はスペシャルな名案である。主体はビールを飲まないのに、いつ立ち寄ってくれるかわからない「あなた」のために冷蔵庫に常備している。私自身はビール好きではあるが、カレのためだけに用意しているあれこれがあったから、この健気な気持ちは痛いほどよくわかる。完全に疎遠になっているなら処分もするが、思わせぶりな相手は、「今度こそ行くよ」「必ず近いうちに時間をつくるから」などと言っているのだろう。あー、もう!共感性しかない。この歌の技法として新鮮なところは、命令形の二句切れと、結句の体言止だ。「ビール」を体言止に置く事によって、ビールの存在感が強調される。結構場所を取るビール、見るたびに思い出してため息を促してしまうアイテムになっているに違いない。そして、第二句の「来なさい」の強さ。もちろん、職員室に呼ばれた時と同じで「来て」済むはずはない。夢の中であんなこともこんなこともしてもらうことになる。というような果てしない想像を膨らませてくれるのがこの歌である。
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