法律上他人であると決められて畔の外れの白彼岸花 (姿煮)

この作品に触れるとき、本当は最初に文字で見てほしい。「法」「他」「決」「畔」「彼」「花」こういった蘂のような画を持つ漢字の羅列が並び咲く白彼岸花に見えて、もうすでに寂しい。自分で思っていたことと世間の常識が違うことは悲しいが、それが法律に決められていればもう逃げ場もないだろう。主体は愛する人と法律上は夫婦でもなければ親子でもない。戸籍なんてカタチでしかないのだからとは思うが、この疎外感は経験した者でなければわかるまい。それが「畔の外れの白彼岸花」の気持ちなのである。白い彼岸花は赤い原種に黄色いショウキズイセンを交配してできたものだ。本来の交わりでは生じることはない。しかし、凄みのある美しさは山百合以上である。花言葉は、「思うのはあなたひとり」だという。愛のある美しい関係なのに「他人」でしかいられない切なさが、秋の野に満ちるようで胸が熱くなるではないか。この歌は、内縁関係とも同性愛とも婚外子とも読めるところに普遍性がある。第三句の連用中止法も発露の無さを表現しているし、結句の体言も主体の投影としてきちんと主題にかなった使われ方をしている。このような取り合わせの達人のほかの作品からも目が離せない。

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