君の目が持つ節穴へ使ってるコスメを全部ぶち込んでやる (紫央)
「女の子は泣かないぞ!さぁ、反撃の時だ!」という言葉が聞こえてきそうである。恋をする女の子はみんな努力していてとてもかわいいのだ。わからないのは男どもである。こんなに時間をかけて念入りにメイクをしてもオシャレをしても、日本男児の目の節穴度合いはいつの時代もひどいものである。シャドウもチークもハイライトも微妙に計算して乗せても全く無駄なら、いっそ全コスメをブチ込んでやるしかない。この発想がすでに天才だ。ふざけているように見えて、本人はいたって真剣だろうし、全女子の本音を代弁して宣戦布告する強さときたら、もう恋のジャンヌダルクである。きっぱりとした力強い下句に大きな拍手を送りたい。一連の歌から垣間見えるカレシ像(恋人未満かもしれないが)は、身近なところにいる優しい年下男のようだが、主体の恋心に気付いているのかいないのか、据膳も食べそうにないタイプだ。生物学的に男性的欲望はあるのかとも疑う。最近の作品「きみだって獣 骨つき肉に向け開けた口から覗くあかいろ」と合わせて読むと、主体のじれったさが垣間見えておもしろい。また、同じような心理を表現するのに、これだけ違った作風でバリエーションを出せる手腕も天晴れと思う。
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