葉桜は冬まで緑をつれてゆく乳房の熱がゆるり冷めても (有利)
難解な歌なのである。何度も何度も繰り返し読んだが、理解しようとすればどんどんわからなくなる。歌はわかればいいわけではない。絵画と同じで、詩的でありさえすればよい。この歌はひたすら詩的でかつ艶っぽい。女性目線にも男性目線にもとれる。花のシーズンが終わっても常緑を保つ葉桜のように、更年期が過ぎてもゆるやかな性愛が営まれるような、絆の深い男女の関係が描かれているのではないだろうかと思った。ただ、作者ご本人のコメントによると「告白短歌」であるということなので、そうであれば、相手に捧げる覚悟の表明という読み方に変わってくる。「葉桜が冬まで緑であるように、僕は人生の冬とも言える老年期になってもあなたを伴って生きてゆきたい。性的な欲望など互いになくなり燃え上がることはなくなったとしても、それでも一緒に若々しく生きてゆきたい。」という宣言だろうか。そんな歌をもらえる恋人は幸せである。性的な魅力や外見の美しさが消えても、全人格的に愛すると言ってもらえているわけだから。今の私には、そこまで達観した愛はわからないけれど、自然の摂理に抗わない美しい情愛の変化を、きれいな言葉にのせて描く、オトナの一首だと思った。