『人間の本性』
人には理性の血と動物の血が流れている、という話から始まります。生物の歴史の中で人間だけが理性を獲得してからの時間は、それ以前の動物として生きていた時間に比べれば一瞬と言えるほど短く、それゆえ今も私たちを無意識に支配する動物の血を制御しながら生きることが大切、という話です。ストレスから自由になりたい、他人よりお金持ちになりたい、名誉や権力を手にしたい、自分をより良く見せたい、自分に不都合なものを見ないふりをしたり遠ざけたりしながら生きていきたい。そういう「誰にでもある綺麗事ではない感情」の存在を認めながら、それに身を任せることなく謙虚に心を磨き続けることを提唱する一冊です。
著者の丹羽氏の名前は、丁度僕自身が中国ビジネスに携わっていた当時、尖閣諸島を巡る日中の政治的緊張が極度に高まった時期に、異色の民間出身の中国大使として当時のニュースに頻出していたことで印象に残っていました。きっと、ビジネスマンの交渉力と人間としての徳の高さが認められた人物なんだろうなと想像していましたが、この本を通じてその人柄を垣間見ることができました。
全体に、今日的な事例を用いて平易な文体で書かれていて、夏休みにリラックスしながら読んで心の洗濯をするのに良い良著でした。