何のために数学を学ぶのか?という素朴な疑問

 30歳手前になり、改めて数学を0から学び直したいと思い、考えたことや苦労の足跡をnoteに投稿していこうと思う。

 数学に一番まともに触れたのは大学受験のとき。受験では5教科7科目あったが、数ある教科の中で、数学はどちらかといえば好きな科目だった。国語や社会は苦手中の苦手で、何のためにやっているのかわからず面白くない。物理や化学はそれなりに点数が取れて面白みがある。そんな典型的な理系である。正直、理系/文系という分け方はステレオタイプが染み込んでいてあまり好きではない。とはいえ、数学は受験科目の中では好きな部類に入り、それなりに点数が取れる科目だった。しかし当時、数学を”理解していたか”といわれると、今から思えば、全くといっていいほど、理解できていなかったと思う。

 受験科目という枠組みで数学を眺めたとき、「解法暗記」という方法がよく推奨される。チャート式やその他の参考書・問題集で公式や解法を覚えて、同じような問題が出てきたら同じように解く。分からない問題では、適当に公式を当てはめたり、式変形たりして、手を動すうちに何となく答えに辿り着く。というような、暗記と根性だけで乗り切るのである。自分もこの方法で勉強していたが、前に経験したことがある問題が出れば解けるものの、難しい問題や二次試験の記述問題では、赤子の手をひねられたかのように全く手が出ないことも多くあった。

 もちろん、それだけでも相当な時間と忍耐を必要とするので、決して易しいことではない。問題なのは、数学とはどんなものなのか、一体何をやらされているのかが全く分かっていなかったことだ。これでは、よく話題にされる「何のために数学をやるのか」という素朴な疑問が生まれてくるのも当然だ。

 この現象を乗り越えるヒントを与えてくれ、「数学を何のために学ぶのか」という問いに、まさに答えてくれるような文章が『数学ⅠA -入門問題精講』(池田洋介)に「はじめに」として書かれていた。数学を学んでいくにあたって重要な姿勢で、常に意識したいことなので繰り返し読み直したい。

 …数学にはたくさんの定理や公式が登場します。その一つ一つを暗記すれば、それを適用することで、ある程度の問題は解けるようになります。しかし、それをもって「数学を学んだ」というのは、何だか違う気がしますね。…

 「どうやったら解の公式が導けるのか」
 「どうして90°より大きい角の三角比を考える必要があるのか」
 「組合せの公式にはなぜ割り算が出てくるのか」

 そんなことを知らなくても問題は解けるんだからいいじゃないか、なんて思わずに、むしろそういう疑問を掘り下げていきましょう。その過程で見えてくるのは、公式や定理になる前のとても素朴な「考え方」であり、その「考え方」にこそ、実は数学という学問の味わいがぎゅっと詰まっているのだと僕は思っています。

 …何よりその過程でみにつけた「考え方」は、この先どんな難しい問題に取り組むときにも確実にみなさんの助けになるはずです。

  魚を与えれば、1日生きていける。
  釣りの仕方を教えれば、一生生きていける。

 …みなさんに教えたいのはまさに「釣りの仕方」、1問が解ける「公式」ではなく、100問に適用できる「考え方」なのです。

『数学ⅠA -入門問題精講』池田洋介

 数学の学習において、公式や定理を覚えることよりも、それを導くための「考え方」に重きをおく。それが数学の醍醐味なのだと。

 一つのことを覚えて一つの問題しか解けないのだとしたら、膨大な公式や定理をひたすら暗記するという行為が、とても愚かなことだと思えてくる。もちろん何かを学ぶのに、一聞いて一を知ることは大切なことだが、あえて数学を学ぶという意味ではもったいない気がする。

 数学を学ぶ目的は、ただ数学の問題が解けるようになることだけに限らない。まず、数学は幅広い領域で広く応用され浸透し、自然科学や技術に欠かせないものとして、世界を成り立たせている。これだけでも充分学ぶ意義はあるが、今回の焦点は別のところにある。

 数学の意味深さの一つに、「一般性がある」ことだとよくいわれる。数学の学習が進むにつれて、具体的に分かる内容から段々と抽象的な内容になっていく。ふつう抽象的になればなるほど対象を捉えることが難しくなるが、逆に、一般性は増していき、広い範囲の問題に適用できようになるのだ。さらに、一般性が増していくにつれて並行して、数学に対する解像度も上がり、これまで曖昧だった部分がより鮮明に理解できていくようにも思われる。

 日々数学を学び、「考え方」を身につけていった先で獲得された「一般性」は、数学に対してのみ深まっていくのではない。数学という分野をはみ出して、ものごとを一般的に考える力を養ってくれる。人生で遭遇する様々な問題に対峙したとき、きっと役に立つ能力になるに違いない。数学を学んでいった先に1を知って100を知るというような世界が拡がっているとしたら、どんなに素晴らしいことだろうか。

 焦りは禁物である。すぐに点数を稼ごうとすると、とりあえず定理・公式を暗記して、多くの問題を解きたくなる衝動に流されがちだ。数学を学ぶということは、一つのテーマにじっくり向き合い、前提から結論が導びかれる思考のプロセスをしっかりと追うことである。これを常に意識して、忘れないように肝に銘じておこう。

 前に数学者の大学教授と縁あって話をさせてもらった時のことをよく覚えている。「それくらいの数学なら一度わかってしまえば何も難しくないよ。それまで、ちょっと辛抱が必要なだけ。ただ、先は長いけどね。」富士山の山頂は10合目であるが、5合目まででもゆっくりと着実に登ってくれば、十分に広大な景色が味わえるのである。

 とりあえず、しばらく時間が経って、数学の内容がほとんど頭から抜けてしまっている自分にとっては、上の本をじっくり読み進めていきながら数検2級、準1級と順番に目指していくのが、自信をつけるためのリハビリとしては丁度良いだろう。

 学び方やアドバイス、おすすめの本など、教えてもらえるとありがたいです!noteを使うのが初めてなので、その辺りのことも!ぜひ一緒に学んでいただける方も募集中です!


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