損害保険会社におけるカンパニー制と配属リスク
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東京海上においては、カンパニー制が採用されていました。
研修期間中の新入社員は、「どこのカンパニーに配属されるか」に神経を尖らせる日々を送ることになります。
なぜなら、どこのカンパニーに配属されるかで、会社人生が概ね決まってしまう訳ですから(配属リスク)、このガチャは何としても勝たなければなりません。
このガチャを数年後にひっくり返すのは、本当に大変です。私は、このガチャにおいて損害サービス部門に配属されましたが、以下具体的に説明します。
カンパニー制の区分
P:パーソナル営業、C:コマーシャル営業、D:ディーラー営業、損:損害サービス(保険金支払の査定)、サービス部:いわゆる本社部門(経営企画、財務、ITとか)
これらを称して、PCD損&サービス部と言ったりします。PCD損がいわゆる「事業部」で、サービス部が「コーポレート部門」といった感じです。
P:パーソナル営業
保険だけを扱っている専業代理店さん(プロ代理店とも言う)とか、自動車修理会社や不動産会社が保険もやっている兼業代理店さんとかに営業をします。収保規模が小さい代理店さんも多く、一人で200社くらい抱えたりするみたいで大変そうでしたが、新入社員でも裁量を持たせやすいので、その点はやりがいがあったと言う人もいます。
C:コマーシャル営業
企業営業のことで、新入社員の配属希望も多い。東京では、総合営業部、本店営業部、化学営業部とかがあります。就活ホームページとかに載っているのは、ここの話が多いですね。
D:ディーラー営業
自動車ディーラーさんに対して営業をする部門。概ね各都道府県に大手の自動車販売会社(自動車ディーラー)があって、その人達に営業します。販売会社の支店の朝礼に出て、保険の新商品の説明をしたりしていたようです。あと、洗車のお手伝いとかも、コミュニケーションの一つとしてよくやるみたいですね。やっている営業担当者は「これは大事なんだ」と言いますし、学生や新入社員は「そんなことしたく無い」と言います。受け取り方次第なんでしょうけど。
「スポーツ推薦で大学行ってたよ、ベンチプレス何キロ?」的なバリバリの体育会出身者は、このカンパニーに配属されます。
損:損害サービス
私がお世話になった部門、保険金支払の査定です。多くの人員を自動車損害に割いており、このセクションにおいては、自動車損害で名を上げることが出世の必須条件になっています。
そして、総合職の仕事といえば、要するに難事案の火消しです。怒鳴られることなんて、ほぼ毎日(笑。怒り狂った事故の被害者が、いきなり支社へ突撃してくることもあります(笑笑
私の所属していたカンパニーですので、それなりに思い入れもありますが、残念ながら新入社員にも人気がありませんし、私もお勧めはしません。色々な方にお世話になりましたし、鉄のメンタルを手に入れることもできたので、私の場合は良かったのですが・・・。なぜお勧めできないか、どうやって私がこの部門からキャリアチェンジしたのか等は、長くなるので今度にしたいと思います。
サービス部:本社部門
経営企画、財務、経理、法務、商品開発、リスク管理、IT企画、、、、花形ですね。みんな行きたがります。最近では、「Spec採用」という花形部門への配属が約束された採用枠も設けており、採用倍率はとっても高いみたいですね。だって、配属ガチャが無いって大きくないですか?
Spec採用の区分と本社配属の考察
アクチュアリー・金融工学 Spec採用の配属先:商品部、リスク管理部、財務部門のどれか
資産運用 Spec採用の配属先:財務部門
IT戦略 Spec採用の配属先:IT部門
上記以外の普通の総合職採用でも、一部は最初から花形部署に行く人がいます。私が見てきた中で、そこには一定の共通点がありました。
Spec採用以外で本社に行く可能性のある人:「理系(大学問わず)、東工大(もちろん理系)、東大文系、一橋(もちろん文系)」の一部(←あくまで一部)
これらの全員が本社に行く訳ではありません、東大でも営業に行きます。東工大でも損害に行きます。ただ、Spec採用以外で本社に行く人を並べてみると、必ず上記のどれかになります。
あくまで傾向という話ですので、多少の例外はあると思いますが、ご参考にしていただければと思います。
配属リスクに対する考察
いかに本社部門を経験するかで、後の市場価値が大きく変わってきます。もちろん、終身雇用の会社で一生働くつもりなら、市場価値より社内価値を重視すべきだと思いますが、仮にパワハラ上司に当たって休職に追い込まれるとどうでしょうか。仮に不祥事に巻き込まれてしまうとどうでしょうか。「社内価値:大、市場価値:小」の人は、良い転職先も無いので詰みます。
実際、損害保険会社の人で「やりがいは無いし、もう出世も無いけど、給与が良いので辞めれない」という人は多いですよね。
働くことって、単に稼ぐだけではなくて人生の投資でもあります。上記の視点から、終身雇用の会社に全力コミットして、社内価値ばかり上げていく(というか、行動しなければ社内価値だけの人になる)ことは、人生の投資における「リスク・リターン」の観点からも注意をした方が良いと思います。
社内価値ではなくて市場価値の上がる経験をどのように積んでいくか、そのためにはどのような勉強をしていくのか、といった考えが、人生の自己防衛にも繋がるのではないでしょうか。
しかし、私は自ら「損害サービス部門」を希望し、希望どおりの配属を受けました。これは、4月下旬~の現場研修が大きく影響しているのでした。
(続く)