【読書感想】絵本「くろうまブランキー」伊東三郎再話、堀内誠一画 福音館書店
こんにちは、やむやむです。もうすぐクリスマスですね。
クリスマスにおきた小さな奇跡のものがたり、
絵本「くろうまブランキー」伊東三郎再話 堀内誠一画、福音館書店 1958年出版、をご紹介します。
堀内誠一の絵本は子供の頃にたくさん読んだのですが、この「くろうまブランキー」は未読でした。
今夏に、ひろしま美術館で開催された「堀内誠一 絵の世界」(2023/7/1~8/20、生誕90周年記念、全国巡回展 ) を見に行った際に、ミュージアムショップで買い求めました。
筋書きはシンプルで短いお話です。
あらすじ
ちいさな農場に生まれた黒い馬ブランキーは、「いじわるなしゅじん」のもとで朝から晩まで一生懸命働きました。
ブランキーは馬屋をつくってもらえなかったので、夜は星空をながめて過ごしました。
年老いて、重い荷物を引くことが出来なくなったある日、腹を立てたしゅじんはブランキーを打ちすえて路上に置き去りにします。
その日はクリスマス。晩になって、空からサンタクロースが降りてきてくれました。ブランキーは立ち上がってサンタさんのそりを引き、サンタさんを家へ連れて帰ります。
そして暖かい暖炉のそばでサンタさんと一緒にゆっくりと体を休めることができました。
感想
ハッピーエンドではあるのですが、人生の半分を過ぎた今の自分が読むと、凍てつく空気の中、冷たい道路の上にボロ切れのように放置されたブランキーの横たわる姿のほうが、目にありありと浮かびます。
優しいサンタさんや暖かいおうちも、死ぬ間際に見たまぼろしなのかな・・・と思えてしまって、涙が出てきます。
堀内誠一の絵は、ものの形は単純化されていますが.、多くの色が使われていて目に楽しく、その場の気温まで伝わってくるようです。
小さい子どもが読んだら、それほど悲しい気分にはならないと思います。
ブランキーが生まれた春の野原はうららかで、サンタさんが夜空から降りてくる場面、冬の星空を駆けるブランキーの姿は、青系の色が多く使われ凍える寒さが伝わってくるのですが、暗いだけではなく、希望を感じさせる明るい印象です。
表紙の絵には、背景に赤い色が市松模様に配置されているのが効果して、夢のようなしあわせなひと時が感じられます。
文章に難しい言葉はなく、説教臭いところもありませんが、なぜかブランキーの一生が色々と想像されて胸に沁みる作品です。