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【歌舞伎感想文】流白浪燦星(ルパン三世)を配信アーカイブで見ました

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 令和6年能登半島地震の被災者の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。一日も早く復興され、多くの方の心が穏やかになることをお祈り致します。

 本記事は、普段と変わらないいつも通りの感想文として2023/12/30-31に作成された内容です。地震発生直後のタイミングでの公開については悩みましたが、インターネットの片隅から、少しでも心が明るくなる話題をお届けするのは悪いことではないはずだと信じて公開しました。
 私なりの熟考の末の判断であることをご理解頂き、いつも通りにお読み頂ければ、私としても心が救われます。

 諸々大丈夫そうであれば、本文をどうぞ👇

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はじめに

 歌舞伎もルパンも大好きな私に嬉しい新作歌舞伎、『流白浪燦星(ルパン三世)』の発表があった時は驚きながらも嬉しかったものです。

あらすじ
 時は安土桃山時代。大泥棒・ルパン三世とその仲間の次元大介は、“卑弥呼の金印”という国宝級のお宝を狙っています。
 五右衛門も同じく卑弥呼の金印を狙っていたのでした。ルパンが惚れる峰不二子も何か事情を知る様子。さらに天下をおさめる真柴久吉も金印を探しているようで、ルパンの因縁のライバル・銭形警部もルパンと五右衛門らを追っています。一つのお宝を巡る争いの結末は…

公式サイトより引用抜粋

 こちら現地で見ることは叶わなかったのですが、生配信(のアーカイブ)で鑑賞出来ました。
 そこで、簡単ですがせっかくなので「好きポイント」を中心に感想文を残しておきたいと思います。

 以前書いた「ルパン三世」や歌舞伎関連の記事はこちらです。


※以下、アニメ「ルパン三世」及び『流白浪燦星』の内容に関するネタバレを含みます。



コミカルとハードボイルドを合わせたルパン一味像

 ルパンが舞台に登場して最初の一言、「ルパン三世、泥棒さ」の台詞回しに感動しました。(こちらの動画の冒頭で聞けます。)

 アニメのルパンの口ぶり、「ルパぁ〜ン三世」の言い方がそのまま再現されていて、かつ歌舞伎らしさを損なわないところが実に素晴らしかったです。
 次元とルパンのカラッとした雰囲気の会話、銭形(こちらもアニメの話し方にかなり寄せていてコミカルでした)とのやり取りなど、いい塩梅に笑わせてくれる場面が多く楽しめました。


 また、ルパン三世と言えば「カリオストロの城」や「ルパン三世 PART2(いわゆる赤ルパン)」の印象が強い方が多いのでは。
 そうした印象のままで見ると、『流白浪燦星』で脱獄のためにルパンが自分の身代わりを用意していた(のちに処刑される前提で)、というのはかなり衝撃だったことでしょう。

 ですが、こうした“目的のために手段を選ばないルパン一味”という姿は、原作やPART1(緑ルパン)、「峰不二子という女」や「LUPIN THE IIIRD」シリーズといったハードボイルドな作風の作品では珍しくありません。

 実際、PART1の「脱獄のチャンスは一度」では死刑囚になったルパンが、「峰不二子という女」の「大泥棒VS女怪盗」では不二子が自分の身代わりを用意して脱獄、死刑を免れています。

 また、『流白浪燦星』の脱獄シーンでルパンと五ェ門の身代わりになった囚人たちが「俺はルパンじゃない!」「五ェ門じゃない!」と騒いでいました。この台詞、「脱獄のチャンスは一度」でのルパンの狂言回しによく似ていたので、多分オマージュなんでしょうね。多分……。

 あの悲痛な脱獄劇の後、ルパンと次元が飄々と廓街に赴いていたのが、さり気ないですがしっかり“悪党”といった表現で良いなと思いました。
 私はコミカルなルパンはもちろん、ハードボイルドなルパン一味がかなり好きです。ですから、目的のために手段を選ばない側面が歌舞伎で描かれていてとても嬉しかったです。

 アニメの「脱獄のチャンスは一度」がどんなお話か気になる方は、ぜひご覧になってみてください。


お馴染みの音楽が和風アレンジで登場

 ルパン三世と言えばみなさんご存知の「ルパン三世なテーマ」が歌舞伎ならではのお囃子で聞こえてくると否応にもテンションが上がりますね。

 他にも、戦闘シーンではルパン三世作品の音楽を担当する大野雄二さん作曲の音色も聞こえ、心が躍りました。

 さらに嬉しかったのは、花魁に扮した不二子の花魁道中で演奏されていた「ラヴ・スコール」。笑也さん演じる不二子の堂々たる花魁道中、そして弦楽器(琴?)を中心に奏でられるお馴染みのアンニュイで艶っぽさのあるメロディ……。あまりの美しさに、私もルパンよろしくうっとり。アーカイブなので巻き戻して何度も見ました。
 もし現地で見ていたら、美しさに感極まって泣いていたかもしれません。


アニメ・原作要素を思わせる演出たくさん

 先述の脱獄の場面のほかにも、ルパンファンを楽しませてくれる演出が随所に見られました。詳しい解説は私よりもお詳しい方にお願いするとして、印象深かったところを書き留めておきます。

・ルパンと敵対する五ェ門

 アニメでの五ェ門は、アニメ初登場の回「十三代目五ェ門登場」ではルパンの敵(そして不二子と恋人)でした。

 『流白浪燦星』の五ェ門も、最初はルパンと敵対しており更に物語のキーパーソンと恋仲という設定。アニメの五ェ門はもちろん不二子に利用されていたのですが、歌舞伎の中では最後まで女性と愛を貫いていましたね。

・しっかり描かれたルパンマーク

 ルパンと言えば、盗みの前に予告状を出すのが特徴的。そこに警察やお宝の持ち主を挑発するかのように描かれているルパンマークが、歌舞伎の装置の中にちゃんと残されていて嬉しくなりました。

舞台中央の柱にご注目。
マイナビニュースより

・幕間にまさかのマモー登場

 マモーとは、ルパン三世初の劇場版作品「ルパン三世 ルパンVS複製人間」に登場するキャラクター。見た目のインパクト、存在の不気味さも相まって一度見たら忘れられない特徴的な悪役です。(どの作品かはあえて申し上げませんが、スピンオフ作品の最後に意味ありげな登場を果たした際もファンをざわつかせました。)

 そんなミステリアスなキャラクターが、まさか幕間に登場して、「マモちゃんとお呼び下さい」なんて親しみやすく話しかけてくるなんて……! びっくりして思わず声が出てしまいました。 

 彼の登場は、おそらくルパンファンへのサービスでしょう。実際、マモーが幕間で話していたのは一幕の最後にあった“だんまり”の場面の説明。歌舞伎ファンにはお馴染みの表現ですが、初見では少し状況がわかりにくいかもしれません。

 だんまりとは、登場人物がずらっと舞台に出てきて、暗闇の中でのやり取りをスローモーションでやって見せる演出。サンリオピューロランドの「KAWAII KABUKI」でも導入されていたので、色んな演目で取り入れやすい演出なのでしょう。

だんまりの様子。
マイナビニュースより

 ピューロ版のだんまりについてはこちらの記事でもご紹介しています。

 “歌舞伎初心者に優しいマモー”という謎時空のマモーが見られる日が来るとは思いませんでした。
 もしまたルパン三世の歌舞伎が作られた折には、マモーがメインで登場する演目も見てみたいですね……。


歌舞伎の要素もたっぷり堪能

 今回の感想文は割とルパン三世ファン寄りの視点が多かったですが、もちろん歌舞伎ファンとしても大満足。

 実際の水を利用した演出“本水”が見られたり、歌舞伎の演目「白浪五人男」を模したキャラクター紹介をエンドロール的に使ったりと、歌舞伎見たなぁ! と満たされた気持ちになりました。

「白浪五人男」風なキャラクター紹介。
マイナビニュースより

 そういえば、アニメでも「白浪五人男」をモチーフにしたお話がありました。

 原作者のモンキー・パンチさんは歌舞伎好きでいらしたとか。天国かどこかから、今回の歌舞伎をご覧になっていたらいいなぁ。


おわりに

 最初は、ルパンをどうやって歌舞伎でやるのかなーと思っていましたが、アーカイブで見られてとても楽しめました。次回があれば次こそは現地で鑑賞したいです。
 ルパン三世は、宝塚でも舞台化されています。

 こうして色んなジャンルで表現され続けることで、ルパン三世のファンの方が増え、更に他のエンターテイメントに接する機会が増えたら楽しいですよね。
 例えば、文楽なんかでルパンをやるとか……。ないかなぁ……。

 今後のルパン三世、そして歌舞伎の新しい展開が楽しみになる演目でした。
 新作歌舞伎『流白浪燦星』は2023年1月8日23:59までアーカイブ配信中です。ご興味とお時間があれば、ぜひともチケットをお買い上げの上ご鑑賞を。(詳細は以下公式サイトにて。)



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ルパン三世についての記事はこちら。

アニメ感想文はこちらのマガジンでどうぞ。

歌舞伎関連の記事、こちらは前中後編の3部作です。

こちらは単発記事でどうぞ。

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矢向 亜紀 / やむかい あき
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