馳星周「少年と犬」 *読書感想文*
ブルーハーツのTRAIN-TRAINの歌詞が思い浮かぶ。
この曲が好きだったけれど、初めて聞いた当時はまだ子どもで、この歌詞の意味がわかっていなかった。弱い者いじめがなぜブルース?と思っていた。
6篇からなる物語の1、2編は、そんな弱いものたちの負の連鎖が描かれていた。1篇目を読み終えたとき、嫌な予想がよぎり、ささっと各篇を見て、結末を断片的に読んでしまった。
悲劇を読む気分ではないのに、どうしようか。読むのをやめようか迷った。
犬と心温まる物語では決してない。弱いものが這い上がるために、間違った道を歩んでしまった悲劇と、やってしまったことの代償。2編目を読んだところで、この先もこの調子なのだろうか?憂鬱な気持ちになる。
3編目以降を読み進めていくと考えてしまう。
犬の多聞は「守り神」なのか「死神」なのか?
最後まで読み終えて思ったことは、”作者が言いたかったことは何だったのだろう?“
弱い者たち、傷ついた人たちを描くために、犬を旅させる設定にしたのだろうか。”きっとこれこれこういうことだろう”という答えは、はっきりとは見つからなかった。なんとなく、ぼやっともやっとする感じが否めない。
そのせいか、文章は読みやすかったけれど、私にとっては読後感があまりよくなかった。
ネットのレビューなどを見ると、『犬好き必見』とか、『感動した』とかいう感想を持つ人が多いようだが、私は犬好きだけれど、そんなふうに表現するような感想には至らなかった。
犬の登場する感動話(とされる話)の多くは、飼い主などに犬が尽くす話だ。つまり犬が犠牲になっている部分が大きいのだけれど、尽くすことが犬にとって喜びなんだと捉えているように描かれる(ことが多い印象だ)。
本当にそうなのだろうか?
そういうところも、もやもやっとする要因のひとつだったかもしれない。
犬好きとしては、むしろ犬が登場しない方が読みやすかったかもしれない。
(なんて思う私は少数派かもしれません。)
以上、馳星周「少年と犬」の読書感想文でした。
図書館で数冊借りたので、残りを返却期限までに読まねばならず、そのうち1冊は440ページ。う~ん読み終えられるだろうか・・・。チョイスを間違えたかしら?とちょっと後悔しています。
これからしばらく読書感想文が続くかもしれません。
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