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決まり文句

 


 ◆耳にタコ

 ここ何年か、マスコミ等で、うんざりするほど聞かされてきた言葉がある。
「丁寧(ていねい)に説明‥‥」
「真摯(しんし)に対応‥‥」
 ほかにもあるが、この二つは東西の横綱だ。

(また言ってら)
 ひねくれ者の私は、つい眉に唾をつけてしまう。 

 ◆そんなつもりでは

 同じように、白々しい言葉がある。これは大関格だ。
「誤解を与えたとしたら(お詫びしたい)」
 という類のものだ。

 背景には
(そんなつもりはなかったのに、誤解・曲解されてしまった。私は悪くない)
 という本音が見え隠れする。だから、失言・失敗を繰り返す。

 ◆骨折り損

 政治家など世のリーダーにとって、便利な言葉なのだろう。
 安易すぎる。安全運転に異存はないが、もっと大切なプレゼンテーション能力を磨いてほしい。

 数年前、国際競技大会の開会式を見る機会があった。
 日本人の政治家があいさつに立った。部下が用意したらしい原稿を読み上げた。普及版のつまらないものだった。
 次に会場に向かって、自信たっぷりにしゃべり出した。

 本人は英語のつもりだろう。それは「アイ ハヴ ア ペン」式のものだった。
 英語が日常語の人は
(この人、何語を話してるのだろう)
 と思ったはず。

 会場はますますざわついた。
 本人の期待に反して
(先生は英語もできるんだ!)
 と思った支持者は、あまりいなかったようだ。

 ◆裸の王様

 政治家を裸の王様にしたのは、国民にも責任がある。
 薄っぺらな言葉では真意が伝わらない、と指摘しないかぎり、いつまでも駄弁を弄(ろう)しているだろう。

 ただ、あまり言いすぎると逆襲に遭う。もとより、私には悪意はない。もし誤解を与えたなら、丁寧に・真摯に・説明責任を果たすつもりだ。


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