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犬のエッセー集

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2020年6月。我が家に盲導犬・エヴァンがやってきました。大阪生まれの♂。やんちゃながらも健気に生きるガイド・ドッグの毎日を、エッセー風に綴ります。
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2023年10月の記事一覧

マイホーム

マイホーム


 ◆くつろぎ

 人にも動物にも、居場所があることは重要だ。
 どうやら、我が家の盲導犬・エヴァンはダイニングのテーブルの下が、最も居心地がいいらしい。

 エヴァンの夕食は六時前後と早い。家族がゆっくり食べたり吞んだりするのを、ケージのそばで忙しく尻尾を振りながら、見ている。そのうち就寝前のワン・ツー(トイレ)。庭で済ませて戻ると、リードを外され、指定席でくつろぐことができる。

 日課になっ

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はまり役

はまり役


 ◆『動物王国捕物控』事情

 私が初めて書いた小説『動物王国捕物控』(文芸社刊)は、盲導犬ユーザーの山谷鍼灸師が主人公だった.。過疎化で消滅した村の跡に、土着の動物たちが王国を建国する、などという荒唐無稽な話である。
 当然のことながら、動物がたくさん登場する。人間社会同様、トラブルも起きる。一種の推理小説で、どんな推理、方法によって解決していくかが見どころである。主役をどの動物にしようか考え

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伸びしろ

伸びしろ

 

 ◆無関心

 雪印の6Pチーズは、酒のつまみにも好適だ。食べてしまったので、空き箱をエヴァンに投げてやった。喜んで遊んでいる。やがて、噛んでボロボロにしてしまう。

 ふと、思いついて、ネットでフリスビーを買ってやった。愛犬家なら、フリスビーを投げてやり、犬が空中でキャッチするシーンに憧れる。勇んで、近くの広場に行った。
 ところが、エヴァンは興味を示さなかった。我々と共に、円盤の行方を見

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なくて七癖

なくて七癖

 

 ◆癖の観察

 人間、癖がないようで、あるものである。動物の場合はどうかと気になったので、エヴァンを観察してみた。

 これというものが見当たらない。
「犬はどれもみんな同じなのかな」
 と思っていると、治療を受けていた患者さんがエヴァンを見て笑った。
「あの恰好みて。面白い寝かたするんですね」 

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