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「しあわせをつくるお菓子」を企業理念に、「100年先も、北海道に愛される会社へ」サステナブルの輪Vol.019石屋製菓
皆さまこんにちは。ヤマト運輸公式note編集部です。
ヤマト運輸公式noteがお届けしている「サステナブルの輪」では、ヤマトグループとともにサステナビリティへの取り組みを推進しているパートナーさまに、サステナビリティに関する活動や想い、狙いについて語っていただいています。
今回は、「白い恋人」でお馴染みの北海道の製菓メーカー・石屋製菓さまのサステナビリティへの取り組みをご紹介します。
石屋製菓は1947年にでん粉加工業として創業。1976年に「白い恋人」を販売し、今や大ヒット商品として、北海道土産の代名詞になっています。現在、「白い恋人」のほか「美冬(みふゆ)」「白いバウム」「チョコレートタブレット」などの洋菓子を販売するとともに、カフェやベーカリー、テーマパーク「白い恋人パーク」を運営。1996年以来、サッカーJリーグ「北海道コンサドーレ札幌」のオフィシャルトップパートナーでもあります。
今回、社長室広報CSR推進チームの亀村建臣さまと、人事総務部総務チーム施設グループの鈴木遼さまに、サステナビリティへの取り組みについてお話を伺いました。
「しあわせをつくるお菓子」
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サステナビリティへの取り組みにもつながる、石屋製菓の企業理念からお話をさせていただきます。石屋製菓では、「しあわせをつくるお菓子」という企業理念を掲げています。ここで言う「しあわせ」とは、「お客様のしあわせ」「地域のしあわせ」「社員のしあわせ」を指しています。お菓子に関わる仕事というのは、いろいろな「しあわせをつくる」ことだという意味が込められています。さらに企業理念を達成するために、4つの行動指針を設けています。
「Fun!おかしな仕事をしよう。だって、お菓子の会社ですから」「Professional!プロ意識で仕事をしよう。だって、成長の源ですから」「Safety!安心・安全な仕事をしよう。だって、それが基本ですから」「Team!チームで仕事をしよう。だって、仲間がいるのですから」
以上の4つが、私たち従業員の行動指針になっています。
企業理念を達成するために「100年先も、北海道に愛される会社へ」という長期ビジョンを掲げました。石屋製菓は北海道を拠点として77年以上もの長い間続いてきましたが、これも北海道が観光地として魅力的な場所であり続けてくれたおかげです。そんな魅力的な場所である北海道の皆さんと一緒に歩んでいこうという想いが込められています。こうした企業理念、4つの行動指針、長期ビジョンに基づいて、「6つの約束」を定めています。
実は、当社では2007年8月に、「白い恋人」の賞味期限改ざんや、アイスクリームからの大腸菌群検出などの大不祥事を起こしてしまい、倒産の危機に陥ったことがあります。これを契機にコンプライアンス体制やその運営を徹底的に見直すために、コンプライアンス委員会を発足させました。その後、2019年頃にSDGs推進(現・サステナビリティ推進)チームを設け、「6つの約束」の策定を開始しました。この「6つの約束」に基づくすべての取り組みの検証を行う目的も加え、2022年11月からは、コンプライアンス委員会をCSR委員会へと名称を変更しています。この「6つの約束」が当社のお客様・地域・社員のためのSDGsに関わる具体的な取り組みであり、コミットメントとなります。
「6つの約束」は、「安心・安全」「コンプライアンス」「環境」「スポーツ振興」「地域社会」「雇用・労働環境」です。「スポーツ振興」と「地域社会」を分けていますが、「スポーツ振興」は地域社会活動の一環ではないかという議論もありました。当社ではJ1クラブチーム「北海道コンサドーレ札幌」のオフィシャルトップパートナーを25年以上も務めています。2代目社長の石水勲は北海道にプロスポーツチームのない時代に、プロスポーツチームを誘致して、北海道を盛り上げたいという想いがあり、「北海道コンサドーレ札幌」の創設に尽力しました。そうした経緯もあり、当社では「スポーツ振興」に特に力を入れている関係から、約束5の「地域社会」とは独立して約束5として「スポーツ振興」を掲げています。
「脱炭素」と「ゼロエミッション」への重点的取り組み
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ここでは約束3の「環境」に関わる具体的な取り組みについて重点的に紹介させていただきます。サステナビリティ推進チームを立ち上げた際に、SDGsアイコン別集計表を作成しました。SDGsの17項目の中で、当社が取り組んでいる項目で、スコアの高いものはどの項目で、低いものはどの項目か、現状把握するために、総ざらいをしました。その結果、「安心・安全」に関わる衛生面の取り組みと、「スポーツ振興」「地域社会」に関わるもの、「雇用・労働環境」に関わるもののスコアは非常に高い結果となりました。
これは先ほどお話しした不祥事を経験したことや、雇用に関する取り組み、地域社会への貢献などに積極的に取り組んできたことがあります。しかし、約束3の「環境」に関わる項目のスコアが低くなりました。お恥ずかしい話ですが、一企業として環境への取り組みに関して遅れていることが分かりました。環境負荷を軽減するための取り組みをもっと推進していかなければならない。この結果を受けて、今後、重点的に取り組んでいくテーマとして、「脱炭素」と「ゼロエミッション」を定めました。
もちろん、これまでも主力商品である「白い恋人」の包装資材を中心に、環境に配慮したパッケージの切り替えを行ってきました。2009年のバイオマストレーの採用に始まり、その後、「ホワイトチョコレートプリン」「美冬」へと拡大しています。2020年からは化粧箱を適切に管理された森林、およびその他の管理された供給源からの原材料を用いて製造された森林認証紙に切り替えています。2023年8月からは化粧箱の留めシールをプラスチックから紙製に変更しました。年間1.5トン(2019年度仕入れベース)のプラスチック素材削減を見込んでいます。
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2024年初めからは、切り替えが難しかった「白い恋人」の個包装でも、高いバリア性を保ちながら、リサイクルPETやインクの一部に植物由来の原材料を使用した新フィルムを採用。年間のCO₂排出量約46トンの削減を見込んでいます。最近では唯一切り替えできていなかった「白い恋人」の包装紙についても森林認証紙になりました。
一番、遅れていたのが製造現場での取り組みです。現在、当社には「宮の沢工場」と「北広島工場」の2工場があります。ここで取り組んでいるのがCO₂の排出削減です。当社のエネルギーの大きな内訳は、電気とガスです。電気はもちろん機械を動かすために、ガスは空調やオーブンでの生地焼成のために使っています。2022年から自社工場で使用する電力は、実質再生可能エネルギーを採用し、CO₂排出量実質ゼロを達成しています。2023年4月からは、テーマパーク「白い恋人パーク」でも採用し、2024年10月現在、当社敷地内の全電力使用によるCO₂排出量実質ゼロを達成しています。廃棄物のゼロエミッションに関してですが、当社の廃棄物はプラスチックと汚泥が半々になります。その中でも環境負荷が高いのは、プラスチックになります。そのため、まずはプラスチックのリサイクルから取り組みました。ゴミ箱の位置とか、設置場所とか、分別の方法とか、非常に細かいところも含めて、工場全体で話し合いながら進めてきました。リサイクルする方が、結果的に費用的に見ても安くなることが分かってきています。2030年までに工場で排出される廃棄物の完全リサイクルを目指して取り組んでいます。
次に汚泥処理の課題があります。汚泥といっても泥水のようなものではなくて、油が混じった排水のことです。工場では、全長20m程度の長いオーブンでクッキーなどを焼くのですが、その際にベルトの表面に油脂が付着するんですね。熱湯で洗浄するのですが、排水は油脂を含んでいるため、そのまま下水に流すわけにはいきません。排水をいかにして効率的に処理するかが課題となります。当社では、1日1回、排水の水質を分析し、排水処理設備の運用改善を行うことで、汚泥の総量を減らす工夫に取り組んでいます。総量が減ることにより、排水処理設備で発生するCO₂に加え、汚泥を運搬する際に発生するCO₂も削減が可能となります。
サステナビリティ活動への社内的評価の高まり
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製造工場では、コロナ禍を契機として、2020年頃から本格的に環境への取り組みを始めました。コロナ禍で生産工場が停止するという事態に陥り、それが環境への取り組みを振り返る機会となりました。どの場所でどれくらいのエネルギーを消費しているのか、徹底的に細分化し、見える化を図りました。こうして算出されたデータを食堂のモニターに映し出して、全社員に周知していきました。今月のCO₂排出量はどのくらいか、減っているのか増えているのか。そのデータを見て、設備の稼働時間を調整したり、削減量の目標値を定めたり、こうしたことを少しずつやりながら、結果を出していったという経緯があります。
最初は正直、環境への取り組みといっても、何から手をつけていったらよいのか分かりませんでした。こうした中で、仮説を立てながら検証し取り組んでいくことで、少しずつ効果が出てきました。効果が目に見えて出てくると、さらにやる気も出てくる。こうした小さな成功体験が積み重なることで、従業員が自ら主体的に取り組むようになり、さまざまな逆提案をしてくれるようにもなりました。最初は、サステナビリティへの取り組みは、なかなか社内でも評価されにくい現状がありました。どうしても販売実績の向上とか、コスト削減への取り組みが評価の対象になります。しかし、サステナビリティへの取り組みを進める中で、実際、取り組みがコスト面でも効果が出てきたり、そして何よりも、お客様をはじめステークホルダーの方からの評価が変わってきているように感じます。
当社では「100年先も、北海道に愛される会社へ」というビジョンを掲げていますが、北海道のために環境保護に力を入れていますとか、従業員を大切にしていますとか、サステナビリティの取り組みは企業自体に共感を持ってもらうことにつながっていきます。
現在、石屋製菓では2026年をゴールとする中期経営計画のスローガンとして、「Stand By Hokkaido」を掲げています。北海道では、当社も含め、コロナ禍によって大きな打撃を受けました。他の地域よりも早くから緊急事態宣言が行なわれたこともあり、観光客は激減しました。こうしたコロナ禍を乗り越えて、北海道と共に歩んでいこうという想いを込めたものです。これからも北海道という土地に根ざした、さまざまな新しい取り組みに挑んでいきたいと思っています。
今回は、石屋製菓さまのサステナビリティへの取り組みをご紹介させていただきました。
次回からも引き続き、パートナーさまのサステナビリティへの取り組みをご紹介し、「サステナブルの輪」を広げていきたいと思います。
次回の配信もお楽しみに。
編集・著作:ヤマト運輸株式会社