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モーニング娘。'24 小田さくらさんに訊く 猫を愛するということ

モーニング娘。'24のサブリーダーとして活躍するかたわら、生粋の愛猫家として知られる小田さくらさん。生まれた時から保護猫たちがそばにいる環境で、猫とともに育ってきたという彼女に、猫との暮らしの魅力と学び、またコロナ禍に家族で行ったミルクボランティア活動について話を伺いました。

— 小田さんはいつ頃から猫との暮らしが始まったのですか?

小田家の歴史としては27年前から。私が生まれた時には、すでに2匹の猫がいました。きっかけはいつも偶然で、家の前で泣いている子を保護して飼い主を探したけれど、見つからずそのまま引き取ることになったり、母の同僚の方のおうちで子猫が生まれて引き取り手がいないからと迎え入れたり。意識的に保護猫を迎えていたというわけではなく、気づけば自然と6匹の猫と暮らしていました。今は4匹の猫と暮らしてます。

— 先代の猫たちと現在飼われている猫たちの間は途切れなかったのですか?

だんだんと猫たちの数が減っていって、気づけば2匹になったタイミングで新しい子たちを迎えたいと思うようになりました。途切れさせてしまうよりも、先住猫と関わりながらつないでもらったほうがいいなって。モーニング娘。と同じで、期ごとにメンバーが総入れ替えしてしまったらそれってモーニング娘。なの?って思っちゃうけれど、期をまたいで引き継いでいったほうがみんな楽しいと思うんです。

左から吉、クマ、セイラ、のぶお

— 生まれてからずっと猫と暮らしてきて、学びになったことや考えるようになった事はありますか?

猫って何を考えているのかが本当に分からない生き物なので、接するうちに自然と察する能力のようなものが身についたような気がします。一つ屋根の下で共存してゆくなかで、主従関係や上下関係もないのが猫なので、お世話してあげなきゃとか、しつけなきゃといった視点ではなく、そういう生き物なんだと思える。例えば、大切なものを壊されたとしても、猫の手が届くところに置いてしまった私が悪いというように自己完結能力がすごく上がりました。

— どうしても飼い主という意識が強いとついつい怒ってしまったり、思うようにいかないことに苛立ったりしてしまうという人もいるかもしれないですよね。

私にとって猫はそういうものだと思っているし、可愛いから猫っていいよって勧めたくなるけれど、反対にストレスに感じる人もいるんですよね。例えば、着てる服に猫の毛がついてしまうことや、トイレの匂いに過敏に反応してしまう人をみると、猫が合わない人もいるんだなと学びになりました。

— 普段から、お友達とかで猫を飼いたいっていう子がいたら、泊まりに来てもらったりするなど猫との暮らしに触れる機会を作っているそうですね。

それこそ猫が毛玉吐いたのを見て、「え!?」ってなる子は絶対に猫との暮らしが向いていないと思うし、トイレの近くにきて、「臭い」とか「触りたくない」、「掃除できない」ってなったら、じゃあ飼えないよねという判断ができるかなと思って。飼う前に可愛いところ以外も見てもらわないとと思ってやっています。

先代の猫たちと眠る、幼少期の小田さん。

— 衛生面の世話や手術などの側面まで想像しないといけないですよね。

例えば、去勢手術にかかる4万円は私にとっては当たり前の4万円だけど、人によっては自分に使いたい4万円だと思うんです。それで、そのプロセスを省いて育ててしまう。さらには、外でも生きていけると思って外に出したら、いつの間にか子供ができていて、生まれた子猫を育てられないからと捨ててしまうということが実際に起きているんですよね。命を扱う以上、知らなかったでは済まされないし、飼う前にしっかりと考えてもらいたいと思っています。

— 猫を通して価値観の違いについても考えさせられますね。

お互いの当たり前について異なる価値観がこんなにも存在するんだなというのは感じますね。同じ人間でもこんなに違う生き物なんだから、よりいっそう猫に対して受け入れる気持ちも強くなるような気がします。

— 現在飼われている猫たちについて教えてください。

姉弟で6歳のセイラとのぶお、5歳の吉(きち)、そして2歳のクマの4匹と暮らしています。セイラとのぶおは子猫を探していたときに保護猫団体の方から譲渡していただきました。吉は三毛猫のオスという遺伝子異常によって生まれた珍しい猫で、同じ保護猫団体さんを通じて連絡をいただき迎えることに。そして、クマはコロナ禍に家族で行っていたミルクボランティアが出会いのきっかけでした。

— 異なるルーツから小田家に辿り着いた4匹。それぞれどのようなキャラクターですか?

セイラはTHE・三毛猫という感じで、気分屋さんで甘えたがりだけど、触って欲しくないときもあったりと常に気位の高いお姫様キャラ。首輪をつけるのも嫌がらないので、セイラだけ大きなリボンやレースのつけ襟など衣装チェンジを楽しんでいます。

— まさにアイドルの鏡ですね!

本当に。女の子としてのプライドが高いので、家族のなかでは私よりも男兄弟に対してのほうが愛想が良いんです。いわば同業の私のことはライバル視しているみたいで、メンバーが遊びに来ても塩対応です。のぶおは体は一番大きいけど、性格はビビりでおおらか。茶トラの代表という感じです。母と妹のことが大好きで、愛が重すぎてどこにでもついてきて、迷惑がられるほどの一途な性格です。

— 三毛猫で珍しいオスの吉は知能が高いとか?

吉は本当に賢いです。歩いていても何かを探しているんだなとか、そこに行きたいんだなとか、全ての行動にちゃんと意思を感じます。家の中で真新しいものを発見すると理解するまで観察したり。また、ドアを開けるのも上手です。遺伝子異常のせいか本当にIQが高くて、手先が器用だし意思疎通も図れるので、5歳くらいの男の子と生活している感覚です。

— すごいですね。ミルクボランティアのときもお手伝いしてくれたそうですね。

赤ちゃん猫というこれまで触れたことのなかった生き物に興味を持ったみたいで、母猫のようにかいがいしく世話をしていました。離乳食を食べて体中が餌まみれになった子猫たちを一生懸命に舐めて綺麗にしてくれたり、本当に助かっていました。でも、あるときから突然飽きちゃったみたいで急に無関心になってしまって。そういうところを見てるだけでも面白いです。

— 末っ子のクマはいかがですか?

クマはオンオフの切り替えが激しい子。私の部屋ではとにかく甘えん坊で、すぐにお腹を見せるしリラックスしているんですけど、リビングとかに降りると警戒心が強くって、初めのころは母や妹が触ろうとするとパンチしたりして威張っています。最近はようやくリビングも自分の家だと認識して、警戒心が溶けつつある感じです。

— クマとの出会いのきっかけとなったミルクボランティアについて教えてください。

ミルクボランティアはコロナ禍で家族みんなが家にいたということもあり、セイラ、のぶお、吉を譲ってくださった保護猫団体さんのお手伝いができればと思い始めました。だいたい2匹から5匹の子猫を1ヵ月ほど預かり、ミルクや離乳食を与え、トイレを覚えさせます。同時に人に慣れさせてお返しするまでが一連の流れ。総勢48匹の子猫たちのお世話をしました。

— ミルクボランティアをされてみて、新たな発見や学びはありましたか?

きっと人間の赤ちゃんも同じだと思うのですが、 正攻法はないんだということを学びました。何時間おきにこの量のミルクを飲ませてといった大まかな指示はあるのですが、実際はその子の様子を観察して、元気かどうか、まだ食べたいのか、今トイレしたいのかなどちょっとした変化を敏感に感じ取らないといけません。ミルクの温度にも細かいこだわりがあったり、ミルクから離乳食に移行するタイミングも個体差があるので、マニュアルどおりに育てられるものではないんだなというのは思いましたね。

預かった子猫にミルクをあげている様子

— 母猫の代わりに細かくチェックして、ケアしていく。まるで産婦人科のようなプロフェッショナルな活動ですね。

本来であれば、母猫がミルクをあげたり、生きていくための術を見せて子猫たちが育っていくものなので、そう考えると子猫は意外と強いのかもしれないけれど、ちょっとした環境や体調の変化で便秘になったり命を落としてしまうこともある。生命力もそれぞれで、同じ病気にかかっても生死のボーダーラインは本当に絶妙なんです。

— 大切に育んだ小さな命も定期的にお別れが来てしまうわけですが、感情移入し過ぎてしまうことはありませんでしたか?

最初はどうしても悲しくて、次の子たちが来たときは「あれ?これはうちの子じゃない」という不思議な感覚になってしまいました。でも、だんだんと慣れましたね。お返ししたあとはみんなそれぞれきちんと引き取られているので、どこかで元気で暮らしてくれたらいいなといつも願っています。

ミルクボランティアで小田家にやってきた子猫たち

— 48匹の子猫を世話されてきたなかで、クマを迎えようと思ったのはなぜなのでしょうか?

クマは多頭飼育崩壊の現場で保護された子で、母猫が4匹の子猫を抱えていたのですが、見るからにクマはその母猫の子じゃなかったんです。預かった子たちのなかでクマだけが体も大きかったので、ケージから出して一緒に昼寝とかして過ごしていたらすごく懐かれちゃって。朝も鼻とかほっぺにチューして起こしに来たりするんですよ!どんどん愛着が湧いて、私から母に飼いたいと相談しました。

— それで引き取ることに?

母からは私と妹がじゃんけんして、3回勝ったらいいよと言われました。我が家では、基本的に人間ではなく猫が家を選ぶと思っているので、クマと私の運に賭けたんでしょうね。出だしは2連敗してしまったのですが、クマに「気を抜いてるよね?ここで負けたらもう会えないんだよ!分かってる?」とはっぱをかけたら、クマも「はっ!」とした顔になって、そこから無事に3連勝して迎えることになりました。

— 最後かもしれないというお互いの気持ちが通じたんですね。

クマが本能的に選んでくれたんだと思います。いざ飼ってみると、歯の病気を持っているので噛み癖があったり、口周りの毛が禿げていたりと引き取られにくい特徴を持っていた子だったので、結果的にうちに来て良かったんじゃないかなと思っています。

— 長年、一緒に暮らしてきた猫たちは小田さんにとってどんな存在ですか?

最初の6匹は私にとって兄妹のような存在。セイラとのぶお、吉はペットです。ミルクからあげていたクマはもはや我が子ですね。それぞれ私のなかで距離感が違って、特に兄妹のように育った最初の6匹たちとはいつも喋ってたし、喧嘩もしてたし、もう嫌い!とかも言ってたくらい。引っ掻かれたら私も腕を甘噛みしたりとかしてました(笑)。

— 濃い関係性を子供の頃から築いてこられたからこそ、それぞれの猫との別れは辛かったのではないでしょうか。

これまで、一緒に育った6匹との死別とボランティアをした48匹との別れを経験して、別れ方を覚えさせてもらったという感覚があります。また、お別れが悲しいだけではないということも学びました。よく飼っていたペットを見送って、死が辛いからもう飼わないという声を聞くんですけど、もちろんそこまで愛情をかけたということは本当に素敵だと思いつつ、悲しみだけが残るのは亡くなってしまった猫にとっても残念なんじゃないのかなって思っていて。

— 確かに、生きている間にいい思い出が絶対にたくさんあって、その子のおかげで猫を好きになっているのに、そういう感情をおいて死だけが飼い主の心に残り続けるのは悲しいですよね。

そう思うようになってから、生きているときのことをよく思い返すし、むしろ今もどこかで生きてくれているような気すらします。小田家で一番長生きをしたももという子は、いつも猫同士の仲をとり持ってくれるタイプで、今でも猫同士が喧嘩をするとももが来てくれないかなぁって思い出します。亡くなってしまった存在って、名前を思い浮かべただけで悲しくなることもあるけれど、うちではそれだけではなくて、楽しかった時のことやその子の性格とかをより思い出すようになれたので、お別れをたくさん学べてよかったです。

猫たちの仲裁役として愛された先代猫のもも

— ネガティブな記憶よりも、長生きしたおじいちゃんやおばあちゃんのように天命を全うしたような感覚ですか?

そうですね。いなくなったことより、確かに一緒にいたという記憶の方が大きいです。私自身もいつかいなくなったときに、最期の姿やいなくなったということだけを覚えてもらうよりは、生きていたときのことをいっぱい思い出してもらいたい。だからこそ、そういう生き方をしたいと猫との別れを通して思うようになりました。

— 最後に、小田さんの考える人と猫との理想的な関係性や未来について教えてください。

猫のことが大好きだし、守っていきたいからこそ、野良猫に対してはもっと責任感を持ってみんなが接してほしいと思います。ただ可愛いとか、触りたいから餌をあげるのではなく、その子たちがどのような環境で生きているのかを知ってほしい。飼い猫なのか、地域猫なのか、野良猫なのか。野良だとしたら、飼えないのに一時的に餌をあげてしまうことで生きられない命を増やしてしまうことにもなりかねないわけで、これ以上不幸な環境で新しい命が増えないように人間たちがしっかりと考えて判断することが大切だと思っています。

— その場の優しさではなく、その先の命まで見据えるということですね。

極論を言うと、ご飯を食べれなくて亡くなるのは1匹だけだったはずが、人間が餌をあげたことによって5匹の子猫が生まれて、いずれみんなが亡くなってしまったとしたら……。そんな悲しい思いをする子猫を増やしたくないじゃないですか。また、猫は外でも生きていけると思って、逃げた猫を放ってしまう飼い主さんもいますが、家猫の寿命が20年まであったとして、野良猫の平均寿命は6年。だからこそ、一度飼った猫は最後まで責任を持って飼ってほしいし、外で猫を見かけたら地域猫ならば安心して暮らせるように見守り続けてほしいし、野良だったら誰かがなんとかしないといけないんだと思って欲しいです。

— 可愛いの先で自分に何ができるのかとか、どういったことの可能性があるかまで想像する人が増えていくと、悲しい未来が少しでも減らせる気がします。

保護活動の目指すべきところは、脱殺処分もそうですし、脱野良猫。全ての野良猫がみんな家の子になってほしいですね。もう外で猫を見ないように、地域猫か家猫になって幸せに暮らしていける未来になったらいいなと思います。

プロフィール
小田さくら(おだ・さくら)
1999年3月12日生まれ、神奈川県出身。モーニング娘。’24のメンバー(11期)。ニックネームはさくら、おださく。特技はフラダンス、鼻歌。趣味はエモーショナル童謡。好きな音楽ジャンルはテクノポップ、VOCALOID。好きなスポーツはフィギュアスケート(見る専門)。座右の銘は「続ける」。2023年に初のフォトエッセイ『さくらと猫』(KADOKAWA)を刊行。現在モーニング娘。’24の最新シングル『なんだかセンチメンタルな時の歌/最KIYOU』が絶賛発売中。

スタッフクレジット
photo:Hiroki Watanabe(Tron management)
hair&maku-up:Karen Suzuki
edit&text:Mikiko Ichitani
Produced by MCS(Magazine House Creative Studio)

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