「スポーツの力」を最大限に活用し、持続可能な地域社会の実現に取り組む。サステナブルの輪Vol.024ドーム/いわきFC
皆さまこんにちは。ヤマト運輸公式note編集部です。
ヤマト運輸公式noteがお届けしている「サステナブルの輪」では、ヤマトグループとともにサステナビリティへの取り組みを推進しているパートナーさまに、サステナビリティに関する活動や想い、狙いについて語っていただいています。
今回は、福島県いわき市に物流拠点を移しスポーツ関連事業を展開するドームさまと、同じくいわき市及び双葉郡をホームタウンとし日本プロサッカーリーグに所属する、いわきFCさまのサステナビリティへの取り組みをご紹介します。
ドームさまは1996年にテーピングの輸入販売会社として創業。その後、米国のスポーツアパレル「アンダーアーマー」の輸入販売やスポーツサプリメント「DNS」(現在は事業譲渡しています)の開発・販売へと事業を拡大。
2015年に「株式会社いわきスポーツクラブ」が設立され、いわきFCさまの運営に関わります。(現在は運営権を譲渡し、ユニフォームパートナーとなっています)
2016年に震災復興・地域活性化・街づくりのテーマを掲げ、いわき市に物流センター「ドームいわきベース」を建設。
翌2017年 、スポーツ施設を中心に地域経済を活性化させる欧米型の都市開発を行い、一般の市民も気軽に立ち寄りサッカークラブに触れることで人々に活力を与える存在を目指すということから、日本初の商業施設複合型のクラブハウスを建設・オープンしました。
いわきFCさまは、2012年に設立。
2015年に「スポーツの産業化」をキーワードに、当時福島県リーグ三部だったいわきFCの運営権をドームさまが取得し、「株式会社いわきスポーツクラブ」を設立。
翌2016年に新たにチームを発足し、福島県リーグ2部からスタート。その後順調に昇格をし続け、2020年にJFLに参入すると2021年にはJFLを優勝し、J3に昇格。異例のスピードでJリーグに参入すると、1年でJ3を優勝。現在はJ2に所属しています。
今回、ドームのSupply Chain Vice Head of Divisionの石井宏史さまと、いわきFCの代表取締役 大倉智さま、マーケティング&ファンエンゲージメント シニアマネジャーの川﨑渉さまにお話を伺いました。
ドームさま
「ドームいわきベース」を拠点に地域社会の活性化へ
私たちは「社会価値の創造」という企業理念を掲げています。ここには「スポーツを通じて社会を豊かにしていきたい」という意味が込められています。
スポーツ人口の増加や需要促進といった、スポーツ業界の経済的な発展にとどまらず、よりよい環境、正しい知識の提供、スポーツが結ぶ絆や達成感、喜びの共有など、スポーツを通じてできることは無限にあると考えています。
スポーツ環境の水準を世界レベルに引き上げたい、アスリートの夢を実現する手助けをしたい、若者たちに生き生きとした魅力をある生活を提供したい、スポーツを生み出す有形無形の価値をより広く、より多くの人に届けたい。
そんな想いを実現するために、福島県いわき市を拠点に、物流センター「ドームいわきベース」をはじめとして、プロサッカーチームの設立、スポーツイベント・施設の運営などに取り組んできました。
ここではサステナビリティへの取り組みの一環として、物流センター「ドームいわきベース」建設の背景からお話をさせていただきます。
2011年の東日本大震災以降、私たちはアンダーアーマーのウェアやサプリメントなどの物質支援をはじめとした、寄付・募金活動などを行ってきました。その中で、寄付・募金活動だけでは本質的な意味での助けにならないのではないかという思いがありました。
復興はいわばマイナスからゼロにすることです。そうではなく、マイナスからプラスにする成長につながるきっかけが必要であり、成長にはやはり雇用が不可欠ではないかという思いがありました。
当時、アンダーアーマーの売り上げも増えて既存の倉庫が手狭になっていたこともあり、いわき市に物流センターを移設することで雇用創出に繋げたいという思いが、「ドームいわきベース」建設のきっかけとなりました。建設後、最大160名の正社員、パートさんも入れますと計400名の雇用を生み出しました。
「ドームいわきベース」の稼働開始に向けた建設・採用活動などを、いわき市の方々と一緒に進める中で、スポーツの本質的価値と、いわき市及び当社の持つ力を掛け合わせれば、復興、さらには成長のきっかけになれると感じるようになりました。
そこから「スポーツを通じて社会を豊かにする」という当社のミッションに基づいて、「スポーツを通じて、いわき市を東北一の都市にする」ということを掲げて、「ドームいわきベース」を中心に、プロサッカーチーム「いわきFC」の設立、スタジアム・アリーナの建設構想、スポーツイベント・施設の運営など、いわき市と一体となって、雇用拡大だけではなく、いわき市のブランディングや夢の創出、若者の定着、教育レベルの向上、健康増進による社会保障費の削減、地価上昇、税収向上など、地域社会の活性化に向けた取り組みを拡大していきました。
現在、「ドームいわきベース」は単なる物流拠点としての機能だけではなく、隣接する「いわきFCパーク」は、いわきFC の活動拠点として、最先端のスポーツファシリティに加えカフェやレストラン、アンダーアーマーのショップが併設された日本初の商業施設複合型クラブハウスとなっています。「いわきFCパーク」では、地域市民に解放された施設として、パブリックビューイングをはじめ、さまざまなイベントが開催されています。
日本のスポーツ産業の市場規模は5兆円程度(2022年)と言われていますが、アメリカの60兆円、70兆円と比べるとまだまだ低いレベルにあります。
日本の場合、スポーツは余暇というイメージが強く、スポーツの産業化が遅れています。私たちは、スポーツの産業化モデルとしてスタジアムを中心とした街づくりに取り組んでいます。
「アンダーアーマー」のサステナビリティへの取り組み
続いて、「アンダーアーマー」独自の取り組み「1% FOR ATHLETES」を紹介させていただきます。「1% FOR ATHLETES」は、UAリワードメンバー(アンダーアーマー会員)のご購入金額の1%を、スポーツに触れる機会やスキル向上につながる機会の創出に活用する取り組みです。今よりも良くなりたいと前に進むアスリートに寄り添うため、スポーツを通じて子供から大人まであらゆる世代を支援することで、社会的な貢献につなげていこうと考えています。
「1% FOR ATHLETES」では、「スポーツ振興」「啓蒙活動」「次世代育成」「アスリート支援」の4つを柱に活動をしています。具体的な活動として、例えば、「啓蒙活動」の一つ「ウィメンズ・クリニック」では、長野県・菅平で全国から集まった高校女子サッカーチームの大会を実施、試合だけではなく女性アスリート特有の課題についてのクリニックも開催しています。
「次世代育成」では、「UA NEXT」として、“世界レベルのバスケットボール”を学ぶため東京・大阪でのセレクションを経て、約130人の中から選ばれた12人の高校生が長野県・菅平で、現役の日本代表コーチによるトレーニングキャンプを実施、次世代プレーヤーのレベルアップをサポートしています。
また「アスリート支援」の一環として、「UA MISSION RUNサッカー編」を開催。アンダーアーマーのスプリントコーチである秋元慎吾さんが「いわきFC」の選手たちへスプリント指導を実施、「サッカーにおいて活きるランスキルは何か?」など、あらゆる競技の土台となる走りのトレーニングを通じてのパフォーマンスアップをサポートしています。「1% FOR ATHLETES」では、今後さらに活動領域を広げていきたいと考えています。
いわきFCさま
「スポーツの力」で地域社会の課題解決に取り組む
いわきFCは、クラブの活動を通じて、ホームタウンにおける「人づくり」「まちづくり」に寄与するため、SDGsの趣旨に賛同し、持続的な社会の実現のため積極的に取り組んでいます。クラブ創設当時は、スポーツの力で地域社会を活性化していこうというのが始まりでした。
特に、当初から子供たちの健康問題についてはかなり意識した取り組みを行っていました。当時は震災直後であり、子供たちの遊び場がない、福島県は子供の健康データが悪いなど、いろいろな課題に直面していました。そのため、スポーツ施設を作る際には、施設を解放して子供たちの試合や、スポーツ教室・健康教室を開催し、子供たちの健康をサポートしようと考えていました。後ほど、詳しく触れたいと思いますが、現在も「市民の健康づくり」という形で続いています。
いわきFCは、スポーツクラブという人が集まるプラットフォームを使って、地域や社会の課題に向き合い、その解決のお手伝いをしていくことを、発足以来9年間取り組んできました。
当初はドームさんと共に「スポーツを通じて、いわき市を東北一の都市にする」というビジョンを掲げてスタートしましたが、この9年間にホームタウンとしてのエリアが広がりつつあります。
JFLで優勝した年、双葉郡にあるJビレッジのスタジアムでサポーターたちが「浜を照らす光であれ」という横断幕を掲げました。これを見た時、私たちはいわき市だけではなく、浜通り一帯までサポーターが広がっていることを実感しました。
この9年間、地域と共に歩んできたことで、地域のサポーターがそれに応えてくれた証だと思いました。いわきFCがいわき市だけではなく、浜通り一帯の光となること、震災ですべてを失った人たちがいわきFCを通じて一体になること。いわきFCではクラブフィロソフィーの中で「スポーツの力を信じている」という言葉を掲げていますが、まさに「スポーツの力」を実感する出来事でした。
いわきFCの発足当時は、福島県リーグ2部でしたが、7年でJ2まで駆け上がりました。これもまた地域サポーターからの熱い応援があったからだと思っています。
地域と一体となったSDGsへのさまざまな取り組み
ここからは、具体的な取り組みについていくつかの事例を紹介させていただきます。いわきFCでは、SDGsへの取り組みとして大きく3つの領域を設けています。一つが「チームのノウハウを活かして、市民の健康づくりに寄与する」こと。二つ目が「資源の有効活用で、地域環境保全に貢献する」こと。三つ目が「ごみを減らして、住みやすいまちづくりを推進する」ことです。
中でも力を入れている取り組みが「市民の健康づくりに寄与する」ことです。いわきFCは、フィジカルトレーニングを主体とした練習に特徴があり、選手全員が専門の栄養士が管理する食事を原則3食取り、サプリメントの供給を受けるなど、選手の肉体強化に主眼を置いた練習方針をとっています。そこで得られた体づくりや食事、睡眠などのデータを「市民の健康づくり」に活かしていこうというものです。
例えば、いわき市との共同事業「健康な体づくりプログラム」では、チームが持つノウハウや最新のテクノロジーを活用したトレーニングプログラムを市民の皆さんに提供しています。パートナー企業さまと連携し、最新のITデバイスを利用した健康管理やチームの栄養士による適切な栄養指導、さらに「いわきFCクリニック」と連携し、地域に対する医療提供など、多角的に市民の健康づくりに貢献する仕組みにトライしています。毎年開催している「いわきドリームチャレンジ」では、子供たちにさまざまな運動を楽しんでもらうイベントを開催しています。
子供向けの活動としては、2017年から続く「いわきスポーツアスレチックアカデミー(ISAA)」があります。ISAAは、小学生以下のお子様を対象に、遊びながら体力をつけ、楽しく運動スキルを学べる無料のプログラムです(一部実費負担あり)。年齢ごとにクラスを3つに分け、「走る」「投げる」「跳ぶ」「掴む」などの基礎的な動きを中心に、いわきFCのトップチームが普段練習をしているいわきFCフィールドで、約1時間の活動を行っています。
その他、認知症を正しく理解したい、そして「認知症になっても、できる限り住み慣れた場所で、安心して、自分らしく暮らせるまちづくり」を実現する一歩として、選手やクラブスタッフ自らが「認知症サポーター」になる取り組みを行っています。認知症について、選手と一緒に学ぶ「認知症サポーター養成講座」も実施しています。この啓蒙活動は、Jリーグが主催する「シャレン(社会連携活動)」の「アウォーズ2024パブリック賞」を受賞しています。
「地球環境保全への貢献」では、いわきFCパークで福島県内初の「カーボンオフセットLPガス」を導入し、地球環境への影響を軽減する取り組みを行っていたり、些細な部分ですが、社員の名刺やクラブが発行する冊子などの紙媒体には、石灰石を主原料とした「LIMEX」という素材を積極的に採用したりしています。環境問題に関してはまだまだ取り組むべきことが多々あると考えており、身近な問題から取り組んでいます。
「ごみの削減」に関しては、ホームゲームを通じて試合後のごみ拾い活動やエコステーションの設置などを実施しています。また、毎年「ふくしま海ごみ削減プロジェクト」に参加し、いわき市の海岸で行われるごみ拾い活動に選手たちが参加したり、「海ごみゼロマッチ」と称したホームゲームでの啓発活動を行ったりしています。
地域貢献活動として、地産地消への取り組みも行っています。選手たちに提供している食事に、地元で採れた農作物や海産物を積極的に採用し、地産地消への取り組みを強化しています。2021年には、福島県漁連といわき市の協力を得て、「常磐ものうまい!」をキーワードに、福島産の食材を使ったメニューを選手たちがプロデュースして試食するというイベントを開催、震災に伴う風評被害の払拭にも取り組んでいます。
今後の取り組みとしては、環境保全への取り組みを強化すべく、パートナー企業と連携し、グリーンエネルギーやカーボンオフセットに取り組んでいきたいと考えています。
いわきFCでは、各部署が連携して、少しずつできる取り組みを進めています。選手・スタッフを含めて、SDGsへの理解がものすごく進んでいるというわけではありませんが、少なくとも地域社会に貢献していくという意識は高いと思っています。今後とも、いわきFCのミッションである「人づくり」「街づくり」に寄与するために、持続可能な社会の実現のために積極的に貢献していきたいと思います。
今回は、ドームさま、いわきFCさまのサステナビリティへの取り組みをご紹介させていただきました。
次回からも引き続き、パートナーさまのサステナビリティへの取り組みをご紹介し、「サステナブルの輪」を広げていきたいと思います。
次回の配信もお楽しみに。
編集・著作:ヤマト運輸株式会社