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読書録:歴史学のトリセツ

小田中直樹『歴史学のトリセツ』(ちくまプリマー新書)
ワイは歴史好きだが、そうなったきっかけは幼稚園の卒園間際くらいに子供向けの『太平記』を読んだことによる。これで「歴史っておもしろいな」と感じたのだが、世間的には歴史=退屈というイメージが出来上がっているようだ。なぜ歴史はおもしろく感じられないのか、その理由を読み解いたのが本書である。
著者いわく、歴史のつまらなさは学校の教科書に起因する。なぜかといえば、事実の列挙でしかないからだ。それでは暗記科目と化すのも当然である。だが、その原因ははるか昔、歴史学の黎明期にあった。
そこで、著者はランケ以降の歴史学の歴史を振り返る。それは、ランケが創造した実証主義史学への飽くなき挑戦と批判の歴史だった。つまるところ、ランケによる実証主義こそが、歴史がつまらなくなる原因だった。ランケの歴史学にはストーリーがない。ストーリーを欠く歴史はおもしろみに欠ける。
結果、学校で教える歴史が自国を中心とした「ナショナル・ヒストリー」である点と合わせ、無味乾燥な事実の列挙と化し、暗記科目になってしまっているのである。ランケへの挑戦はフランスのアナール学派を始めたびたび試みられているが、アカデミアで市民権を得ているのは現在もランケ流の実証主義史学なのである。ランケ流実証主義史学の学徒が自分の流儀で執筆しているのが現在の歴史教科書というわけだ。
歴史をおもしろくするには、まずは暗記科目からの脱却を図る必要があろう。それに必要なのはストーリーではないか。本書を読んでそう感じた。

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