BS103ch廃止に想う
やさしいやさしい「ホームにて」に衛星放送の思い出を書いた。BS103はBShiとも呼ばれ、日本で最初のデジタルハイビジョン放送だ。なぜか放送開始が11月25日との記憶が蘇ったが、11月25日はハイビジョンの走査線が1125本からきていて、よく考えるとデジタルTVに走査線は必要ない。走査線はブラウン管を横に一本ずつビーム走査する縦の本数だ。
そうハイビジョン放送はアナログ衛星放送でも行われていた。MUSE方式というアナログ圧縮技術を用い、旧BS9chで、1991年11月25日から試験放送の形態ではあったが行われていた。高価なMUSEデコーダーが必要なこともあってほとんど普及しなかったが、BSアナログ設計者として無視もできずに、S-VHSビデオにだけMUSE端子を搭載していた。
そして21世紀を迎える2000年12月1日、BSハイビジョンとも呼ばれて放送開始した思い出深い最初のデジタル放送が廃止されるのが、何とも残念だ。BS1に統合されるが統合するならBS103chだよ。BS1は当初アナログBS1の後継で2000年開始時はHDではなくSD放送だ。地上波デジタルと同じようにチャンネル1をNHKにしたいのはわかるが。
BS1は、同じアナログBS2の後継なので当初はSD画質だったBS2と統合されてHD放送になった。それが2011年4月1日だったが、この時BS103chはBSハイビジョンからBSプレミアムに呼称が変わった。BS1もハイビジョンになったから、高級感を出したかったのだろうがこの名称変更も嫌だった。名称を変えるならBS1の方だろうと憤ったものだ。
まあBS受信機設計から離れて5年も経っていて次の仕事も忙しかったから感慨に耽ることもなかった。今回もどうってことないかと思っていたのだが番組表からBS103が消えるのを見て、仕事からリタイアしたことも有り喪失感が半端ない。MUSE方式から始まった伝統ある日本最初のHD放送が停波するのが、アナログBS放送開始当初から携わった身には辛すぎる。
4K放送なんて国民は望んでいるのか。2K放送で画質は十分、8K放送の画質は物凄く価値があるが、その画質は100インチ以上の画面で鑑賞しないと意味はない。個人レベルで楽しむ放送ではなく、放送受信料を返せだ。NHKの使命に次世代放送の研究をしなければならない研究者がいる事情もあるのだろうが、今の8K放送の普及率を考えれば完全に失敗ではないか。
若者のテレビ離れが世の中の流れ、画面は大きくてノートPC、スマホしか持たない人も多いだろう。動画はネットでしかも倍速再生でいいなら確かに十分だろう。NHKも受信料確保に動画送信に熱心だ。日本経済が縮小していくのも仕方ない。経営者はコストカットが当たり前、将来に備え投資ではなく内部留保。円安は経営数字にいいだろうが日本の実力を現わしている。