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がん様々 5 抗がん剤を敵にしないセルフケア

がん患者による、がん患者のための、
がん治療対策マニュアル


2章  抗がん剤治療開始

3  抗がん剤は敵じゃない

想像できない抗がん剤のお役目を、どのように捉えていらっしゃるでしょうか。
ある抗がん剤の説明には、「がん細胞のDNAの間に入り込み、その細胞の成長を止めたり死滅させる作用」 「がん細胞のDNAにくっつき切断し、その細胞の成長を止めたり死滅させる作用」 「細胞が分裂する際に必要な細胞構成成分の1つである微小管を安定化および過剰発現させることにより、がん細胞の増殖を阻害」 と。

ん〜…実に難しい。要は、がん細胞が増殖する過程を阻害して、がん細胞が増えることを抑えたり死滅させる働きをする、ということです。
分子標的薬ならば、例えばがん細胞の増殖に必要なタンパクが過剰発現している場合、それをターゲットに結合する抗体や化合物、といったことでしょう。

抗がん剤治療を行ってみて思ったことがあります。
抗がん剤は、健康な細胞も攻撃するが故に悪者のように扱われがちです。毒であることは間違いないので仕方がないのですが、見方を変えれば、自分自身が がん細胞と闘えていない代わりに抗がん剤が闘ってくれるわけで、私は自然と「抗がん剤ありがとう、頑張って」という視点で向き合っていました。
こんな見方もあるよ、といった感じで、これから書かせていただく情報が皆さまに伝わったら嬉しいです。
施術家としての身体への感覚があるからこその向き合い方でもあると思うので、ヒントにしていただけたら幸いです。

抗がん剤を私の言葉で説明させていただくと、投与された抗がん剤は兵隊のようなもので、その部隊は、敵か味方かは思い巡らせることなく攻撃するという、不器用な性格です。それが副作用となってでてくるのですね。

そこで、身体の持ち主である本人ができる、副作用軽減のお手伝いとなる予防策があります。その最大の方法が、体内への事前の栄養供給です。体内へ過剰にガソリン供給をしておくことが必要になります。
例えば、酷暑が続く昨今の夏、熱中症や体調不良に陥らいらないため、身体を守るために経口補水液を摂ることなどが推奨されていますよね。これは、汗をかくという要因に対しての水分と電解質を摂るという身近な予防策で、これと同じような考え方です。

抗がん剤に耐えうるよう、現場をできる限りガードしておかなければなりません。その素は栄養です。
普段、身体に蓄積されているエネルギーは普通に生活するためのものです。兵隊は、それをどんどん使っていくのです。兵隊の活動に使われてしまったら、歩くとか食べるとか普通の生活がしにくくなります。
兵隊は、普通に生活するためのエネルギー分など残しておいてはくれないのです。過剰なガソリン供給が必要です。
抗がん剤投与日は、兵隊が働く分のエネルギーを事前に過剰供給しておかなければ、普通に生活するためのエネルギーが枯渇してしまうというわけです。

このように、抗がん剤治療で一番感じたことは、エネルギーをものすごく消費するということです。身体に蓄積されているエネルギーが、シューと音が聞こえるのではないかと思うくらいのスピードで持っていかれるのがわかるのです。
抗がん剤が体内で活動するためのエネルギー源は、自身の身体に蓄積されているエネルギーだということ、多くの副作用が、エネルギーが吸い取られ枯渇して起こるということが、治療の経過で分かっていったのです。
このエネルギー消費を補うようサポートしたことで副作用が激減したのですが、詳しくは治療の順を追ってお話しします。

副作用対策のための“モノ”がいろいろと登場しますが、決して回し者ではありません。自分の身体の直感を信じ、試してきた事実です。いただいた情報も、まずは自分の身体感覚のフィルターを通し、直観的に効果を感じたモノを試してきました。
副作用研究にあたり、新しいモノを試すときは、その時点で摂っていた他のモノは止め、一点集中でその効果を感じ取って検証してきました。

「サポーターチーム結成!!」のところで述べましたが、抗がん剤治療の周期は、組織や臓器のターンオーバーに基づいていると考えられます。この周期であれば元に戻る、というメカニズムです。
しかしそれは、病院や人任せにしているだけでは難しいでしょう、身体は副作用に引きずられやすくなります。

何が大切で重要か。ターンオーバーにきちんと乗るためのお手伝いになるセルフケアです。普段の生活に一工夫加えることで、乗り越え上手になると思います。
でも何をしたら良いかわかりませんよね。私の当事者研究の成果が、その一助になれば幸いです。

4  AC療法 第1回目 副作用に撃沈・・

まずは、AC療法を3週間ごとに全4回。その1回目。AC療法は、乳がん治療の代表的な抗がん剤治療で、アドリアマイシン(Adriamycin)とシクロホスファミド(Cyclophosphamide)という2種類の抗がん剤の頭文字をとってこう呼ばれているそうです。

実際、投与した注射名は、まず制吐剤のグラニセトロン+デキサメタゾン、抗がん剤のドキソルビシン(=アドリアマイシン)、シクロホスファミド、最後に生理食塩液です。抗がん剤のみならず薬の名称は、一般名と商品名が違うことが多いのでよく分からなくなるのですが、私は一般名で覚えるようにしています。

第1回/3月16日、第2回/4月6日、第3回/4月27日、第4回/5月18日というスケジュールでした。

私が経験した主な副作用は、脱毛、頭皮痛、吐き気、胃もたれ胸やけ感、倦怠感、筋肉疲労感、皮膚の痒み、皮膚の色素沈着とシミの発生、爪の変色。
胃もたれや胸やけ感を吐き気とする方もいらっしゃると思いますが、私は、別モノと捉えています。それは、抗がん剤投与初回時の自分の体験に根差しています。
つまり、初日に動けないほどの吐き気に見舞われ、胃もたれや胸やけ感は2〜3日目から起こって1週間〜10日ほど続いたからなのです。胃もたれや胸やけ感と吐き気はそもそも発生機序が違うと感じています。

ここに上げた副作用の中で、栄養の摂り方で大きく改善されたのが、吐き気、倦怠感、筋肉疲労感、痒み、色素沈着、シミの発生などの皮膚関連のトラブルです。特に吐き気と皮膚関連のトラブルは、栄養の摂り方によってほぼなくすことができました。

順を追って述べましょう。いよいよ始まります、まずは初回。抗がん剤の副作用研究も同時に始まりです。

初回治療は午後からだったので、午前中は仕事をし、それから病院へ向かいました。
道中、かなりピクニック気分であったのを覚えています。この日同行してくれたGさんがくれた、脱毛対策としての帽子を早速、車中でどうかぶったらよいかの指導を受けながら、キャッキャしていました。
せっかく築地だからと、ランチにちらし寿司を食べたり、抗がん剤投与中はおはぎを食べたりして、初体験の抗がん剤治療の事実を想像できなさすぎて、若干ワクワクしていたのです。

そんなワクワクも、帰路の車中では消えていました…。

AC療法は、投与前に、カプセルの制吐剤を服用し、それが効くのを1時間ほど待ち、その後に点滴の制吐剤を投与してから抗がん剤を点滴投与するのですが、これだけ制吐剤を入れても、普段と同じ食生活をしていたら吐き気は起きます。

制吐剤は、吐き気の起因となっている催吐の仕組みに対して作用し、吐き気を起こす要因を軽減するようなもので、吐き気の原因をなくすものではありません。延髄の嘔吐中枢が刺激されることで吐き気を感じ、それにより起きる臓器の反応で嘔吐すると考えられているのですが、その反対経路を阻害するといった感じです。

投与後1時間もしないうちに血の気が引きはじめ、2〜3時間の間に、シューと音が聞こえるのではないかと思うくらいのスピードで身体に蓄積されているエネルギーが持っていかれる感覚になりました。
そして、ドラマに出てくるようなげっそりとした状態に本当に陥りました。めちゃくちゃ気持ち悪い…。身体に蓄積されたエネルギーが枯渇し、細胞が飢餓状態になったのです。


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