仮面をかぶる女性と、それに気づかない男
「え!久しぶり!!!」
僕は急に声をかけられ驚いた。
どうやら隣を歩いていた彼女の古い友人のようだ。
「きゃあ!久しぶりじゃん…!」
2人で手を合わせて飛び跳ねている。
どうして女子はこう…テンションが高めになるんだろうか。甲高い声がうるさくて、こっちが周りを気にしてしまう。男子だったら野太い「おう」で済んでいるのに。
何年ぶりだろうという話で盛り上がり、また連絡するねと契を交わしたあとに、2人は笑顔で手を振って別れていた。
友達の姿が見えなくなるまで、手を振り続けていた彼女を見て、あぁ、こんな律儀なところも好きなんだよなと思った。
友達の前の彼女も、変わらず素敵だとホッコリとした気分で見ていた。
「久しぶりに友達に会えてよかったね。よく遊んでた仲良しの人?」
「え?そう見えた?」
「え?」
見えたから、そう言ったのだ。
思ったから、そう言ったのだ。
「嫌いな子」
歩きだす彼女の背中を眺め、
僕の心臓は両膝を抱えて震えていた。