ミカン栽培ではじめた山の開拓。気がつけば自然とこうなっていた。
千葉県の中でも海沿い。はるか南の方になります南房総市。今となっては、高速道路ができたので近く感じますが、できる以前はちょっとした旅でした。ただ都心から離れた海沿いには、けっこう険しさのある山が並びます。
その南房総の山々を走り続けること、約2時間。南房総の千倉にありますオレンジ村さんにこの度行って来ました。
お恥ずかしい話、千葉に住んでいながら一度も伺ったことがなかったオレンジ村。弊社直営店の房の駅に出荷していただくようになってから、その名前を知りました。運営している農家さんは、こちらの野宮農園さん。
笑顔はじけるこちらのお方。実は、御歳83才。『本当ですか?』と聞きたくなるくらい、まだまだ元気ハツラツ現役バリバリといった感じで、とても驚きました。
『将来は、こんな風に年をとりたいものだ。』
そう感じさせてくれる野宮さん。この歳の重ね方は、柑橘系に接しているからなのか。はたまた南房総の自然に触れ合っているからなのか。いろんな事を想像しながら拝見してきた、南房総のみならず県内最大級の敷地面積を誇るオレンジ村さんご紹介していきます。
はじまりは大体こんなものよ。
見てください。この写真では中々伝わらない広大な風景。時々、そんな残念感を覚えることもあります。肉眼との違い。そんな話はさておき。野宮農園さんのミカン畑がこちら。
手前に見える背の小さい木がミカンの木になり、奥の方には大きく立ち並ぶ自然の木々たち。少々高台にも見えるこちらの風景は、まさに山の中。実は野宮農園さんの果樹園は、山そのものなんです。私たちも野宮さんに話を聞いた時は、
『えっ、どういう事ですか?』
となるくらい規模が違いすぎて理解するのに時間がかかりました。山一つと言っても、『小さな山なんじゃないの?』と思われるかもしれません。私もその一人でした。その規模は、何と10町歩を超えるそうです。
10町歩と専門用語言われても理解できない方にご説明しますと、Googleで【1町歩 東京ドーム】のキーワードで検索したところ、良い例えを出してくれているサイトがありました。
東京ドームが約4.7町歩になるので、東京ドームが約2個分!心の中では、『ひえーーーー!』と叫びたくなるくらいの広さで、『管理するのが、めちゃくちゃ大変そう。』と思いながらも、すまし顔で『すごいっすね。』と一言。
これは『県内一の規模にもなるわけだ。』と頷いてしまいました。ここまで来るのに、野宮さんは約60年もかかっています。その月日の長さを聞くだけで、『まだ、生まれてませんけど。』と答えるしかありませんでした。
野宮さんのお父さんが農業をやっていたそうですが、お兄さんが後を継がなかったことがきっかけで農業の道へ。
お父さんがミカンを育てていたわけではなく、今の山を購入したことがきっかけで、ミカン栽培を始めたのだとか。山を購入といっても、南房総の方は意外とお安めな話も聞きますが、簡単に手に入るものでもないと思われます。
なので『お父さんが、山を購入…』という話をサラッといっていましたが、結構すごいことお父さんもやられていたのではないかと、勝手に想像しながら聞いていました。
ミカン栽培からはじめた山の開拓も、気づけば隣接する土地などを買い足しあれよあれよという間に、東京ドーム2つ分の規模になったそう。気づけばという規模間ではないとは思いますが。そして約30年ほど前にオートキャンプ場も開設し、収穫体験やらキャンプやら自然を満喫できる施設になったそうです。
ミカンは寒さに弱かった。
ミカンといえば、冬のコタツの上に並んでいるイメージ。コタツの上に並ぶから、さぞかし冬の果物だとも思っていました。話を聞いていくと柑橘系の果物は、どうも霜にやられたくないみたいです。冬場でも霜が降りてこない南房総はうってつけのミカン栽培に適した場所。
栽培し始めた時の記憶はうろ覚えなで、育てやすいとか適しているかまでは、あまり気に止めていなかったようですが、周りでミカンがよく実っているのを見かけ、『ミカンでも育ててみるか。』くらいの気持ちだったとか。育てていくうちに、知識が深まり今となっては、南房総が適した土地というのを身を持って知ったようです。
オレンジ村さんのみかん畑は海沿いに面している事もあり、潮風なども味方して甘味も酸味も強く、味わい深いミカンが実ると言われているそう。野宮さんも『このオレンジ村含めた、南房総の土地柄が千葉県内ではミカンの栽培に一番適している。』と胸をはってました。
60年もの間、ミカン栽培に関わってきた野宮さん。手がける柑橘系の果物は、それはもう種類豊富で、聞いたことあるような名前がズラリと並びます。
野宮農園さんでは、国内産ではめずらしいレモンの栽培も行っています。私たちが一般的に目にするレモンは黄色です。ただ野宮さん曰く、『レモンの産地では、緑色のものを料理に使っています。レモンの本来の風味を楽しむなら緑色の方がおすすめです。レモンの風味が楽しめるのは恐らく12月頃まで。それ以降は黄色くなって本来の味わいではない。』という。
『まさか、国産のレモンが手に入る?』
はじめてお話を伺った時は、印象深かったのを記憶しています。他の農家さんを見てもレモンを手がけている方は、千葉県ではあまり聞きません。ミカン栽培からはじめた柑橘系栽培も、ここまで来ると達人の領域です。
しかも育て方にもこだわっていて、手がける柑橘系は全て有機栽培になるそうです。有機肥料には、牡蠣殻・骨粉・魚粉などをブレンドしたものを使っており、斜面など機械が入れないところは全て手でまいてしまうくらいの徹底ぶり。
『どこに、そんなパワーがあるのか。』
と、ついつい関心ばかりしてしまいました。だって83歳ですよ。手伝ってくれる方がいるからと言って、中々できるものでもありません。
さらに深掘って聞いていくと野宮農園さんでは、『果樹園で基本的に使用される防腐剤・防カビ剤を一切使用せず育てています。使用することは法律で認められているけども、使用するとで果樹や葉っぱが白い粉で包まれたようになり、ミカン狩りを楽しむ方が良く思えないんじゃないかなぁ。と考えて使わないようにしているんです。』とのこと。
『やっぱり、お客様と接している農家さんの意識ってどこか高いよなぁ。』と感心しながら、私は話に耳を傾けていました。
寝る子は育つ。
なんでもそうですが、聞いてみないと分からないことってありますよね。野菜も果物も、魚もお肉もそうですが、『新鮮なものが美味しいに決まってる!』そう思い込んでいることってありませんか?
確かに収穫したてが美味しいのもありますが、そうではなく一定の期間置いとくことで、美味しくなる食材ってありますよね。
私が思いつくもので言えば、紅はるかというさつま芋や、メロン、キウイフルーツなどなど、詳しく調べて行けばもっとあると思います。実は、ミカンもそうらしいのです。
ミカンは収穫したてよりも、5日以上おいた方がより美味しくなるそうです。野宮農園さんでは、収穫したてを出荷しているのではなく、何と50年以上も使い続けている秘密の貯蔵庫があります。
今回、特別にその貯蔵庫に潜入させていただきました。
目の間に野宮さんが立っていますが、レンズ越しではほとんど姿がわからないくらいの暗さです。
蔵の中を照らすように、小さな覗き窓が空いているくらい。ミカンはいずこへ。と思っていたら、実は箪笥(たんす)貯蔵と言って、同じような大きさの木箱が幾重にもあり、気がつけば真横にびっしり壁のように立ちはだかっていました。
『すっごい量だなぁ。背が届かない…』
他のミカン農家さんでは、コンテナなどに入れて湿度調整する倉庫に保管しているようですが、野宮農園さんではあえてこの箪笥貯蔵を行なっている。理由は簡単で木箱を使うことによって、湿度の調整を木箱が行なってくれるからだそうです。
確かに、保管するにも湿気は敵。それを勝手に調整してくれるとなると保管する方も安心して保管することができます。
この木で造られた箪笥に貯蔵することで、12月から3月くらいまで保管することが可能になる。そしてこの保管状態も重要で、保管状態が悪いと酸味が抜けすぎて、ボヤけたような味わいにもなてしまうんだそうです。
こうして貯蔵されたミカンは、適度に酸味が抜けて甘みが際立つ。この冬22年1月から、房の駅各店に野宮農園さんのミカンが並ぶ予定です。ご期待ください。
身近な南房総。
千葉にこんなにも自然に囲まれつつ、果樹農園を運営されている方がいたとは知りませんでした。伺ってはじめてわかることもあります。
南房総の土地で60年もの間、ミカン栽培をしてこられた野宮さん。育てる方の人柄を知ると、自然に手にしたくなるのも不思議なものですが、もう一度行ってみたくなる自然もたくさんありました。
むしろもぎたてのミカンと、ねかせたミカンの食べ比べ。そんなことをイメージしながら、伺うだけでも食べた時のミカンの味わいって違うのだろう。
他にも栽培されている柑橘系の味わい。緑色のレモンの風味。何だか考えているだけで、夏をすぎた季節が楽しみになってきました。
もしオレンジ村さんにも行ってみたいという方は、ページ最初のホームページか、下記マップをご参照ください。
南房総で丹精込めて栽培された野宮農園さんのミカン。この冬、店舗に並び始めたら早速食べてみて、またnoteでご紹介していきたいと思います。
南房総まではちょっと。という方も機会があれば、房の駅に足を運んでいただき南房総を少しでも感じていただければ幸いです。※取扱いのない店舗もございますため、来店の際は取扱い状況をご確認いただきますようお願い申し上げます。
食べごろのミカン。はーやくこい。
野宮農園さんのミカン調理編もお楽しみにしてください。