家庭菜園を支える影の立役者、安藤農園さんに学ぶ野菜の苗農業体験。 ー 千葉のおいしいを大切に ー
春になり温かくなりはじめると房の駅では野菜の苗は飛ぶように売れていく。お客様のお目当ては、「安藤農園さんの野菜の苗」。4月から5月前半まですごい勢いで売れていっちゃう売れっ子です。
野菜の苗を売っているのは知っているけれど、「自分じゃ育てられない」と関わりのないものだと思ってきました。そもそも種だって売っているのに苗をみんな求めているのはどうしてなんだろう?今まで気にならなかったことが今回、農業体験のお話をいただいたときにふと気になるようになりました。個人的には種の方がいっぱい入っていて安いし、なんだかコスパが良いような気がすけれど苗を求めるのはどうしてだろう?
今回の体験でそんな気になったことも解決していきたいと思います。
安藤農園さんにお邪魔します。
今回農業体験でお世話になるのは、先程出てきた安藤農園さん。実は、事前の取材や当日の体験中も安藤さんの苗を求めて電話や直接お客様がいらっしゃるほど市原で知る人ぞ知る野菜の苗の生産者さんです。
今回の体験では、野菜に入れる土づくりからポットに植える体験と実際に畑に出てとうもろこしの苗を植える定植を行います。
まずはじめに、安藤農園を経営されている安藤さんのご紹介。安藤さんは安藤農園の2代目で農業に携わって23年くらい。なんでも房の駅第一号店の新生房の駅ができる1年前くらいから始められているのだとか。房の駅ができたときから安藤さんにお世話になっています。そんな安藤さんはお話ししていると笑いが絶えないユーモアたっぷり素敵な生産者さんです。
苗が売れるその理由。
純粋な疑問をぶつけてみる。なんで野菜の苗を販売するのか?
それは単純に野菜を種から育てるのは難しいから。「発芽率」という言葉があるように、種は百発百中で芽は出ないんだそう。
事前の取材で実際にキュウリの種を植えていたのですが、体験当日までに芽が出て生きたのは5ポット中2ポットだけ。けれど、安藤さんはほぼ100%の確率で出るそう!むしろ、出やすいから勧めてもらったキュウリだったんですが、私たち取材班の確率は40%…!安藤さんが達人に見えますね。
種を蒔いたとしても、温度や気候の変化で私たちのように出ないこともしばしば。苗として販売されているものは、基本的に植えてきちんとお世話をすれば確実に実るのでみなさん苗を買うんです。種は蒔いたら勝手に生えてくるものだとばかり思っていた私の常識が変わった体験でした。
また安藤農園さんでは、春苗で60種類くらいを取り扱っているだとか。中でも温度が必要なゴーヤは春先はまだ気温が足りず芽を出すのが難しいんだそう。ゴーヤといえば小学生のとき植えた記憶がありますが、温かくなった4月後半だったし、きっと芽が出ていない種もあったのかなと先程の話を思い出します。
でも60種類もあったら、どれがどれの苗だかわからなくなりそう…。
そこで安藤農園さんでは品種や種類ごとにポットの色が違ってわかりやすくなっていて、黒いポットしか知らない私には画期的…!お客様側も販売する側もわかりやすいのはありがたいかぎりです。
農業体験スタート!
質問の後、今回体験の内容を説明していただき、いざ体験!…の前に、ハウス内を案内してくださいました。私たちがお話を聞いていた場所の後ろ側、ハウスの後半部分には種から芽が出たばかりのかわいい双葉がいっぱい。その苗の下には、前日の取材でも出てきた踏み込み温床がある。
「踏み込み温床栽培」という稲わらを発酵させる際に出る熱で苗に適した温度の下で育てる栽培方法を安藤農園さんでは採用している。これがものすごい大変なんだとか。一応電気も通しているみたいですが、それはあくまで緊急用。むしろ、停電しても一定の温かさを保てる温床栽培はエコだし、苗は無事に育てられると語る安藤さん。実際に温床を触れせてもらうとほんのりと温かさを感じる。
「これが電気がなくても温かくする方法を考えた先人の知恵か…」
農業の歴史に触れたような体験でした。
気を取り直して、いざ体験へ!
土づくり体験。
最初の体験は、土づくり。
安藤農園さんでは、使い終わった温床を培養土して再利用していて、この培養土と赤土を1:1で混ぜて土をつくっている。余すところなく使える温床に日本人のもったいない精神を感じてなんだか親近感が湧きます…!
渡されたトレーに赤土と温床を入れこれをしっかり混ぜる。温床も赤土もゴロゴロとした大きな塊があるのでこれをしっかりつぶして苗が根を貼りやすい土にしていく。
これが結構硬い…
赤土はなんだか粒が細かいような感触で、温床は塊が多い。つぶすとなんだか繊維質っぽい。藁だった形が残っている部分も。久しぶりに触る土の感触は軍手越しだけども冷たくてふかふかしてちょっと楽しくなります!
土づくりができたら、何の苗にするのかを決めます…!できた時を想像しながら苗を選ぶのも楽しい時間。体験に参加されているみなさんも思い思いの苗を選んでいきます。今回私は、プチトマト3種類・ナス・青しそをチョイス。苗を準備していただいている間にポットの準備をします。
渡されたポットにしっかり混ぜた土を詰めていきます。このとき手で押し付けたり、トントンと空気を抜くのはあんまり良くないんだそう。やっちゃいがちですが、苗を入れてときに根がまわりやすいようにやわらかくするのがコツなんだとか…!知らなかった…
土を入れたポットにまだあかちゃんの苗を入れていきます。この状態の苗はまだ小さいので20センチ前後まで大きくなるとプランターに移せるんだそう。しばらくはポットで育ててくださいと安藤さんに教わる。私は何も知らずに帰ったらプランターにすぐ移していたことだろう…。危ない危ない。
選んだ苗を植え終わり、水をたっぷりあげる。最初の3日間くらいは元気がないように見えるがしっかり日を浴びて、水を上げれば大丈夫とのこと。出来上がりに期待が膨らみます!
とうもろこし畑へ
野菜の苗の体験の後は、とうもろこしの定植体験へ。車で移動すること5分ほど安藤さんのとうもろこし畑に到着。まだマルチしか敷かれていない、真っ新な畑にとうもろこしの苗を定植させていきます。とうもろこしの苗は5センチくらいでまだ小さいもの。この苗をマルチの穴の部分に植えます。このときマルチの隙間に蓋をするように土を盛るのだそう。これをしないと風でマルチも苗も飛んでしまうんだとか。
みんな黙々ととうもろこしの苗を植えていく。
またとうもろこしは、アライグマやハクビシンなどの害獣被害も多いそう。安藤さんはここでも出ると教えてくれる。出会ったことはないけれど、身近にアライグマやハクビシンがいることに驚いた。きっと食べに来るほど安藤さんのとうもろこしが美味しいのでは?とまだ植えたばかりの苗に思いをはせておなかが減る。お昼ごはんまであとちょっと。頑張ろう!
30分ほどみんなで植えた苗は、こんな感じ!
まだまだ小さいけれど、きっと3か月もしたら私の背よりも大きく育つとうもろこし。なんだか感慨深いなあ。何事もなく大きく育ってほしいと願うばかりです。
お昼ごはんは贅沢な焼きおにぎり。
とうもろこしの定植を終えて、ハウスに戻ると香ばしい良い匂いが!私たちが定植している間にお昼ごはんの準備をしてくださっていました。はらぺこの私にはたまらないご褒美です。
このおにぎり、ただのおにぎりじゃないないんです…!前に紹介させていただいた椎茸の生産者さんの根本さんのお米。「音信米(おとずれまい)」という献上米にも選ばれたすごいお米。前にもいただいたんですが、これが焼くとさらに美味しくなるんです!家じゃなかなかできない炭火焼きの焼きおにぎり。金山寺味噌を塗っていただきます。
安藤さんからいただいたネギも焼いて食べるとめちゃくちゃうまい。中がとろーっとしてそれが甘く美味しい。体験したあとの疲れた体にしみます。
最後は、最初にもお話した苗の植え頃の話。ポットから出せる目安は20~25センチくらいでポット内全体に根が回るくらい。カポっとポット外しても根が回っているから土がこぼれないんだそう。あんなに大きくなるのかと楽しみと期待が膨らみます!
各々選んだ苗を持って記念撮影。これにて体験は終了。あっという間の2時間ちょっと。みんなが選んだ苗がすくすく育つことを祈るばかり。たくさん収穫できるといいな。今回の体験は胸がふくらむ夢いっぱいの体験になりました。
おわりに。
最後に不躾ながらこんな質問を安藤さんご夫婦にしてみました。
わたし:「苗農家のやりがい、魅力とは?」
恥ずかしそうにうーんと、悩む姿もありましたがすぐに、
安藤さん:「”今年も無事に実ったよ”って言ってもらえるときかな。」
そう照れながらも答えてくださいました。ありがとうと感謝の言葉もいただくことがあるそう。そんなとき「ああ、やっていてよかったな」って思うよとお話している姿は本当に素敵だと感じました。
今回の体験で、はじめて安藤農園さんを訪れて、たくさんの方にお会いして、この素敵な縁を大切にしていきたいと思える体験でした。
引き続き、お客様と農家さんを繋いでいくような取り組みを実施していきたいと思います。応援のほど、よろしくお願いいたします。