ブランド立上げには「誰に」「何を」「どのように」が大事
ブランドは「誰に」「何を」「どのように」で思考
Minimalは14年12月1日に立ち上げたスペシャルティチョコレートのブランドです。もうすぐ6年が経過します。創業からフェーズが少しずつ変わってきた中でブランドを考える際に基本的な原理原則として僕が大事にしているフレームワークがあります。至極単純なフレームワークであるがこの順に考えると普遍的なブランド軸と可変的な環境変化に対応できる強力なモノであると思う。
それは
「誰に」をターゲットに、
「何を」をコンセプトとして、
「どのように」に届けるか、
ということを徹底的に考える事です。
「誰に」は具体性が大事
ブランドを立ち上げる時にそのプロダクトやサービスを「誰に」届けるかを考える事はとても重要です。
「誰に」を考える際のポイントは具体性だ。
平均値でも架空でもない、具体的な1人を分析する手法をN1分析と呼ぶ。これはスマニューなどで活躍された西口さんの言葉だ。
僕も「誰に」の議論をする際に具体性を大切にしている。
ペルソナ的な平均値や架空の誰かではなく、必ず実在する誰かをバイネームでターゲットにできると良いと思う。
特に立ち上げの時におすすめなのは、それが身近な誰かの困っている事や課題ということ。
Minimalの最初のコアなブランドターゲットは創業メンバーである僕を含めた男性だった。チョコレートなのに男性というターゲッティングはMinimalのブランディングにその後いい影響を及ぼしたが、それは単純に創業メンバーが男性でも食べたいチョコレートがないという問題意識からだった。なので、議論はスムーズだった。僕を含む創業メンバーはどんなライフスタイルをしていて、消費をする際にどんな事を重視して、どんなアイテムを買うのかということを徹底的に議論した。
少し余談だが、ターゲット論としてMinimalではブランディングターゲットとセールスターゲットをあえて分けて考えた。賛否はあるがブランド初期はうまくいったと考えている。その辺は以下のnoteを参照頂ければ。
「何を」はそぎ落とすことが大事
「何を」とはそのブランドが伝えたいこと、解決する課題、もっというと提供価値ともなり得るブランドのコアコンセプトの事である。
ブランドの立ち上がりにおいては実は「誰に」を考えるよりも先にこの「何を」がすでにあることも珍しくない。Minimalもものすごく単純にいうと「何を」はチョコレートだ(笑)個人的には先に「何を」があってもいいと思う。
このときに大事な事は、「誰に」を具体的にしたことより、「何を」に含まれる要素をそぎ落としていくことだ。
Minimalの場合は、「誰を」を究極的に具体的にすると、「帽子、ひげ、めがね、Tシャツ、短パン」で仕事するおしゃれ男子だ(僕ら通称「おしゃくそ野郎」と呼んでいた笑 失礼な話だw)
では、彼が求めるチョコレートとは何かということになる。その観点で僕たちが表現すべきチョコレートをそぎ落としていった。
例を出すと、
・彼が求めるのはおしゃれアイテムとしてチョコレートである。
・新しいものへの感度が高く、自分のライフスタイルにこだわりが強くストーリーを重視する。
・コーヒーやワインが好きでそれとの共通要素やペアリングを求めている。
・チョコレートに対してそこまで感度高くない可能性が大
・逆に甘ったるいものは嫌いではないが積極的に食べない。
などが浮かんできた。あれ?チョコレートの通常持っている要素と逆じゃないか(笑)なんて話になる。そうなるとそぎ落とす要素が見えてくる。
味わいは甘味が重たくべったり
→→香り重視で後味軽やか
チョコレートが主役
→→チョコレートとそれを取り巻くチョコレートのある体験
「誰に」からMinimalは「何を」をカカオの食感と香りを楽しむ新しいチョコレート体験と設定した。要素をそぎ落として大事なことのみシンプルに表現すると重視すべきことが見えてくる。
「どのように」は優先順位付けが大事
ここまでくると「どのように」に提供するべきかのポイントが見えてくる。
Minimalはおしゃれ男子(誰に)にカカオの食感と香りを楽しむ新しいチョコレート体験(何を)を届けたい。この際の「どのように」のポイントの例を挙げると、
・チョコレートの味わいは香リを重視して、油分を少なく軽くすっきりさせる。
・チョコレートのデザインは特徴的なグリッド構造で、見た目もおしゃれかつ食べ方のUXを機能として付加する。
・パッケージは華美にせずシンプルでミニマルでライフスタイルに溶け込むデザイン。
・パッケージにワインやコーヒーのようにレシピカードで産地情報などを盛り込む。
・店舗はスペシャルティチョコレート然としたクラフト感がありシンプルなデザイン
・店舗では食べ比べのティスティングとスタッフによりフランクな解説を体験できる
・もっと詳しく知りたい人はワークショップを用意してより深い部分を体験できる
など
「誰に」と「何を」が明確だと「どのように」はとてもシャープに、具体的に、たくさん出てくる。
全てを実施する事ができれば一番いいが、時間や予算など立ち上げ時には制約条件がたくさんあるはず。僕らも限られた時間と予算と人間ですべてを最初から実現する事ができなかった。
その際にはプライオリティを明確にして優先順位付けをする事が大事だ。
特にブランドの立ち上げ時はすべてやりたくなり、全てが中途半端になってしまう事が多い。そうであればやるべき事を絞ってしまった方がいい。
Minimalの場合はざっくり言うと、優先順位は「ものづくり」>「デザイン」>「サービス」>「ビジネス」といった感じだ。
何より優先順位が高い事は、美味しくて新しいもの=カカオ豆の香りが豊かで、後味が軽いスペシャルティチョコレートをきちんと造れる技術とプロダクトに投資する。次にそれを届けるためにターゲットにコンセプトを伝えるパッケージと店舗のデザイン、最後にサービスといった感じだった。
恥ずかしながらビジネスチームの環境への投資は後回しになり、つい最近まで僕を含めたビジネスチームはオフィスがなく、工房や倉庫の片隅で仕事をしていた。
「どのように」は限られたリソースで最も効果的なものに優先順位をつける事が大事だ。
フェーズで変わる「誰に」がブランド創りの起点
ブランドを立ち上げ時に「誰に」「何を」「どのように」を定めておくことがとても大事である。
特に小さく立ち上げたブランドはブランドのフェーズにより「誰に」が変化していく。
変化していくパターンとしては元の設定したターゲットから徐々に拡張していく場合と、一気にブランドを拡大するためにマスに飛び地する場合がある。
前述の西口さんの9セグマップはそれを最初から網羅的に考えており、それぞれのセグメントでN1分析をして、フェーズにより優先順位を変えて広げていくという考え方で本質的には同じだと思っている。
ブランドのフェーズにより「誰に」が変化する事で、「何を」と「どのように」も変化していく。
ブランドの一貫性という観点からは「何を」というコアコンセプトはある程度普遍的であるが「誰に」が変化することでより本質的な事にそぎ落としたり、伝え方や表現は変わってくる。それに伴い「どのように」にあたる具体的な施策の優先順位も変わる。
ブランドのフェーズ=売上の拡大により「誰に」は必然的に変わるし、大きくなればコアターゲットだけを考えるだけでは足りなくなる。
(9セグマップは網羅的にターゲットを見てそれぞれの施策を考えるという意味ではとても有用なツールであると思う)
そういう意味でブランドとは常に変化する作品であり、生き物であると考えている。
自分達がどこに行きたいのかと、市場から何を求められているかを常に天秤にかけながらその時その時に最適な「誰に」「何を」「どのように」を考えて実行するところにブランド運営の面白さや妙があると思います。
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