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「ウメハラへの果し状」byメナがなぜ話題なのか その歴史と背景を振り返る
「格ゲーバブル」「格ゲー村に温泉が湧いた」と言われている格闘ゲームストリートファイター6界隈。プロ、人気ストリーマー、人気チームで行われたCRカップ、そしてそこで魅せたウメハラによる「令和の背水の逆転劇」で最高のスタートを切り、2年目もそれ以上の勢いで推移し、日本SFLも大成功。パシフィコ横浜での決勝戦には多くの有料観戦者を集めた。2年目のシーズンの公式プロイベントも残すは3月に開催される賞金1億円の両国国技館決戦となるカプコンカップ、そしてSFL世界一決定戦のみ、となり、双方の切符を取れなかったプロの中には早々にオフシーズン感も漂ったりもしている。そんなエアポケット、まだ日本SFL決勝の余韻に浸っている2/13に特大のニュースが飛び込んできた。というかメナがぶっ込んできた。それがこの「果し状」になる。
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最近シーンを見始めた方の中には、「このメナって誰?」って人や、「いつもウメハラ戦ってて大会でも勝ったり負けたりだけど何が騒ぎなの?」「ウメハラの長期戦、10先ってなに?」という方もいると思われるので、この機会にそのあたりを振り返っていきたい。「ウメハラ」って誰?って方はすげープロの第一人者だと思っておいてください。一応ちょこちょこ動画とか見返しながら書いているけどなにぶん古い話も含まれているので記憶違いのところあったらごめんなさい。それくらいの雰囲気でお願いします。
1.ウメハラと長期戦(10先)その歴史
格闘ゲーム界では今も昔もカジュアルに対戦が行われている。とくにネットが発達した今では、日本からアジア圏くらいならほぼほぼ許容範囲レベルでリアルタイムで対戦ができる環境にある。それもかつてのゲーセンのように100円をいれる必要もない。勝っても負けてもゲーム上のポイント以外はほぼノーリスク、そういった試合が無数に存在している。もちろん「プロ」といえど勝ったり負けたりは当然ある。で、格ゲーの強さを決める基準の一つとして「ネットのランキング」がある。いわゆる「ランクマ」だ。ヴァロラントやLOL、スマブラでも同じであろう。トップを目指して皆切磋琢磨している。では「ネットランキング1位」が「世界1強いやつ」とそのまま認められるか、となるとまた別の話になってくる。現代のeスポーツでいえば「世界大会」の実績のほうが重視されるであろう。
では世界大会やネット対戦が存在しなかった太古の時代、スト2からバーチャ2が大ブレークした90年代中盤までの「第一次格ゲー黄金時代」における「強さ」の基準とはなにか、その基準のひとつが「長期戦(10先)」となる。1回の対戦では紛れもあるしタイミングが噛み合うこともある。パンピーでもウメハラ相手に100回やれば1回くらいはラッシュ中段が6回連続で入って勝てるかもしれないし、それが1回目に来るかもしれない。ただ、10試合先取となったらそんなラッキーに期待するのはあまりにも無謀であり、運が良くてもせいぜい1-10で負けてしまうだろう。
今よりもある意味大味であり、紛れもあったかつての格闘ゲームで、その「紛れ」をできる限り除去し、互いに「どちらが強いか」「実力があるか」を明確にするためにゲームセンターで行われてきたのが「長期戦」になる。レギュレーションはその時その時で、5先もあれば7先、10先、双方が満足すればいくらでも良いのだが、互いに結果に文句が付けれないくらい腰を据えてやり合おうや、というのがこの「長期戦」になる。当時の映像はほとんど残っていないが、ウメハラのような第一世代の生き残りが語り継いだり、ウメハラ漫画には当時の「熱」が描写されている。
eスポーツという形になり「スポーツ」というカテゴリに入ると、この「10先」という「最低10試合、最高20試合」というこの時間の読めないブレは予定が立て辛く、イベントやビッグな大会ではあまり採用されなくなってきており、主にエキシビジョンマッチといった扱いになることが多い。大会でもないのだから、すなわち10先に勝ったところで大した賞金など入ってこない。それだったら色々なキャラを幅広く対策して2先や3先のトーナメントで行われる賞金制大会の勝率を上げるほうが「稼げる」のは確かであろう。ただ、こういった日本のゲーセン文化が生んだ「プライド」だけが賭けられた、ある種古臭い、金にならない10先勝負に、eスポーツネイティブ、18歳にしてカプコンカップを制したドミニカの若き天才(そしてちょっとヤンチャな若者)が、前人未到の2度のカプコンカップ制覇を経て、少し大人になり、襟を正して「日本のゲーセン式」で「ウメハラ」に対戦を申し込んだ、というのが今回の10先のポイントの一つと言ってもいいだろう。
そこらのジャリガキがその時の強キャラ使ってウメハラに1回勝ってウェーイウメハラよえー、とここぞとばかりに目立とうと暴言混じりに叫んだところで雑魚のまぐれの戯言、目立ちたいストリーマー崩れみたいなもんで大したことはないのだが、今回はここ数年で最も結果を出しているメナが襟を正し、日本のゲーセン文化、ストリートファイターコミュニティに敬意を表したうえで、というのがポイントになってくる。このあたりは後の「メナについて」で掘り下げたい。きっとウメハラも感情の中で少しは「嬉しさ」があったのではないだろうか、「ようやく海外勢にも”理解る”やつが出てきたじゃねえか」と。
そんなウメハラ自身もこだわりがあるであろう「10先」、古くはゲーセンでの記録に残らない無数のプライドマッチであったり、ウメハラ自身が10先レギュレーションを提唱したゴッズガーデンオンライン、などがあったが、「ウメハラと10先」で最もセンセーショナルだったといえる、今も多くの人が「ベストバウト」として名を挙げるであろう戦いが「ウメハラインフィル10先」、そしてその前段にあたる「ウメハラシェン10先」になる。
1.ウメハラシェン10先
ストリートファイター界において、個人戦ではスト4時代から基本的に2大ビッグタイトルがある。競馬で言えばダービーや有馬記念といった格の高いGI。それが毎年7-8月に行われる”EVO”と12-3月頃に行われる”カプコンカップ”になる。(近年はこれに加え1-5月くらいに行われる”EVOJAPAN”、そして7-8月に行われる”eスポーツワールドカップ”が主なビッグタイトルとなっている)
シェン(Xian)はストリートファイター4時代に台頭してきたシンガポールのプレイヤーで、EVO2013に”元”というピーキーでレアなキャラクターを使いこなし、決勝ではときど豪鬼を3-0の圧勝で締めて優勝し、押しも押されぬ世界王者になった。
そしてその約ひと月後、ウメハラと同じチームだったこともあり、チーム関連のイベントにてエキシビションマッチとしてウメハラ対シェンの10先が組まれることになった。シェンの”元”といえば独自の動きとスパコンウルコン連携での固まったダメージ、あと謎表裏、そして何よりレアキャラクター故に対策が難しい点があった。レアキャラクターはプレイヤー人口が少ないため、「仮想シェン」として対策に協力してくれる、そしてそれに足るプレイヤーが少ないことを意味する。おそらくストリートファイターの歴史の中でも「全1(全国一位、転じてそのキャラクターで一番強いやつ)と全2」の強さで最も差があったときの候補のひとつがこのときのシェン元だったのではないだろうか、と思えるほどに。現在のSFLシーンをご存じの方は「ひかるAKI」への対応の難しさを想像していただければ近いかもしれません。
そして結果は衝撃の10-0。己を見つめ直し、そして相手を絞って対策、攻略を続けた結果、序盤は波動を中心に攻め続け先手を取り、シェンのゲージが溜まれば一転、スパコンウルコンの起点となる小技の差し込みすら許さない鉄壁の守り、そして動画で見てもようわからん表裏を相当数凌ぎ続けた。数本取られた段階で苦笑しながら首を傾げるシェンの姿が映し出されるのだが、シェン側は「ウメハラほどの」準備をしてこなかった、ただのエキシビションマッチと認識していたのかもしれない。大変な試合を受けてしまった、といった後悔もあったのかもしれないが、すでに傾いていた試合は数を経るごとにさらに一方的になっていく。シェンも後半動きを変えているのだが、それすら対策済みと言わんばかりに叩き落とし続けたウメハラの完勝で終わった。
この結果は別にシェン自身が弱くなったわけでも元が弱くなったわけでもなく、現に約半年後のカプコンカップ2013ではシェンは決勝までコマを進めている。ウメハラが用意した攻略を目にしてなお倒すことは容易ではなかったわけだ。なおその決勝では元も使えるsakoが勝利しカプコンカップ王者となっている。
かくしてこの衝撃の10-0は当時のスト4コミュニティを駆け回り、「長期戦のウメハラ」「相手を絞ったときのウメハラの強さ」が強烈に印象付けられることになった。
2.ウメハラインフィル10先
2013年8月のウメハラシェンから程なくして、約1ヶ月後のTGSでいくつかのエキシビションマッチが行われることが告知された。なかでも注目度が高かったのが、そのイベントの大トリとして据えられていた「ウメハラ vs Infiltration 10先」であった。
Infiltrationは韓国の超強豪プレイヤーで、出れば大会で上位に入るが2011までは数えるほどしか海外大会には出ていなかった。そんな経験の薄い段階ですでにEVO2010で3位だったのだが。本格的に世界大会に出るようになった2012以降恐ろしい勝率で勝ちまくり、EVO2012優勝、カプコンカップの前身となるストリートファイター25周年大会優勝、本命と目されていたEVO2013はときどに負けて3位と、出る大会での安定感が随一といったプレイヤーであった。プレイの正確無比さに加え、全キャラ使えるとまで言われた多キャラ使いといった器用さ、後に決め台詞にもなる「DOWNLOAD COMPLETE」、その言葉通りとも言える試合中の分析力と即時対応力も持ち合わせており、今現在ですら「最強プレイヤー論争」ではインフィルを挙げる人間も少なくないと思われる。なお現在は諸々の事情で長年プロシーンへの参加を禁止されているが、稀に一野良プレイヤーとしてのプレイを披露するたびにその腕が錆びついていないと話題になったりもする。
ウメハラはこの戦いに向けてインフィルと同キャラの豪鬼を使っているときどをスパーリングパートナーとし、直前の仕上げに臨んでいた。ときど側から後に語られた言葉としてあるのが「最初、ズルをしていると感じた」といったニュアンスの発言になる。ズル、すなわちゲームシステムの「穴」をついた攻略であり、有名なものにカプエス2の「前転キャンセル」や北斗の拳の諸々の「仕様」をついたコンボなどが挙げられる。当時、豪鬼の置き攻めは元の表裏と同じく、あるいはそれ以上に見づらく、そしてパターンも豊富で、その起き攻めループで試合を畳むのが一つの勝ちパターンとなっていた。こんなに通らないはずがない、これはタネがあるに違いない、といわば「仕様」を「活用」する側だった当時のときどは感じたという。しかし蓋を開けて試合を見てみれば、そして後の感想戦を聞いてみればなんてことはない、種も仕掛けもなく、単純にして愚直、ウメハラは物凄い濃度のやりこみと盤面整理、分析と攻略でリュウ豪鬼戦を詰めていただけだった、という。
結果は衝撃の10ー2。ウメハラ不利まで囁かれていたなかでのこの大圧勝は「扉」が開いたとまで称されている。実際、後にも先にもインフィルがこんなにタコ殴りにされてることなんて見ることもないし、この敗戦のあともインフィルは何ならこれ以前より更に強さと安定感を増してシーンに君臨するだけに、インフィルが勝てば勝つほど、この試合が強く印象付けられる形となっていった。そしてこの2013を経て、後にときどが獣道決戦を直談判することにつながっていく。
3.ウメハラときど10先 (獣道2)
スト4のシーンが一段落したころから、ウメハラは配信にも力を入れていきはじめる。海外向けの通訳を付けた配信や様々なゲスト、レジェンドを呼んだ配信、配信サイトにスポンサードされることによって多くの格ゲーマーに配信を促す、など新しい試みもいくつかスタートさせていた。そしてその試みの一つが「獣道」になる。因縁のあるプレイヤー同士に「勝負に徹する舞台」を用意し、白黒つけさせるというプライドマッチ。スト2の新旧レジェンド対決、ギルティの小川まちゃぼー頂上対決、3rdのヌキ大復活と大好評で終わった第一弾の最後にチラッと予告された「天」の文字。
後に獣道2で「ときどウメハラ」が開催されることが発表されると界隈は獣道1以上の大騒ぎとなった。2にしてウメハラ参戦、それも相手はEvo2017覇者、カプコンカップ2017で2位とバリバリに「世界最強」に一番近い状態のときどが、満を持して2018年3月にウメハラに長期戦を挑む。それはこの試合如何では、「ウメハラ」の地位が危ぶまれる、ある種の下剋上に近い様相まで呈していた。ウメハラも後に「自分のイベントにときど出てくれるの?やったー、で引き受けたが、後に「えらいもん引き受けちまった」となった」といったニュアンスで語っている。
今なお語り継がれる伝説の10先、その結果をまだ見ていない人はぜひ時間を取って見ていただきたい。2013年から5年、久しぶりに行われたウメハラのプライドマッチは、やはりウメハラ、という結果に終わった。直近Evoチャンプにしてカプコンカップ2位のときどが相当な覚悟で臨み(後に「それでも全然甘かった」とときど自身が振り返っているが)、負けてなお真摯なときどの姿に、おいそれと「じゃあ次俺とやろうや」と言いづらい空気が醸成された感がある。
4.そしてメナ
言ってしまえば「格」という話で、例えばその実力は誰もが認めるPunkがNA本場のトラッシュトーク混じりでウメハラに語りかけたとして「おめーはまずもう一つくらい世界取ってこい」という空気になっていたであろう。ただ、シーンを見返してみれば確かに一人だけその「格」を有した男がいた、それがメナになる。2度のカプコンカップ制覇、スト6でもEvo2023準優勝、EVOJAPAN2024優勝、SFL世界大会優勝(それもMVP級の活躍)と勝ちを重ねてきている男が今回、襟を正して果し状をぶっ込んできた。ゲーセン時代から続くプライドバトルが数年の時を経てまた動き出そうとしている、それが「今」になる。
2.メナRDとドミニカ勢、そしてメナの心境
1.17歳で世界制覇
鉄拳で「パキスタン勢」が一気にブレイクして話題になったことがあるが、ストリートファイター界でも似たようなことが起きたことがある。それが「ドミニカ勢」であり、その中心がまさにメナRDになる。
ドミニカから地理的に近い北米、アメリカの大会に2016から参加しそこそこの成績を収めていたメナは、北米でポイントを貯め、カプコンカップ2017に初出場した。ただ、ポイントランキングとしては下位であり、注目は同年EVOで死闘を繰り広げた「ときど」「Punk」が本命と目されていた。当時キャラも強くない感のあったバーディーで、ノーマークの中あれよあれよと勝ち進むと日本人だらけのベスト8でも勝ち進み、決勝では「ときど」まで倒して一躍シーンのトップに躍り出ることになった。なおドミニカでも相当なニュースになったらしく、新聞に載ったり大統領に会ったりとeスポーツドリームを若くして掴んだ感もあった。2017以降はメナとともにガイル使いのcabaも世界トップクラスのプレイヤーとして頭角を現していき、現在はその二人を追いかけるようなドミニカのプレイヤーもシーンで存在感を示しはじめている。
ただ、当時の「ドミニカ勢」という言葉にはあまり良くない印象がついてまわっていたのも確かだ。もちろん10代の若さから来る部分もあったのだろうが、大会でウメハラに対して「屈伸」(挑発行為)を仕掛けたり、大会では後ろで「ドミニカ応援団」とも言われるドミニカの選手やファンが、対戦相手が困るくらいの大騒ぎを度々繰り返し問題視されたり、それに苦言を呈したツイートに「次からヘッドフォン忘れるなよ」的な煽り混じりで返したり、発端は相手が煽ってきたからだったという部分もあったと思うが、大会で勝ったときに「首切りジェスチャー」をしたり、と少なからず「バッドマナー」といったイメージが含まれていた感がある。まあ騒音に関しては日本もそれをウリにしてるような人がプロチームとスポンサーのロゴつけて騒いでいたりもするのでどっちもどっちな感があるのだが。
とまあ実際にバッドなマナーもたくさんあったが、もちろん彼らが根っからの悪童なんてわけでもなく、なんなら彼らには彼らなりの事情があり文化があるわけで、100パー真に受ける前に、中米北米の若者の「勝負事でナメられちゃいけねえ」(ナメられると色々な意味で困る可能性がある)的な、彼らなりのカルチャー、事情があったことにもある程度理解をする必要があるだろう。
2.醸成されたリスペクト
そんな新星ドミニカ勢と旧来の格ゲーシーンとの文化の違いによる軋轢も結果的には時が解決した、というか近年はほぼ問題になるシーンを見かけることがなくなっている。メナ自身も2度のカプコンカップ制覇を経て、周りにはもう舐めてかかるやつはいない、押しも押されぬドミニカ格ゲーコミュニティの中心であり、格ゲーシーンでも最上位に近いくらいに十分な評価と実力へのリスペクトを実際に受け、世界中にファンがいる格ゲー界の最重要人物の一人と言ってもいい位置になっている。地元ドミニカでも大会を開き、はるばる日本や世界から来たプレイヤーを歓迎したり、日本でのチャリティ大会に参加したりと自分が自分が、でなくFGC(ファイティングゲームコミュニティ)を盛り上げるべく動いたりもしている。
そんなメナが数回目の来日を経て約一月前にしたツイートがこちらになる。
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文脈からすれば、何度目かの来日を経て、何かしらポジティブなことがあってのツイートと思われる。
そして先日2/11のストリートファイターリーグ日本決勝オフラインを現地観戦した後にわざわざ日本語で書いたツイートがこちらになる。その前のツイートから、SFL決勝に相当ポジティブなイメージを抱いてからのこれ、となる。機械翻訳と思われるため100伝わるかとなると怪しいが、ニュアンスは十分伝わるだろう。
![](https://assets.st-note.com/img/1739542903-mhUiYF3tnpA8Jo6R94QTyEaH.jpg?width=1200)
と、このように日本の格ゲーコミュニティ、ひいては世界の格ゲーコミュニティへ相当な熱とリスペクトを抱えた状態で投げられたのが今回の「10先」ラブレターになるわけで、ある意味唐突ながら、メナのツイートを追っていくと、そこまで唐突でもない今回の件であるというのが見えてくる。
そして上のツイートと比べるとわかるように、わざわざウメハラに宛てたメナのあの果し状は機械翻訳でなく、ひと手間ふた手間かけて日本人に頼んでニュアンスが十分伝わるようにと手を尽くされている。(X上には実際に翻訳したという人物もいる)
そこにはまさに格ゲーシーンへ、日本のコミュニティへ、そしてウメハラへの「リスペクト」があり、決して失礼にならないようにといった気遣いが感じられる。
この流れを見れば、あの果し状もメナの「功名心」のような邪な考えが第一のものではない、ということも理解できてくるだろう。日本の格ゲーシーンの盛り上がりを目の当たりにして、自分もなにか格ゲーシーンを盛り上げたい、そういった感情の発露が今回の果し状のメインの部分ではないだろうか。もちろん互いに「勝負師」であり、やるなら本気で勝つつもりでやるのだろうが。
実際、メナ対ウメハラのビッグマッチとなれば日本語の実況解説はもちろん、英語での実況解説も当然ついてくるだろう。となれば多くの人が目にする。メナも、もし自分が勝ってチャンピオンベルトを巻ければさらに注目を集めることになり、それはすなわち主戦場であるNAやドミニカの格ゲーコミュニティの注目度もアップする、という考えもあるのではないだろうか。
そんな感じで、この10先ラブレターは思いつきの部分もあるだろうがそれだけではない、自分と格ゲーコミュニティを見返して、自分がいまできる一番盛り上がることはなにか、と考えた結果のようにも見えるし、実際に日本のニュースサイトでも複数記事になる等十分すぎる反響があり、それもまた、メナが深く格ゲーコミュニティを理解しているからに他ならないだろう。
3.メナのプレイスタイル
ここはシーンを追っている人には不要だろうが一応。メナのプレイスタイルはその「野性味」とも評される大胆な読み合いと動きが何よりの武器となっている。そしてそれはともすれば「安全に見える策」を好みがちな日本人プレイヤーに対してバッチバチに噛み合っている感もある。実際、2023のストリートファイターリーグ決勝では70点先取のレギュレーションで1勝20Pの大将戦に出て2勝1敗、勝てば優勝の先鋒戦にも出て優勝と日本のFAV相手にメナ一人で70Pのうち50Pを稼ぐという爆発的な強さを見せている。そしてもうひとつ「大舞台の強さ」もあり、緊張して日和った動きをするどころか、通ればデカい一発をぶっ込んでいたり、執拗な逆択で自分のペースに持ち込んだりと、とにかく心臓の強さを感じられるスタイルとなっている。
実際日本でメナを相手に「得意」といえるプレイヤーはいないのではないか、といった感もあり、とりわけ日本勢にとっては難しいプレイヤーといってもいいだろう。実際ウメハラも過去に当たっているが、メナのほうが勝っている試合ばかりのような気がするくらいには分が悪そうに見える。
3.実現できるのか
これに関してはウメハラが「やるかー」と言った以上、やるのではないだろうか。格ゲーだけでなく面白そうなら青森まで散歩したり、早食い大会を開いたり、モノマネ大会を開いたりとやってきたウメハラのことなのだから、ゲームの勝負ができない、なんてことにはならないであろう。
また、時期もある程度見えてくる。3月上旬のカプコンカップが終われば一般的に6月まではプロはオフシーズンの感がある。一応EVOJAPANというそこそこビッグなタイトルが5月のGWにあるにはあるのだが、逆にメナの来日機会と考えればその前後に、というのも十分考えられるであろう。そしてメナもウメハラも視聴者も、EVOJAPANよりデカいものが掛かっていると捉えるであろうから、両者がEVOJAPANで振るわなかったとしても誰も咎めないであろう。
問題があるとすればレギュレーションか。今までの10先は1キャラ同士での戦いで、その1キャラに絞って対策を練りに練るからこその新次元の戦いが見れていたのだが、メナはスト6でも屈指の(あのプレイスタイルなのに)器用さも兼ね備えており、ブランカにルーク、場合によってはザンギ等、複数キャラを使いこなせるという部分もメナの強さの一因となっているだけに、ここをどうするか、というのは一つポイントになるであろう。
まあ見てる側も、さんざん盛り上げた結果、メナが出たばっかりの舞やエレナを使ったセットプレイでハメて終わる、なんてのは望まないわけで。レギュレーションとして宣言した1キャラでのプレイ、というのを縛ってもいいのではないか、と。ただそれではもともと1キャラのウメハラが相対的に何も縛られず、メナだけキャラを縛られている、ルールに偏りがある、という話も出てきかねないのがまた難しいところになっている。まあそこはメナが男気でキャラ宣言してくる、といったあたりが落とし所な気もするが。
あとはおそらくカプコンカップ後になると思うので、メナが3つ目のリングをゲットして、となったら最高に盛り上がるだろうね。と思ったところでカプコンカップのグループリーグの抽選があり、メナに対して「ウメハラの右腕」ことふーどが立ち塞がる形に。「”王”への挑戦権?与えられねーわ」とメナを止めたらそれはそれで面白かったりもして。
まとめ
いや~楽しみだね、結構この話題がRTされてるので補足というか、最近の人向けに少しまとめてみました、って感じで。という「格ゲー沼」のちょっとしたお話でした。