シェア
山根沖
2021年4月7日 18:31
中村憲吉、歌集『しがらみ』より(中央公論社『日本の詩歌 第6巻』p203)。国こぞり電話を呼べど亡びたりや大東京に声なくなりぬ 「関東大震火災」中の一首。当時作者は大阪毎日新聞の経済部記者として働いていた。詞書に「大阪にて関東大地震を感じたれど、未だ大災害の起れるを知らず。ただ総ての通信機関その活動をとどめ、夜に入るも帝都の音信伝はらざるを怪しみ、人人初めて不安の念に駆らる」とあり生々しい
2021年5月12日 22:09
遠近の烟に空や濁るらし五日を経つつなほ燃ゆるもの 島木赤彦、歌集『太虚集』より(『日本の詩歌 第6巻』中央公論社 p62)。 「関東震災」中の一首。詞書に「九月三日信濃を発し五日東京に着く。六日下町震災中心地を訪ふ」とある。一首から、焼き尽くされた街の様子が目に浮かぶ。五日を経ってもなお物が燃えている、厳しい状況だ。三句で切って結句を体言止めとして、呆然とした人のやるせなさが描かれ、感情を