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【読了】『人間が生きているってこういうことかしら?』

中村桂子・内藤いづみ
『人間が生きているってこういうことかしら?』
ポプラ社 2022年初版

新刊書:1650円(税込)
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~出版社による紹介~

今、人間はどこにいるのか。死とどう向き合い、どんな社会をつくればいいのか。生命誌研究者とホスピス医が語り合ういのちの話。

新型コロナウイルスのパンデミック、地球温暖化、拡大する経済格差……。生き方を考え直さなければならないことが次々と起こる今、「生きもの」としての人間を根本から見つめ直したい――。そんな思いから、生命誌の視点で人間を見つめてきた中村桂子と、在宅ホスピス医として数多くの看取りに立ち合ってきた内藤いづみが語り合います。38億年をかけて織りなされた地球のいのちのつながり、その中で人間はどこにいるのか。死にどのように向き合うのか。「生きもの」としての人間がつくる社会はどのようなものか。一人ひとりの中にある「いのちの力」を信じ、「わからないこと」に上手に向き合って、今日から明日へと歩くために――。

~🐱店員の読了感想~

国分寺崖線の崖地にある、中村桂子氏のお宅の庭で行われた対談。
「生きもの」として人間を見ている人同士が楽しくおしゃべりしているだけのようで、なかなかに含蓄深いやりとりが250ページ弱の中にいくつもありました。

対談本はよく手にします。
著者の方々が対談する中で、単著の中では見られなかったり描かれなかった部分をあらわにしてくることがあるような気がするから。

ふむむーと思ったやりとりを、ひとつふたつ引用してみます。

中村
出会いはけっして偶然ではなく、積み重なった縁のようなもの。縁などと言うと科学者っぽくないと思われるかもしれませんが、体の中の細胞の関係を見ていても縁で動いています。生きものは縁だと思いますよ。

P130

内藤
開発という言葉だけを聞くと、何か新しいものをつくっていこうと聞こえますが、そうではなくて……。
中村
そこが大事です。本来その場所にあった力を生かしていくのか「デベロップメント」であり、ぜんぶおなじにしてしまうことではないということ。一つひとつの場所に特徴があることを忘れないで欲しいのです。内発的発展です。また、生きものの世界は、すべてが循環していますから、不要として捨てられるものはありません。枯葉は次の木を育てます。一見、不要になったと見えるものも、また違う形になって生かされる。古くなったからといって捨てられるのではなく、古いものに新しいものを加えて、生かしていくんですね。

P176~177

中村
二酸化炭素は炭素化合物の中では、意地悪な言い方をするなら、はぐれものです。ほかの炭素化合物は有機化合物ですから循環します。でも、二酸化炭素は無機化合物ですから、そこで止まってしまうんですね。ふつうの炭素はぐるぐるぐるぐるまわっているけれど、二酸化炭素になったとたん、元に戻らない。このはぐれものを元に戻すにはどうすればいいか。それははっきりしています。小学校で習うことです。
内藤
植物ですね。
中村
その通りです。生きものの世界は炭素の循環で成り立っているけれど、動物はそれを二酸化炭素にしてしまって、元には戻せない。光合成ができるのは植物だけです。

P206

自分が高校生のとき、理系の授業で唯一対応できた(頭の中に入ってきた)のは、生物でした。中学の生物の先生が独特だったことも影響しているかもですが、本当に生物以外は、理Ⅰすら言葉が上滑りして何のこと?状態で、結局、受験も生物しか選択できなかったんですけどね。とことん数字でものを考えることができないのはこのあたりに由来するかもと、ちょっと腑に落ちた気がします。

中村氏の世界の見え方は、養老孟司氏と共通しているかもしれないなとも思いました。人間の脳や身体にフォーカスしたのが養老氏、生物全体から人間を見る中村氏というベクトルの差はあるにしても、「人間は生きもの」というところは一緒なのだと。
自分も地球の上でともに生きてきた「生きもの」の1種であることの認識を新たにした1冊となりました。

~転がって次に手にするとしたら~

こんな本はどうでしょうか?

古本になりますが、
長尾和宏『親の「平穏死」を見届ける これが最後の親孝行』徳間文庫カレッジ
というものもありますね。

これは、8月10日に発売となった文庫ですが、解説を中村桂子氏が執筆しています。


ひとり本屋です。店主は やまねくん(ぬいぐるみ&木彫り)です。間借り棚、BASEに通販部あります。なかなか稼ぎが出ておりません。叱咤激励、応援お願いします。