見出し画像

朝の風景(2024.11.19)

朝の通勤時、国道がほとんど高速道路のようになっている箇所があって、その区間に入った途端よーいドンで車が一斉に速度を上げて平均時速80kmくらいになるのだが、その入り口付近で軽自動車がガードレールに突っ込んでいる事故現場に出くわす。

事故は反対車線で、たくさんの警察官や警察車両が道に出ており、現場の調査や交通誘導をしている。ドライバーはもうとうに救急車で運ばれたあとみたいで、現場にはいなかった。

ガードレールに突っ込んだ軽自動車は車体の片側が浮いており、ガードレールもぐにゃりと曲がっている。11月の、低い位置から差す太陽の光が軽自動車の銀色の車体をキラキラと輝かせていて眩しい。

その事故によって、反対車線では大渋滞が起きていた。行けども行けどもどこまでも、渋滞の車列が続いていた。ドライバーは皆イライラしているように見えた。眉間に皺を寄せ、電子タバコを吸って、ハンドルを指で叩いている。

そんな中、ある50代くらいのトラックの運転手は朗らかな笑顔を見せていた。優しく、柔らかな髭面が、朝の光に照らされてツヤツヤに光っていた。何か面白い事、楽しい事があったのだろうか、助手席の男性と談笑している。

私はその光景を見て、羨ましいと思った。あんなふうに余裕があったら良いのにと思った。こんなに太陽の光がぴかぴかで海も輝いているのに、私は全くその事を享受できていない。自分が事故ったわけでもないのに、なんだか陰鬱な気持ちになっている。

大渋滞の反対車線とは対照的に、こちら側は逆にすいすい快適だった。いつもどおりみんな平均時速80kmでビュンビュン飛ばしていた。そしてあっという間にその「ほぼ高速道路」の区間(7kmくらいある)を出ると、途端に車が増えて、快適だった私たちのドライブは急に行き詰る。

今まで渋滞とは無縁で車を飛ばしてきたのに、ちょっと渋滞しただけでなんだかイラッとしている。情けない。そうしていると歩道を上を見上げながらにこにこして歩いている作業員風の男性を見かける。多分もう仕事していると思うのだが、とても楽しそうで、顔が自然に笑っている。いいなぁと思う。

それからまた車を走らせると、信号待ちで目の前の長い横断歩道を、運動靴を手に持った高校生たちが大勢渡って行く。校舎から離れたところにあるグラウンドに行くためだ。とてもみんな楽しそう。横断歩道の上を駆けて行く、青と白の体操服の列。車の中の陰鬱な表情を浮かべたドライバーたちとのコントラストがすごい。

それからちょっと行くとまた反対車線で事故。黒い軽自動車の前面が完全にひしゃげている。私は「今日は何かおかしいから、気を付けよう」と思った。そして気を付けたおかげか、一日何も起こらず無事に過ごす事が出来た。


いいなと思ったら応援しよう!