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【寝かしつけ】ねんど(2024.12.06)

久々に寝かしつけをした。なぜなら私が子供たちを早めに寝かしつけて晩酌したかったから。そして私は良い仕事をした。子供たちは全てを話してしまう前にスヤスヤと寝息を立てて眠ってしまっていた。その話が以下。

ねんど

パリパリのセロファンに包まれた油ねんどがある。
空はどんより曇っている。鈍く重いグレーで、今にも重さに耐えかねて落ちてきそう。

工作室で目の前にねんど。パリパリのセロファン。先生の顔はしわくちゃでどんな顔をしているかよく見えない。蛍光灯がちかちかしている。すぐに取り換えた方が良いのに、誰もその事にふれない。

雲が一部切れて晴れ間。真っ青な空。一筋の眩い光。太陽が、地上を白く照らす。植物たちが鮮やかさを取り戻して、みずみずしく色めきだつ。真っ白な校舎の屋上が鋭角に、空を切り裂いている。

窓際が爆発したように眩しい。白く、空に昇華されたよう。さようなら友達たち。皆の机にねんど。油にまみれたグレーの色したねんど。パリパリのセロファンが虹色に滲んでいる。

青い空が拡がっていって、雲が隅に追いやられる。ねんどはまだ机の上でセロファンの中に包まれており、いつまでも形を変えない。生徒たちは両腕をぶらんと垂らしたままだ。

気付くと僕は中庭の花壇のとこにいて、どんどん深みを増していく空の青に恐怖を覚えている。地上のもの全てが呑み込まれてしまいそうだ。

よく見ると、花壇の土がみんなねんどに変わってしまっている。いつまでもねんどに誰も手を付けないからこんな事になってしまった。さっきまで鮮やかだった花壇の花はすっかり干からびてしまっていて、悲鳴を上げている。

そして花壇のみならず、見えるもの全てが気づいたらねんどだった。一面全部グレー。空だけがますます青くて、もはや黒。夜というか、宇宙。

そして僕の脳自体がもうねんどで、何も考えられなくなってくる。ものすごく眠くなる。瞼が閉じる。

おやすみなさい。

子供たちが眠ってしまって、すごく心地よい沈黙が訪れた。食洗器が食器を乾かす音だけが低く小さく響いていた。

私はいそいそと子供たちが雑魚寝する和室から立ち上がると自室に行った。おやすみなさい。

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