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高貴なる賤民の死

まだ見えぬ
眼球をこじあけ
私はしかと
前方を視た

血の色のような
戦跡に残された残骸

ひとつふたつみっつ

生首
が転がる

私の父親の顔にそれはそっくりだった
似てもいない父親の首を抱きかかえ
私は逡巡するしか手立てが見つからない

どういうことなのだ

見知らぬ知人が私に問う
私は見知らぬ知人を知らない

朝 目覚めてみたら
だれも




待ってくれと扉を叩く私
私の扉は向こう側
開かぬ扉が手前に五つ
聖水を浴びた俗物がしたり顔で私を導く
ラッパは吹かれた
苦い水と苦い砂が口の中いっぱいにひろがる
誰も騙されてはいない
皆を謀ったのはただひとり
私のみだ

血風が叫ぶ ひゅり


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