山本雨季

小説(主に純文学)と詩を書いて文藝誌等に投稿しています。文体派 / 別名 : アカシック キャンディポップ / テクノをはじめとするエレクトロニックミュージックや時代劇、ゴア映画が好き。

山本雨季

小説(主に純文学)と詩を書いて文藝誌等に投稿しています。文体派 / 別名 : アカシック キャンディポップ / テクノをはじめとするエレクトロニックミュージックや時代劇、ゴア映画が好き。

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  • うつら人別帖

    旧ブログ「うつら人別帖」からのサルベージ記事をまとめたマガジンです。比較的、短い文章で綴られているので、空いたお時間のお暇つぶしなどにどうぞ。

最近の記事

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無職と魔法

「ぼくと契約して魔法少女になってよ」  は? と思うた。眼前には猿のような猫のような毛の無いつるつるとした見たことも無い小動物。なんじゃこれはと訝しみ、首根っこを掴んで抓み上げてみたが、まるで莫迦の如く「ぼくと契約して、ぼくと契約して」をその小動物は繰り返す。  そろそろ午を廻ったころ。石神井公園には馴染みのおっさんたちが屯している。皆が皆、小汚い恰好をしていた。俺だって人のことを言える身形はしていないが、少なくとも公園の閑所を使っての毎日の洗顔歯磨きは怠らずに行っている

    • 痴人のささやき

      まるで跫が聴こえるかの如く 鬱に 陥った痴人がささやく わたしはそれを錯覚として顕かに自覚していた 庭は狭く 名も知らぬ種の一本の古木が生えている 古木は笑う わたしは生ける恥辱の屍 冬の風が北側から吹いてくる 錦の御旗は真っ赤な偽物であり なおも人々を混乱させた 生命を重んずべしと先達が唱える 欺瞞である 怠慢である 滲み出るようにして そこかしこから響き渡る真実の声 そしてまたその声も偽りでしかないことを わたしは不知不識のうちに知っていた 見知らぬ者同士が唇を重ね

      • アオガナメさん

         山田野川に架かる一ツ橋が大改修されることになった。  川幅はそう大して広くない所謂小さな田舎河川といった趣きの山田野川。流れる水は一応無色透明だが、そもそも生活排水がだだ洩れに流されており、決して清いそれとは言えない。しかして斯かる川に長年架けられていた木造の一ツ橋も老朽化が進み、劣化が酷くて日々の往来に支障を来すようになってしまった。そこでお上からのお達しがあっての工事である。  俺もちょうどアルバイトを探していたところで、給金も良いことから、そこの人足の一人として土方

        • 着信があり、米が無く、タクシードライバーは秋刀魚を買った

          今、スマホに着信があった。 着信音が鳴った瞬間、どきりとした。 覚えのない番号だ。 もとより私は電話を親の仇の如く憎む。 もちろんそのまま放置し、 着信音が鳴りやむまで 私は身を強張らせたまま 息を殺していた。 別段借金取りの類いから催促があって 日々びくびく暮らしている というわけではないのだけれども 兎に角、私は普段から 通常の電話であったとしても それを激しく厭う。 電話で話すのがそもそも苦手なのだ。 あ。しかし懇意にしている司法書士からの 電話だったのかも知れな

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        無職と魔法

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          7本

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          レフトフィールドに立つということ(声明)

          どうも、こんにちは。雨季です。 今回は少しばかりシリアスな話をつらつら書き留めておこうと筆を執った次第。タイトルにもある通り、レフトフィールド、つまり「左翼」に立つということが創作者にとってかなり大切なのではないだろうかと最近考えるようになってきまして。むろん「左翼」といっても政治的な意味合いのそれではなく、飽く迄もモノを作るにあたっての「非主流派性」「革新性」。そちらを重視すべきであるという至極当たり前な姿勢に対して、漸く意識が傾いてきたとでも言いますか。確かに今更な話では

          レフトフィールドに立つということ(声明)

          心の臓は停まったまま

          わたしが啼いていた けだものの如く啼いていた きよらかだった水流は やがて滞り 澱となって 塵芥と共にどす黒く濁る わたしが嗚咽していた 歯噛みするが如く嗚咽していた なめらかだったその素肌は いずれあざだらけとなり こぼれた泪が 枯渇した地に毒をもたらす ひとしずくたりとも 飲んではいけないのだよ 蜂は空虚を舞う 蜜をたらしながら空虚を舞う 鋭く尖った小さな針に おそれを 微塵も抱いてはならない わたしの想い人が 眼を縫った 口を縫った 鼻を縫った 階段をおり

          心の臓は停まったまま

          暗闇仕留人の話

          ここ数日、必殺熱が高まりて候 だもんでついむらむらしてきてしまって 昨日今日と「暗闇仕留人」の1話~5話を観たよ。 やっぱり面白い。 仕留人は必殺シリーズ第4作目で 石坂浩二演じる糸井貢が一応主役なんす。 皆さんおなじみの中村主水も出てるよ。 石屋の大吉(近藤洋介)さんの殺し技は心臓潰し。 殺しのシーンではレントゲン+オシロスコープで 心停止の様が描写されちゃいます。 この糸井・石屋・主水の3人が 実は義兄弟だったという (結局あんまりいかされなかった

          暗闇仕留人の話

          おさくらさま2017

          おさくらさま2017

          魚の話

          けふは焼鮭を食べた。 美味であった。魚は苦手なれど。 魚は苦手ゆえ 魚は食べられぬのだが 稀に大丈夫な魚は 食べること叶うたりして 余の味覚性癖は奇奇怪怪なり 所謂喰わず嫌いというものとも一寸違うのだ 駄目なものは如何しても駄目 煮魚に至っては親の仇の如く嫌っておる 焼き魚も苦手なのだが(特に臭いが) 焼き魚を焼いてる時は好きだ(特に匂いが)

          ドラマ「鬼平犯科帳」ができるまでの話

          春日太一著。 良書というか好書。好きな書。 鬼平ファンのみならず 必殺シリーズファン(つまりぼく!)にも楽しめる一冊。 個人的には髙坂(高坂)光幸氏のインタビューが 所収されていたのがとても嬉しかった。 「代役無用」「夢想無用」「愛情無用」… 髙坂氏が演出担当した必殺にはめちゃくちゃ思い入れがある そもそも何回泣いたことか。上記3作品で。

          ドラマ「鬼平犯科帳」ができるまでの話

          マイルスと血と精液と

          たとえば現在が過去の残り香とするならば、 偏にその存在は虚無。あゝ 然るに顕微鏡はうぬの掌にあって、 穢い汁を流し続ける。一体、それに何の意味があるというのか。 マイルスは慟哭す。俺の血と精液をお前たちに捧げると。 果たして俺の掌にはいずれが残るのか。 否、いずれも一向残らぬだらう。 而して産声を以ていのちの静寂とす。 頸をククルノダ。牛頭馬頭が叫ぶ。 汝、朽ち果てしのちは我が下僕として抱えてやらん。 繰り返す。汝、朽ち果てしのちは我が下僕として抱えてやらん。 果たして鮮血

          マイルスと血と精液と

          ダンスホール

          果てしの無い山河の果ての更に果て 一向何も視えない 一向何も聴こえない 愛玩実験動物として 飼育調教されて来た チンパンジーの咆哮により、 そこが最果てであることが如実に知れる 回転するミラーボールと生首 血みどろのダンスホールは払暁まで 虚空に充ちた灰色の空気が 階段を登る人と降りる人の妨げとなり、 私は激しく哭いた。 嘔吐する者は 緑色の涙を流せ オーバードーズを恐れぬ者は 鈍色の脳髄に 幾千もの鋭利な針を突き刺せ 低音のグルウヴに群がる亡者ども いつしか皆が皆、

          ダンスホール

          歓喜の歌

          じりじりと照りつける夏の陽射しによって、教室の中はさながら蒸し風呂の如き様相を呈していた。凡ての窓は全開状態にあったが、一向涼しくならない。地理的な問題もあるのか、二階だというのに風が教室内に全然通らないのだ。兎に角もうすでに暑くてやり切れぬ一限目前のホームルーム。突として担任の松江先生が畏まったように咳払いをし、我々生徒たちに向って見知らぬ少女を紹介し始めた。転校生である。たとえば小学生の時分ならばそれこそ大ニュース。やって来た転校生のぐるりを囲んでは男子も女子も大騒ぎをし

          歓喜の歌

          白骨賛歌

          第一篇 交差する視線と視線の眼力にいつしか心を奪われ、夏の暑い盛りを迎えても猶何も感じることが出来ずにいたのは昨日までの旧き良き想い出。氷の如き冷たさを瞼の裏側に覚えて本日を仕舞いはしたものの、大地に涙が伝うことに対して一向異論は無く、泣く泣く忘れた物そのものを忘却した。これ即ち第十八の念仏を唱えることによって生じる身の切なさであり、ゆうべには頬が赤くとも朝には白骨と化す存在なれば、悲しむことは無い。悦ぶことも要らぬ。果たして君子が君子であるように、愚者も愚者であればよい。

          白骨賛歌

          小説のとっかかりは突然やって来る

          ふとした時に小説のとっかかりが脳味噌に浮かぶ。 今回もそうだった。何気なくTwitterを眺めていたら突然来た。 群像に投稿する予定の小説をどうしようかと ちらちら考えてはいたのだけれど、 はっきりとしたごろりとしたものが 今日の午後まで思い浮かばなかった。 それが俄かに現れたのだから大したものだな俺は。 あとはこのごろりとしたものを いい感じになるまでごろごろ転がしておいて、 時来たらば原稿として形を与えてやらんと思っている。 その前に文學界に送る小説を書くのだが、

          小説のとっかかりは突然やって来る

          いのち、要らんかね

          緑色の粘液が 糸を引いて落ちてくる 奈落の底まで そこは蒼の地獄 血だまり 行き止まり 我はその薄紅色の肌に 爪を這わせる いのち、要らんかね 一束ごとに 購ってくることも可能 小石をつんでは 崩してあそぶ いのち、要らんかね 夜市にて 入手することは不可 小石を砕いては 潰してあそぶ 緑色の粘膜が 割かれて痺れる 堕落の音で風車が廻る

          いのち、要らんかね